第21話 憧れの光 ②
───熊本港沖200m地点
その日、海上保安庁は一隻の漂流中と見られるプレジャーボートを発見。
船内を捜索するも、中は無人であった。
遺留分や現場状況により事件性は確認されないものの、海中転落の可能性が考えられる。
───だがその時、操作中の海上保安庁を突如、猛烈な海上爆発が襲った。
海底火山の噴火と思われるも、その時間帯に活性化したものは無く、原因不明。
海底トンネルに亀裂が発生、数台の車が巻き込まれる。
調査中であった者は保護された後にこう語る。
それは……『生命の脈動』のように感じられた、と。
熊本港は、現在もただならぬ予感に包まれていた。
それはまるで、海中から現出る『ナニカ』に怯えるかのように。
◇◇◇
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ピコン!ピコン!ピコン!ピコン!
全ての偽ウルトラマンを死の忘却へ葬り去ったたウルトラマン。
だが、膨大なスペシウムエネルギーを消耗し、命を示すカラータイマーが赤く点滅していた。
「太陽エネルギーをくれ!」
オカリンは天を仰いだ。
ウルトラマンの基本エネルギー源は太陽。
太陽光をエネルギー源としている為に、遠く離れた地球では僅か3分しか存在していられないのだ。
───だが、残酷なる運命!今日は生憎の曇り空であったッ!
ピコン!ピコン!ピコン!ピコン!
「太陽エネルギーをくれ!」
「阿呆め。天を仰いでなんになる。」
小泉純一郎は立ち尽くすオカリンに……残酷にも、腕を十字にクロスさせたのだった。
「次は私の番だね。スペシウムk」
「───ッ!」
「オカリィ────ンッ!」
オカリンが死を覚悟したその時、曇天に少女の声が燦然と響き渡った。
「……穂乃果ちゃん?」
「オカリン。ねぇ、今から晴れるよ!」
高坂穂乃果は叫んだ……だが、同じくして放たれた小泉純一郎のスペシウム光線は今、オカリンの胴体を焼き払わんと迫っていた!
だが、立ち上がった。
オカリンは、ウルトラマンはッ!スペシウム光線を前に立ち上がったのだ!
「───ッ!」
奇跡!まさにッ!それは僕たちの奇跡であった。
立ち上がったウルトラマンの上空には、厚く覆われた雲が消え、ウルトラマンに勇気と情熱をもたらす太陽光が降り注いでいたのだ!
そう、この高坂穂乃果は、100%の晴れ女だったッ!
「そ、それは……『前羽の構え』か!」
小泉純一郎のスペシウム光線はウルトラマンの108つの特技の内、最大の殺傷力を持つ、まさに必殺奥義。
対して、その時オカリンの取った構えは『前羽の構え』という鉄壁の防御体勢だった。
もはや、後一度のスペシウム光線も放つことはできないオカリンは、なんと徒手空拳のみで敢然とスペシウム光線を払い除けたのだったッ!
「まさか、この期に及んで晴れ間が生まれるとはな。太陽エネルギーか、首の皮一枚繋がったようだな。岡田斗司夫……それは計算ずくなのかね?」
「当たり前だぜッ!このオカリンはなにからなにまで計算ずくだぜーッ!」
「では、背後に迫っている『ゴジラ』に対する策もあるのかね?」
「……え。ゴジ、ラ?」
次の瞬間の出来事は、まさに目を覆わんばかり惨劇だった。
ウルトラマン。
───M78星雲から来た、僕らに愛と勇気を教えてくれる憧れの光。
そんなウルトラマンの首は無惨にも食い破られ、胴部は熊本県庁に横たわり、生首は無情にも『ゴジラ』の鋭利な牙に砕かれ消えた。
小泉純一郎は笑った。勝利の微笑みだった。
高坂穂乃果は泣いた。絶望へ叩き落とされた瞬間だった。
「岡田斗司夫……君も終わりだ。」
「キャイィィィオ゛ォォォォッ!!!」
相手が悪かった。
鉄壁の防御体勢と言えども『ゴジラ』が相手ではひとたまりもなかった。
岡田斗司夫 vs 小泉純一郎
───決ty
「ッ!!!?」
───死んだウルトラマンの”背中のファスナー”がふいに開かれた。
ウルトラマンは死んだ。
だが、ウルトラマンと一体化したオカリンだけは無事だった───ッ!
し、しかしッ!?
背中から天高く飛び上がったオカリンだが……なにか!なにか様子が違うッ!?
あ、あれは───ッ!
「お、オカリンが……禿げてるッ!?」
高坂穂乃果は目を丸くして叫んだ。
そう、彼の頭皮は、降り注ぐ太陽光を真っ白く反射させていたのだ!
そして全裸ッ!───ウルトラマンという衣を脱ぎ去ったオカリンは、己が贅肉をも脱ぎ去ったというのか!
明らかにダイエットの成果ではない、美しい肉体美を輝かせた!
太陽光を一身に受け、我が身さえ輝くその姿は……まるで一つの『光』!
その瞳は、数刻前に己を屠り去った怪獣『ゴジラ』を見下ろしていた…………
「”必殺。オレの必殺……『マジ殴り』”。」
大気が乱れた。空を覆う一片の雲さえ消し飛んだ。
星が揺れた。月に差された星条旗が微かにたなびいた。
───完成された肉体から繰り成される圧倒的質量のパンチは、『ゴジラ』の身体を首と胴に分かつにはとどまらず、一帯には、血の雨が降り注いだ。
彼はもはや───高坂穂乃果やラボメン達の知るオカリンではない。
それはまさに……
『ウルトラマン』から生まれ出た『ワンパンマン』ッッッ!!!
「君は……一体、なにを…」
慄いた小泉純一郎ウルトラマンに閃光が如く突進したワンパンマンは、一切の情け容赦などせず、ウルトラマンの正中線を見据えた。
ズババン!ズズ゛ッ!ズババンッッ!!
「なんだこいつのラッシュはッ!?まるで時を止めたみたいに、早すぎるッ!!」
なんという破壊音ッ!
『ワンパンマン』は1.7mにして、40mの巨人に正中線4連……いやッ!166連撃を叩き込んだ!
正中線上の全ての骨格はズタボロの混沌と化すッ!
そして、破壊的脚力は優に40mを越え、その拳は最後の一撃をウルトラマンの顔面に構えていたッ!
「必殺マジシリーズ。マジ殴り。」
───小泉純一郎は思った。
よもや、今日この日の内に、この小泉純一郎の命に二度も待ったが掛かるとはな。
PERFECT HUMAN、それに『ワンパンマン』か。
だが、やはり最後の最後で勝利を手にするのは私だね。
なぜなら、君は既に決定的な過ちを犯している。
そう。ワンパンマン?それは『生身の人間』に他ならないのではないかね?
それはつまり──目と目が合えば『ギアス』の対象なのだよ。
「小泉純一郎が命じる───」
「ッ!」
「10秒間、そこに停止しろ。」
小泉純一郎は直ちに『死ね』とは命じなかった。
それは戯れかなのか……
だが、待ち受ける結果が同じであることは想像に察しが付く。
「破ァ!!」
直後、40mの巨人は僅か1.7mの『ワンパンマン』に圧倒的な物理的質量差を教えた。
その拳で、ハエを払い除けるが如く、一人の人間を宙に消し飛ばしたのだった。
遥か遠い彼方のどこかへ
───岡田斗司夫・『敗北』
◇◇◇(米アリゾナ州)
「なぁジャイロ。見てくれよ、流れ星か?ありゃあ」
「……に、しちゃあ近すぎねぇか?」
僕の名はジョニィ・ジョースター。
今は相棒のジャイロとアメリカ大陸横断レース・S(スティール)B(ボール)R(ラン)のレース中。
ま、今まで休憩したんだけどね。
「なんにせよ珍しいものを見たよ。」
「んじゃあそろそろ行くかい?」
僕は……その星をずっと目で追っていた。
流れ星に感動したのなんて何年振りだろう。
「いつまで見てんだ、とっとと行くぞ?追いつけれちまうぞ。」
「あ、あぁ……にしても、綺麗だと思わないか?」
「ん?……まぁな。」
ずっとずっと西の方角から来た流れ星。
まるで、西海岸(サンディエゴビーチ)から駆け出した僕らのようだ。
僕には、僕らよりずっと早く東へ流れるその『光』が、ただ、美しかった。
「よし、行くぞジャイロ!」
「おう。」
「───あの星を追って。」
❾ 憧れの光(完)
つづく・・・




