第26話 究極生物の襲来Ⅲ
医学的に、古い資料では16世紀ドイツでは既に診断・確認されていたという。
この世には複数の『人格』を持つ人間がいて……それは精神だけでなく肉体・筋力も別人となり言葉すら別の言語になるケースもあるという……
西暦1946年───
戦後まもないunder labに『橋田智』という名の日本人研究員がいた。
戦時中、戦争の為の生物兵器を目下開発していたunder labだが、彼らにもソレが生物兵器として”行き過ぎている”と承知していた。
であるからこそ、戦後、行き場の無いソレに対し『処分』という措置が決定される。
名は『DEMON(悪魔)』。
人類は『戦争』という目的の為に、自らの手で人間を超越したまさしく『悪魔』を生み出していた。
『DEMON』開発に関わる機関だけでなくunder labそのものの科学力の粋を集結させたその『究極生物』は、一つ…無敵である。二つ…決して老いず。三つ…決して死ぬことは無い。
そして、四つ……
五つ……
六つ……
七つ……
『コッチダ……』
その時、橋田智は処分されたDEMONの死亡確認作業中であった。
『サァ、コッチ。コッチダヨ……』
DEMONは死んでいた。それはあらゆる検死において確かなことだった。
『ソウダ。ソウダ。モウスコシ、コッチ…』
その筈であった。
検死を完了した橋田智は、そのまま自身の研究ラボへ戻ったという。
だが、時折、顔が青白く染まる様子を同じ機関の研究員が度々目撃していた。
その一研究員に過ぎなかった橋田智がunder lab総督に就任するのは、それから20年後のことである。
神話の世界から躍り出た『デーモン閣下』───彼の正体とは、橋田智の精神奥深くに寄生するunder lab最強の『生物兵器』であった。
この上なき、人類の『罪』であった。
───西暦2019年9月30日
「”必殺マジシリーズ。マジ殴り。”」
「”スペシウムッ…光ォォオ線ッ!!”」
PERFECT HUMANを辛くも屠り去ったデーモン閣下。
しかし、その時『霹靂一閃』をも防ぎきった無敵のATフィールドに僅かに亀裂が走ったッ!
「ンヌぅぅうッ!?」
熱や空気の伝導をも正確に捉えるデーモン閣下の触覚は、その時!月が地球から2cm遠のいた事実を目の当たりにしたッ!
この破壊力!この凄まじいまでの破壊的質量を我々は知っているッ!
『ワンパンマン』だ!『ワンパンマン』も復活したのだッ!
「シュアッ!」
その声も知っているッ!『スペシウム光線』を繰り出したその声の主───『ウルトラマン』だ!
西村ひろゆきが小泉純一郎のベーターカプセルで変身していたッ!
まさに『帰ってきたウルトラマン』!
だが、二者の必殺の一撃は悲しいかな、上空に佇むデーモン閣下の『ATフィールド』に僅かに亀裂を走らせるに留まり、その破壊エネルギーは『ATフィールド』を起点に軌道が折れ曲がり、熊本県庁寸前の地上へ振り下ろされた───
その時、大きく3つの出来事が同時に発生した。
一つ…ワンパンマン必殺の『マジ殴り』の持つ破壊エネルギーが熊本県庁から南東12m地点の地表を抉り取った。
二つ…ウルトラマンのスペシウムエネルギーが熊本県庁から南西30m地点の地表を焼き払った。
三つ…あの痛ましい震災の余震(M5.0)が熊本県全域を襲ったッ!
その恐怖の掛け算は一体なにをもたらしたかッ!
『飛んだ』!『飛び上がった』ッ!
麦下到十郎と高坂穂乃果を乗せた『熊本県庁』という『城』が、三つのエネルギーを受け奇妙にも岩盤ごと押し上げられたのだったッ!
◇◇◇
僕の名前は麦下到十郎。
四面楚歌───きっと誰しもがそう感じる状況だろう。
突如『仮面ライダー』へ変身した『ウマ娘』達から僕らは必死に逃げ隠れた。
だが、逃げ隠れの舞台だった建物ののものが浮き上がるなんて聞いてない。
だけど、どうしてだろうな。
今の僕は……こんなにも勝利を確信している。
───時は遡り、西暦元年
私は始めに、『天』と、そして『地』を創った。
その日の内に『光あれ』と言い、そこに『光』が差した。
私は『光の空間』と『闇の空間』にそれぞれ『昼』と『夜』と名を与えた。
次の日、私は地上に『空』を創った。
三日目は『大地』を創った後に『海』と『植物』を創った。
四日目は『太陽』と『月』と『星』を創った。
五日目は『魚』と『鳥』を創った。
六日目は『獣』と……最後に『人間』を創った。
さて、今日が七日目。思う存分休むつもりだ。
知ってたかね?君らの世界ってやつぁ私が一週間で創ったのさ。
何か聞きたいことでもあるかね?
ん?名前?変なことを聞く奴だ。
神に名前なぞ………ま、敢えて名乗るならば『イェス』とでも言っておこうかな?
まぁそんなのはよくってさ。
私が昨日創った人間ってやつぁ曲者でな?アダムとイブって二人を創ったんだけどよ、あんまり言うこと聞かないんで楽園追放してやったわ。
でも、なんか申し訳ない気もほんのちょいはあんのよ。
自分で創っておいてさ、この仕打ちは無いかな?って。
だから今度、せがれを向かわすんだ。人間の世界に。
名前?あぁ『キリスト』ってんだ。
その時、麦下到十郎は思い出していた。
思えば当然の事である───麦下博士に取り憑いた未確認ウィルスは博士の子孫へ子孫へと過去に遡って行く。
ならば、行く先は人間そのものの創造主『神』へ辿り着くのだ!
飛び上がり、さながら天空の孤城と化した熊本県庁は、上空であざ笑うデーモン閣下のもとへと更に更に上昇する。
神と悪魔ッ!滅ぶ者、滅ぼす者ッ!それらは引き合う磁石が如く熊本県上空で猛烈に接近していたッ!
「が、岩盤ごと……猛烈なスピードでぶつかるッ!フン!確かに凄まじいパワー……しかしこの吾輩がその程度で消し飛ぶとでも思ったか?『ATフィールド』で弾き飛ばしてやるわッ!」
だが、その一瞬の動揺は次の瞬間、命運を分ける一撃と化す!
熊本県庁が飛び上がるほどのエネルギーは、再起不能したPERFECT HUMANが手にしていた立体機動装置の超硬質ブレードをも吹き飛ばし!デーモン閣下の胸部へ突き刺さった!
まったく意表を突いた一撃であった!
「み、見えるか穂乃果ちゃん……あいつが、デーモン閣下が僕らの至近距離で怯んでいるッ!」
捉えた!麦下到十郎が遂に至近距離にデーモン閣下を捉えたッ!
麦下到十郎、そして高坂穂乃果は熊本県庁の岩盤ごと上空80kmへ!
デーモン閣下はブレードの一撃を受けた後、更に避けられた筈の下からの岩石弾を身に受け更に上昇!同じく80km地点へ!
三者は、同じ景色を眺めた。
星が近かった───
「穂乃果ちゃん。これで、最後だ。」
「うん。……うん!ファイトだよ!」
僕が穂乃果ちゃんから聞いたこと、それは高坂家、そして小泉家、更に遡ればフランツ・リストの時代から一族に言い伝えられたとある伝承。
その一族のみにしか扱えない禁断の言葉であった。
僕は、崖の下からの麦下到十郎であり、板垣退助であり、スティーブ・ジョブズであり、神であり、そして───『フランツ・リスト』。
僕らはその昔、一つだったんだ。
フランツ・リストである僕と、その子孫である穂乃果ちゃん。
時を越えて再開できたことに意味があるはずだ。
「一緒に言おう。」
「ありがとう。麦下さん。」
『”覚悟”とはッ!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開くことッ!』
それが高坂家……ADHDの一族に伝わる”勇気の出るおまじない”だとすれば、いま麦下到十郎が口にしようとしているその言葉は、真逆である”滅びの言葉”であった。
「「バルス」」
───熊本県上空100km(大気圏)
その日、その地点で発生した壮絶な閃光……
そしてその後、崩壊しながら地上へ堕ちる『天空の城』を熊本県民誰しもが目撃していた。
つづく・・・




