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崖の下からの麦下到十郎  作者: てるる
終幕 求
17/28

第17話 時(せかい)の破壊者 ①

「小泉純一郎が命じる……死n」


 私が左目の『ギアス』を中田敦彦に向けたその瞬間だった。

 高坂穂乃果に当てたギアスの異能はすんでのとことで中田敦彦に阻止されてしまったが、今度は彼に向けてそれを放ったのだ。

 絶対必中にして絶対遵守じゅんしゅ、一つの対象に一度きりの無敵の異能。


 ───だが、その瞬間、私の思考は停止したのだった。

 比喩表現?いや違う。

 物理的に、私の脳みそは停止したのだよ。



「───スタープラチナ・ザ・ワールド。」

「んなにッ!き……貴様、スタンド能力をッ…」

「私が時を止めた。」


 まさか、そんな馬鹿なはずが……

 私の持っているスタンド能力はスタープラチナよりもきっと弱いスター・ゴールド。

 これでは太刀打ち出来な………


 そんな思考はままならず、その時、時は停止した。

 そうだ……私はこれからこの男を始末しに行くところだった。

 理由は二つ。

 東京へ帰ろうとするμ'sを熊本へ留めておくこと。


 そして───この男、中田敦彦(PERFECT HUMAN)は……

 


「オ───ラオラオラオラオラオラオラオラッ!!!」


 私の意識が戻った時、私の身体は圧倒的に暴力的なエネルギーに吹き飛ばされた。

 そうだ。私が熊本での一月の観察から分かったこと!

 このPERFECT HUMANは……危険過ぎるッッ!


「グブハッァァアッッ!」


 私の身体は宙(Air)を舞い、吹き飛んだ身体は長い廊下の最奥へ叩きつけられる。

 だが……無論そこでクタバル私ではない。

 廊下から圧倒的存在感を振り撒きながら中田敦彦……いや、PERFECT HUMANが迫ってくる。

 私は懐から”それ”を取り出し、おもむろに彼へ投げつける。


「行けッ!リザードン!」

「オラァッ!ァア!」

「グォ!」


 リザードンもたちまち屍と化する。

 くっ……PERFECT HUMAN相手に出し惜しみしたことが間違いだったか。

 私はもう戻ることの無いモンスターボールを握りしめた。


 ならば………ッ!


「行けッ!カメッk…」

「───『領域展開、無量空処むりょうくうしょ』。」

「ンなにッ!?」


 またしても、私の身体は身動き一つ取れない。

 無量ッ……無量空処だとッ!?


 奴が中指と人差し指が交わる特徴的な手付きで放ったものは一種の『呪力』。

 呪術は我らの組織の専門外……故に『無量空処』も最強の術式として研究されているものの、それは理論上示唆されるだけの存在。

 それはいわば、20世紀物理学におけるブラックホール!

 私達の組織でも未だ実用段階に到らない術を……この男はいともたやすくッ!

 だが、私は既に分かっている。

 その男に、論理なんてないのだ!

 彼はただ『PERFECT HUMAN』としてそこにるだけなのだと!



 ───領域展開、無量空処。

 それは対象にこの世のあらゆる情報を与え、与え続け、それ故に全てを与えられ行動が無となる呪術。

 ……いや、私も詳しくはないのだがね。


 全てが視える。故に、何も視えない。

 恐らく行動を封じられた私に今も一歩一歩PERFECT HUMANがにじり寄って来ている筈だ……だが、もはや私に抗う術は無いッ!




 ───何も視ることのできない小泉純一郎に、その時の中田敦彦の不可解な行動は知覚されなかった。

 ───『飛んだ』。『飛んだ』のだ。

 領域内にて行動不能に陥った小泉純一郎にとどめを刺さず、そのPERFECT HUMANは飛び上がった!

 熊本県庁の天井を突き破って、天高く飛翔したのだ!

 ───『立体機動装置』!

 PERFECT HUMANはどこからかそれを取り出し、腰に装着すると、アンカー付きのワイヤーを県庁内の柱に突き刺すと、噴出するガスに身を任せ飛び上がった!

 訓練された一部の兵にしか取り扱えぬ立体機動装置をこうも容易く扱ってみせた!


 なぜ、彼は突如飛び上がったのか。

 どこへ向かおうというのか………ッ!



◇◇◇



 遥か遠く離れた地・韓国はソウル。

 9月30日 - 今日の天気は晴れ



 私の名は文鮮明ぶんせいんめい

 統一教会……おっと、今は世界平和統一家庭連合の教祖にして、イェスキリストの生まれ変わり、そうまさにメシア!第三のアダム!


 ここはソウルに位置する世界平和統一家庭連合の本部である。

 私はテラスに出て涼しげな空気を肺一杯に吸い込む。

 西高東低の気圧配置になってきたか、吹き抜ける風がひんやりしとるわい。

 さて、今日も志高き世界平和統一家庭連合の信者諸君を見物しに行くとするかな……っと、ムムム?


 その時、私の視界に奇っ怪な物体が映り込む。

 北……うむ、方角的には汚らわしい日本の方角からだ。

 何だあれは。


「あ、あああぁァァァアッッッ!」


 う、海が……割れているッ!?

 日本は九州の方角からこの美しき韓国の地へ、まるっきり直線で海が割れているぞッ!?

 そ、そして……割れた海の上を………誰だ!?何者なんだ!?何者かが……『飛んで』いる!?



 空飛ぶその男は、この私の立つ世界平和統一家庭連合本部の真下で動きを止めた。

 見ている……

 私を見ているぞ…… ま、まさか…………



 イェス様……




 恐れるな。おののくな。

 吠えろ。声をあげろ。

 その血と魂を今……捧げろ。


「NAKATA!NAKATA!NAKATA!」

「”I am a PERFECT HUMAN.”」

「大地パッカーン!海もパッカーン!気取ってるモーゼとかいうやつもパッカーン!」



 『回転』したッ!

 天空を舞う勇者が如きPERFECT HUMANはその時『回転』していた!

 気づけば、地上では藤森慎吾がラップを刻んでいた!


「NAKATA!NAKATA!NAKATA!」


 左手に携えた立体機動装置の超硬質ブレードを右回転!

 右手に携えたブレードを手首の関節ごと左回転!

 その二つの剣戟けんげきの間に生じる真空状態の圧倒的破壊空間はまさに歯車的砂嵐の小宇宙!!


 結構呑気してた文鮮明は愚か、石造りの旧統一教会本部の建物の一部ごとッ!!

 全く不可能な形に、まるで雑巾みたいに引き裂かれたッ!



◇◇◇(藤森慎吾視点)



 パチパチパチパチパチパチ


 俺が旧統一教会本部の重々しい扉を開くと、盛大な拍手が迎えてくれた。

 一瞬、俺に?……とも思ったけど、すぐに既にそこにいたあっちゃんへ向けられた拍手だと気付いた。


「遅かったな。慎吾。……いや早いほうか。」


 そう言ったあっちゃんは……もう俺の知るPERFECT HUMANをとっくに越えていた。

 何だ……なんて言えばいいのか。

 近い言葉で言うなら……きっと、『メシア』。


 パチパチパチパチパチパチ


 それは、その場に居た多くの旧統一教会信者達の目にも同じ様に映ったんだろう。

 皆が皆、あっちゃんに拍手喝采だった。

 皆、凍える笑顔を貼り付けてただひたすら拍手をしている。


「戻ろう。日本へ……」

「慎吾。」


 あっちゃんは、無言でこう言った。


「こいつら……殺すか?今の俺なら多分、何も感じない。」


 背後の集団へ。

 あっちゃんは振り向くことなく、拍手の中そう言った。

 ………俺に。


「……必要ないだろ。もともと問題のあった団体だから、じきに解体されるだろ。」

「そうか。なら、俺はもう戻るよ。慎吾、お前は歩きで帰れるか?」

「…………あぁ。」



 静寂───

 なぜだろうか。けたたましい拍手だというのに、藤森慎吾は今、静寂を感じとった!

 そんな藤森慎吾へ踵を返し、PERFECT HUMANはッ!またしても『飛んだ』!

 崩壊した建物の一部にワイヤーを突き刺し、噴出するガスの反動で『飛び上がった』!



 そしてッ!それは軽々と対馬海峡を飛び越え……宙を舞う一糸乱れぬ洗練された動作は、無量空処に囚われた小泉純一郎に向け一直線!弾丸の如く舞い戻ったッ!

 今再び、PERFECT HUMANは熊本県庁内部へ舞い戻った!


 左手のブレードは打ち捨て、右手のブレードに渾身を迸らせる。

 その瞳はただ一点───小泉純一郎の『首』ただ一点を狙ったッ!




 スゥゥ──────



「水の呼吸 参の型……流流舞りゅうりゅうまいッ!!」

9月1日 μ's一行、熊本到着


9月3日 麦下到十郎、熊本到着

9月3日 米津玄師のギアスの力で中田敦彦死亡

9月3日 園田海未、死亡


9月24日 南ことり、憤死


9月25日 μ'sファーストライブ


9月27日 米津玄師、笑死


9月30日 何者かにより中田敦彦『殺害』

9月30日 宮崎駿、死亡


10月1日 μ's一行が東京へ一旦帰る

10月1日 高坂穂乃果、タイムリープ



9月30日 中田敦彦、救われる

9月30日 旧統一教会本部、壊滅

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