破滅
サリバ達が喫茶店に居る頃、王都である事件が起きた。
「あっ、すいません……」
何か荷物を抱えたウルフカットの女性が、兵士にぶつかってしまった。
下を向いてオドオドとしている態度に2人いる兵士の内、1人は荷物を拾ってあげた。ぶつかられた方の兵士は舌打ちをして不機嫌そうにしている。
「おい!その荷物はなんだ!」
「いいだろ、別に。咎めることでもないじゃないか」
横柄な兵士を宥める若き兵士は、女性に荷物を押し付けて早く去るようにジェスチャーをした。
女性はぺこりとお辞儀をして人混みの中に消えていった。
「う〜ん、あの人は良いね。生かしておこう。もう1人は……破滅へ誘おうか」
フードを深く被った女性はブツブツと独り言を言い、俯いたままニヒルに笑う。
女性はフラフラと街中を歩き回り、時々人にぶつかっては謝りを繰り返していた。
何時間も炎天中の中で歩き回り、流石に疲れたのかカフェで休憩をしてた。
何をするでもなく、片膝ついて街ゆく人の流れを見ていた。まるで観察するように、まるでその土地の人の癖を知ろうとするように、見ていた。
しばらくすると、砂漠のこの地方特有の砂嵐がすぐ近くで発生した。
遠目からでも認識出来るソレに王都中は慌てた。
直ぐさま建物の中に入る人々。
砂嵐を治めに行く兵士や、魔法使い。
青い顔で向かう兵士と、対照的にニヤニヤと箒に乗り、兵士を見下し、ヘラヘラとしている魔法使い達。
女性は魔法使いの乗っている箒が異質だと感じ、何処からか取り出したスケッチブックに物凄い速さで描いていく。夢中になるあまりに、カフェから出て、真下まで来ていた。
「おい!何してる!さっさと建物に入れ!って、さっきの人!」
「?ああ、運のいいひと」
「運のいいひと?何を言ってるんだ、最悪の日だよ!ほら、さっさと避難してくれ!」
「フフフ、君が連れて行ってよ。そうすればお咎めもない。でしょ?」
「いや、しかし……」
「何してるブロウ!」
「ハッ!民間人が避難せず……」
「なら、地下1番へ誘導しろ。その後合流せよ!」
「ハッ!」
「しかし、君はさっきの子と同じ人物か?まるで」
「まるで人相が違う?」
「うっ、そ、そうだ」
「まあ、今は気にしないで。さあ、行こう?」
「あ、ああ。こっちだ」
 




