乏しい記憶
それから数日の間、体が起こせるようになるまでの間だが、私はレステの記憶を探った。
彼女はたくさんの子供たちと共に生活している。まだ掴まり立ち程度の赤ちゃんから、大きくても10歳程度に見える子供たちだ。連れてこられて以降、少なくともレステは外に出たこともないので、ここに住んでいるのだろう。
食事の時間は全員集まっているのだろうか、とにかく賑やかだ。大きな部屋にはたくさんベッドが並んでいて、まだまだ小さな子供たちは数人で1つのベットに寝かせられている。生活は子供のほかに、数人の大人がいて、食事やトイレに手を貸してくれるようだった。
言葉は聞こえているけど、人が話している言葉は意味が取れなかった。自分に向けられたシンプルな言葉は理解できる程度の、習い始めた外国語状態。日常生活も、ベット、食堂、トイレと、昼間置いておかれる部屋くらいしか認識していない。あとはいつも同じ人、10代後半くらいの女の子、が小さな子供たちの世話をしてくれているようだ。
家具や道具は木製が多く、布地も生成りやアースカラーのような色味が多い。目に入る限り、木や革、ガラスや金属が少し。自分が使っているベッドのガサガサする感じは、もしかして干し草や藁が詰まっているのかもしれない。ビニルやプラスティックのようなものは皆無で、作られた素材がわかるようなものばかりだ。
子供が集団で生活する場所。寄宿学校や病院にしては雑然としている。もしかして、宿泊込みの長期お預かりの保育園と学童保育みたいなものという可能性もあるが、普通に考えたら養護施設や孤児院的な何かなのだろう。
幼児の見聞きした内容から考えたところで、ここがどこなのか何も分からなかった。医療らしい医療がなく、素朴な道具で生活する環境だ。野垂れ死んだり、浮浪児になっていないだけ幸運なだけなのかもしれない。
動けるようになったら、情報収集。そのためには言葉を覚えること。でも、最優先事項は生き延びること、とでも考えたほうがいいかもしれない。