花の位『牡丹』
居心地悪そうに椅子に座って自分で人数分入れた珈琲をすすりながら局長が話始める。
「最近になって魔物の目撃報告が相次いでいる」
険しい表情になる。この街は魔物なんて出るところではなかった。
街を少し外れた森にたまに弱い魔物が合わられる程度で危険なんてないようなものだった。
治安がいい。この街の美点だった。それが脅かされた上に、訳分からない迷宮が2つも増えた。眉間にシワが寄るのも仕方の無いことだった。
「そういえば、モミジさんと初めてあった時も魔物に襲われましたね」
「不用心すぎです。……しかし、そうなると素材の確保も自力では難しくなってしまうのでは?」
「うっ、そうですね。私が弱いばっかりに……」
あの時のことを思い出すと、面目なくなり、情けなくなり、落ち込んでしまう。
シュンと暗い自分の世界へ行ってしまったサリバにデコピンをするとメディは言った。
「魔物に関してなら、泉にも出るらしいわ。水源が壊されてしまうかもしれない。騎士を派遣して貰ってもコストがかかるし、多分根本的な解決にはならない。そうでしょ?」
メディがモミジに目を向ける。
モミジは軽く頷いた。
「そうだと思います。調べてみないと分かりませんが、多分迷宮が関係しているとしか思えませんね」
「なら、調査を!?」
目を輝かせるサリバに、局長が待ったをかけた。
「ダメだ。危険すぎる。せめて位が花以上じゃないと行かせられん」
「位って統括会基準のですか」
「あ、ちなみにサリバは花の位で『牡丹』よ」
「ええっ!?私、位持ちだったんですか!?というか花だったんですか!?」
「……そりゃ君、あの、フラスコを卒業しているんだしな」




