65話 遂に本番...!
やはり睡眠は気持ちを落ち着かせることができるようだ。
昨日の夜に感じていた不安な気持ちが嘘のように消えている。
だが、その不安な気持ちは今日のイベントに対する緊張感変わった。
僕はベッドから起き上がりカーテンを開ける。
(よし...頑張ろう...)
空にはほとんど雲がない、快晴だ。
日差しに強さに思わず目を細めた。
一階に下りると久しぶりにお母さんが仕事部屋から出ており、リビングでテレビを見ていた。
「お母さんおはよう!」
「おはよ、歩」
「お仕事お疲れ様?」
「うん、無事に終わったよ」
「よかった、お疲れ様」
「ふふ、ありがとう」
お母さんは仕事の疲れが見える表情ではあるが、どこかホッとした様子で笑顔を見せてくれた。
僕もお母さんの姿を見て安心する。
「朝ごはん食べる?」
「うん、お腹すいた」
「準備するからちょっと待っててね〜」
「はーい、ありがとう!」
お母さんが台所に向かって朝食の用意を始める。
僕はその間に洗濯物や掃除の手伝いをしておく。
家事全般は前世から好きだったので、慣れた手付きで進める。
身長が低いので高いところは届かないのだが...
洗濯物を干し終わり、お母さんがネットで買ったモップで床を掃除しているとご飯が完成した。
お母さんに呼ばれて朝ごはんの並ぶ机に座る。
「いただきます」
「いただきます!」
「今日は遂にMonster Live杯だね」
「うっ...!?ごほ...い、いきなりその話題...?」
「だってお母さんも楽しみなんだもの、それより昨日は大丈夫だった?」
「あ、うん大丈夫、寝たら楽になったから」
「それなら良いけど、無理はしちゃダメよ」
「はーい」
少し厚めのベーコンと目玉焼き、ご飯に合う濃いめの味付けで自然と箸が進む。
あっという間に無くなった朝食、僕はお皿を片付けて自室へ戻った。
ネットは既に大盛り上がりだ。
Monster Live公式がトイッターの機能で優勝チーム投票を行っている。
投票が始まって数時間だというのに、ニコさんのチームがかなり差を付けて一位予想されていた。
僕のチームはキラリちゃんがいるからか、現段階では五位予想されている。
(僕も頑張らないと...!)
僕はASSを起動し、射撃場モードを開始した。
マネキンがいろんな地点に置かれ、それを撃つモードや走り回るマネキンを撃つモード。
さまざまな練習ができるこのモードで大会までにエイムの調子を上げることにした。
時間は夕方、あの後お昼を食べた後も練習を行い付け焼き刃程度ではあるが、動く相手にエイムを合わせる技術を習得した。
既に早めのお風呂を済ませて、晩御飯も食べ終わっている。
配信二時間前、まだ時間があると思いもう一度射撃場モードを始め今日の練習をおさらいしておく。
(よし、結構頭にも当てられるようになってきた)
僕はもはや作業と化してしまったマネキン撃ちを配信開始時間まで続けるのだった。
ふと目が覚める。
眠ってしまっていた...!?
これまでにない速度で時計に視線を移す。
配信開始三十分前...ギリギリだった...
よくアラームも無しで起きることができたなと感心しながら、ML杯専用のシャベルサーバーを確認する。
僕のチーム専用の通話部屋には既にキラリちゃんや工作さんが待機していた。
僕は配信準備を終えて、通話部屋に入室する。
「あ、狐狐ちゃん!こんばんは!」
「狐狐さん、こんばんは」
「こんばんは〜」
「昨日の配信見ましたけど、今日の体調はどうですか?」
「あ、はい、大丈夫です」
「心配してたんだよ〜!」
「ご心配お掛けしました...」
「全くだよ〜...今日は楽しく頑張ろう!」
「はい!」
その後、きのこさんとレヴィさんも合流し、まもなく配信開始の時間になった。
@九尾狐狐 Monster Live三期生
遂に本番です...
チームのみんなで優勝目指します!
【第一回ML杯】優勝目指して、いざ戦場へ...!【4Kテレビ】配信中
本配信を確認すると、実況解説の人やゲストとしてプロゲーマーの方がニュースキャスターのように机に座っていた。
その人達の紹介が終わり、今回のイベントの説明が始まる。
今回はMonster Liveが主催するゲーム大会。
各チームに一人ずつMonster Liveの Vtuberが入り、残り四人を抽選に当たったVtuberさん。
その五人でチームを組んでASSというゲームで戦うというものだ。
優勝チームには賞金とセブンママのチームイラストが用意されており、他にもいくつか賞があってそれぞれに商品が用意されているらしい。
その商品は僕達Monster LiveのVtuberも知らない。
説明が終わると各チームの名前、メンバー、意気込みがスライドで紹介される。
各チームが紹介される度にコメント欄の流れが速くなる。
もちろん、僕達のチームも紹介されココ友の皆さんや他の四人のファン達が賑やかしてくれた。
チーム紹介も終わり、遂にカスタムが開始される。
既にサーバーには総勢六十名のVtuberが揃う。
個人個人名前の頭にチーム名を【】の中に書いている。
僕達の名前は、【4K】〇〇で統一した。
「まもなく開始みたいですね...!」
「楽しみだ〜!」
「緊張しますねこれ...」
「工作さん緊張しすぎなのです」
「狐狐ちゃんだって緊張しまくりなんだよ!」
「そ、そうですよ!工作さんまで緊張したら緊張がうつります...!」
【頑張れ〜!】
【俺達も何故か緊張してるぞ!】
【4KテレビWIN!!】
【4Kテレビ頑張れ!】
【キラリちゃん試合壊してくれ...!】
コメントも盛り上がりを見せる。
僕達は優勝目指して戦場に向かうのだった。




