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崖の下からの麦下到十郎  作者: てるる
終幕 求
19/28

第19話 ひろゆき vs 小泉純一郎 ディベート対決

 『それってあなたの感想ですよね?』───

 おいらが決め台詞を言う寸前だった。

 小泉氏の論はどれも暴論ばかり、それは次のおいらの一言で完全に論破される……筈だった。



 ザァー ザァー ザァー...


 降りしきる雨───。

 滴る雨音に紛れて…… ペタ、ペタ、ペタ……そんな足音のような物音をおいらは聞き逃さなかった。

 『それってあなたの感想ですよね?』

 言いかけた言葉は喉につっかえ、ただならぬ悪寒と共においらは唾を飲み込む。


「どうしたのだね?西村くん。」


 ペタ、ペタ、ペタ……


 その足音は、おいらのすぐ隣まで来たところで鳴り止んだ。

 窓の外側から聴こえているんじゃあなく、外から現れたナニカがおいらのすぐ隣で『止まった』。


「スゥ─ ええと、小泉さん。あなた何かしましたか?」

「何か?聞き捨てならないね、私は君の誘いに則り論だけで君を打ち負かすつもりだよ?」

「また新しいポケモンを出しましたよね?」

「今の私は、徹底した弁論主義だよ?そんな真似はしない。」



 ───西村ひろゆきには、小泉純一郎のその言葉が到底信じ難かった。

 ただのスットボケに違いない……そう疑わなかった。

 なぜならッ!西村ひろゆきの瞳は今!まさに『ソレ』を凝視していたからだッ!


 体長役3mッ!

 ネズミとミミズクのあいの子とでも言うべきその巨大な生命体は一体ッ!

 西村ひろゆきは、そんな生命体をその40数年の人生で一度として見たことがなかったッ!

 故に、恐れをなしたッ!



「───出してないよ?ポケモンはね?」



 スカした面構えこそ崩さなかったが、内心震え上がっていた!


「それとも……西村君には、『彼』が危険生物にでも視えたかね?」

「『彼』?」

「……彼は暴力など振るわんよ?日本に古来から根付く神聖な生物だからね。名は───『トトロ』。」



 読者であるあなた方に、正体を明かそう。

 その巨大生命体の名は『トトロ』。

 日本の山岳地に古来より根付くその神秘の存在は人間社会の台頭と共に衰退の道を辿ったが、その微かな生き残りを小泉純一郎の『組織』が秘密裏に繁殖させ、今!この場に伴って来ていたのだッ!


「つまり、彼は無害さ。さぁ私を論破するのでは無かったかな?」


 『無害』───西村ひろゆきはその言葉を理性で理解したが、震え上がった心臓はどうしようもない。

 左隣に強烈な存在感を感じつつも小泉純一郎に挑まなくてはならない。



「え、えっと、じゃあ小泉さんは何故中田敦彦を殺そうと企てたんですか?」

「私に反逆するものは、全て抵抗勢力だからだッ!」

「いや、それってあなたのk」


「───ッ!」


 震える唇でやっと声を振り絞った時、おいらは廊下の窓の外側に、またもや異形な物体を目撃してしまった。

 『城』───それは間違いなく『城』、だった。

 熊本県庁3Fの窓から……おいらは今、確かに『城』を目撃していた。



 ───そう、4足歩行で動く城を。

 おいらの決め台詞はまたも戦慄に掻き消えてしまった。


「……どうしたんだね?あー、あれか。あれは『ハウルの動く城』だよ。」

「ハ、ハウル?」

「私が作ったんだが、どうも停止信号が故障してるみたいでね。しかし、あぁして動いているだけだから気にせんでくれ。」



 無理だった。

 西村ひろゆきはまたもや戦慄におののいていた!

 3m越えの巨大生命体同様、西村ひろゆきはその40数年の人生で一度たりとも『動く城』など見たこともなかったからだッ!

 熊本県庁付近をあまねく進撃する様は奇っ怪極まりなく、またもや西村ひろゆきは論破のスキを逃した!



「ほら、答弁を続けようじゃないか。」


 ドヅン!ッ゛!ガヅンッ!!


 震えが止まらない西村ひろゆきを嘲笑うが如く、怪奇現象は留まるところを知らない!

 今度は、二人の座する熊本県庁の廊下……その隣室から突如、破壊音が轟いたのだッ!


「あの音が気になるかね?」

「スゥ─ えっと、はい。」

「なんてことはない。『パキケファロサウルス』の頭突きだよ。」

「パ、パキケ?」

「私が伴って来たことは事実だけどね、悪い子じゃあないんだ。しかし、生命に対して『頭突き』をするなと命令することが愚かな行為であることは君にも分かるだろう?」


 ズドン!バリッ゛!バリリ゛ッッッ!!


 その炸裂音の中には、恐らくあまりの恐怖による西村ひろゆきの歯がガチャガチャ鳴る音も含まれていただろう。

 西村ひろゆきは『自分は論破王なのだ』と必死に言い聞かせることで自我を辛うじて保っていたが、そこにもはや小泉元首相の吐き捨てる粗悪な暴論に抵抗するだけの気力は残されていなかった!


「安心したまえ。ここの壁は分厚い。」


 安心などできよう筈も無かった。

 今、西村ひろゆきは『パキケファロサウルス』や隣の『トトロ』とは全く別の戦慄を感じとっていたのだ!

 ───暴悪!全く筆舌に尽くし難い戦慄であった。

 背後で何か途轍もない怪物に睨みつけられている感覚が背筋を駆け抜ける。




 おいらは論破王、おいらは論破王、おいらは論破王、おいらは論破王、おいらは論破王……

 そんな……おいらが、怖れている!!!

 外野に気を取られ、肝心の小泉純一郎に全く集中出来ない!

 『それってあなたの感想ですよね』と言うんだ。

 『そ』!最初の一文字目……『そ』と言え……『そ』と言うんだ……


 ヒィィィィィィィィ!!

 言ってやるゥゥゥゥッ!!

 おいらは最強の論破王だァァァア!


 『それってあなたの感想ですよね』!

 『それってあなたの感想ですよね』!

 『それってあなたの感想ですよね』!

 『それってあなたの感想ですよね』!

 『そ』!『そ』!『そ』ッッッ!!


 『そ』と言うぞォォ~~~っ!


「そr……」



 その時、西村ひろゆきはふり向いてしまった。

 怖いもの見たさとも言うが、自分を睨みつけて離れないその戦慄の正体を、確認せざるを得なかった。

 だが、すぐにその愚行を悔いた。……



「───ッ!」



「グォォォ────オオオオオッッッ!!!!!!!」


 恐怖!強烈!!『恐竜』が居た!!!

 西村ひろゆきの背後で、遥か太古・白亜紀から蘇った『ティラノサウルス』が暴悪な咆哮を上げていた───ッ!



「グォォォ────オオオオオッッッ!!!!!!!」

「トォォオ゛!トォォオ゛!ロォォォォオオッ!」

「グォォォ────オオオオオッッッ!!!!!!!」

「トォォオ゛!トォォオ゛!ロォォォォオオッ!」


 『ティラノサウルス』と『トトロ』、二つの巨大生命体は互いに負けじと咆哮を上げあった。

 その狂乱はまさに、人に耐えうるものではなかった。



「おいらの敗けだァァッッッ─────」




 ひろゆき vs 小泉純一郎 ディベート対決

 ───『決着』ッ!



◇◇◇(小泉純一郎視点)



「論破王……か、存外大したことないんだな。」


 西村ひろゆき……フフフ、白目を向いて気絶しておるわ。

 私は『ティラノサウルス』や『トトロ』を身振り手振りで向こうへ行かせ、論破王の名と共に滅びた彼へ向き直る。


 もはや再起不能だが、最後のダメ押しかな?


「小泉純一郎が命じる───死n」




───「どうやら話し合いで解決できそうもないみたいだな。」


「ッ!何奴!?」


 私は使用しかけたギアスを中断し、背後の男を睨みつける。

 岡田斗司夫……君だったか。


 そこには、私の目的とも言える『タイムマシン』を肩に提げた『岡田斗司夫』の姿があった。




❽ ひろゆき vs 小泉純一郎 ディベート対決(完)

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