5話 初配信を終えて
「で、ではまとめますね!」
【まとめ助かる】
【有能】
決まったタグを画面に表示させていく。
視聴者の総称→ココ友
ファンアート→♯ココ見て!
センシティブ→♯ココは見ないで
告知に使うタグ→♯狐狐ライブ
「皆さん、こんな僕ですが、また見に来てもらえれば嬉しいです...
今日はありがとうございました...!」
僕はそう言ってマイクを切り、放送終了画面に切り替える。
コメントには温かいコメントが溢れていた。
人と話すのが苦手な僕でも配信できた...最初は泣いてしまったけど...
緊張のせいか無我夢中で話していて、記憶が抜けている部分があるが大丈夫だろうか...
うっすらとMonster Live一期生と二期生のことを語った記憶がある...
気が少し早い気がするがエゴサしてみようと思いトイッターを起動した。
事前に作っていた狐狐のアカウントには既に一万人ものフォロワーがいた。
さすがMonster Liveである...
フォローしているからか、同期のトイッターが真っ先に見える。
@鬼野鳴子 Monster Live三期生
配信お疲れ様〜!
狐狐ちゃん頑張ったわね!
ゆっくり慣れていこう!
♯狐狐ライブ
@ガシャ=ド=クロ Monster Live三期生
緊張しすぎ、でも頑張った。
お疲れ様
♯狐狐ライブ
@赤桶奈女々 Monster Live三期生
泣き声可愛かった!
もっといっぱい泣いて欲しかったな...
とにかく!配信お疲れ様!
♯狐狐ライブ
同期のみんなのトイッターには多くのコメントが書かれ、分かる・共感ボタンもたくさん押されていた。
そのコメントを見ていて僕はとんでもないコメントを見つける。
『そういえば狐狐ちゃんトイッターで告知してた?』
配信の告知忘れてたぁあああ!!!!
ここはVライバー好きの集まる掲示板。
今日も語りたいオタクたちが集うのだった。
無名さん
『Monster Live三期生の初配信終わったな』
無名さん
『いきなりだけどみんな誰推し?俺は狐狐ちゃん』
無名さん
『奇遇だな、俺も狐狐ちゃん』
無名さん
『流石に初手号泣+後半早口は印象残るって』
無名さん
『コミュ障なのによく頑張ってたよな、俺はずっと応援したいと思った』
無名さん
『俺も』
無名さん
『というか途中からただのオタクになってた』
無名さん
『あれがオタク特有の早口...俺でなきゃ聞き逃しちゃうね...』
無名さん
『オタクトークになるとマジで噛まなくなるのすごいと思う』
無名さん
『ただとにかく必死!ってのが伝わってきてこっちまで緊張してたわ』
無名さん
『なんか応援したくなるよな』
無名さん
『流れ切るようだけど俺は奈女々ちゃんを推したいかな、あのぶっ飛んだ感じの子好きなんだよね』
無名さん
『初配信でマネージャーからストップ来るって相当だよな』
無名さん
『俺はドクロちゃんかな〜、クール系女子好き』
無名さん
『同志よ』
無名さん
『最初見た感じ厨二病の子と思ってたけどクール系だった』
無名さん
『鳴子ちゃんの幼馴染のお姉ちゃん感が俺は好きだな』
無名さん
『鳴子ちゃんもいいよなぁ...癒される』
無名さん
『結論、みんな最高ということで』
無名さん
『異論なし』
無名さん
『異論なし』
無名さん
『ただ狐狐ちゃんが今後コラボとかできるか心配』
無名さん
『それな』
無名さん
『毎回号泣から始まる...?』
無名さん
『脱水症状で死んじゃう...』
掲示板は今日も盛り上がり続けるのだった。
初配信を終えた僕は達成感と脱力感でベッドに横になっていた。
改めて我ながらよくやったと思う。
エゴサで見た感じ大失敗ではなさそうだ、自己評価では80点くらい貰ってもいいはず...
その時、部屋の扉が開かれる。
「歩、お疲れ様!」
「お母さん...」
「あ、狐狐ちゃんの方が良かった?」
「お母さん見てたの!?」
「もちろんよ、他の子も良いけどやっぱりお母さんは狐狐ちゃん推しよ」
「恥ずかしいからやめて...」
「でもいっぱい話せたじゃない、やっぱりデビューして正解だったね!」
「緊張しすぎて何も覚えてないよ...」
「初めてにしては上出来よ!
だって今までは話す事自体できなかったでしょ?」
「それはそうだけど...」
「じゃあ大きな一歩よ!
これからコミュ障を治しつつVtuber界を盛り上げていきましょう!」
「う、うん...頑張る...」
「ご飯できてるから食べたい時に降りてきてね」
「ありがとう、でも眠いかも...」
「いっぱい話したもんね。
分かったわ、起きてお腹空いたら温めて食べてね」
「うん、ありがとう」
お母さんはにっこりと微笑んで部屋を出て行く。
僕は褒められたことが嬉しく、自然と笑みを浮かべていた。
これからも...配信...頑張ろう...!
僕は疲れからか、そのまま自然と眠りに落ちて行くのだった。
僕が眠ってすぐ、三期生のシャベルグループに書き込みがあった。
『皆さんお疲れ様でした』
『お疲れ様〜!』
『お疲れ様!』
『お疲れ様』
『あれ?狐狐ちゃんはいないっぽい?』
『配信で疲れてるんじゃないかしら』
『狐狐ちゃん、頑張ってた』
『そうね、狐狐ちゃん必死だったものね...』
『狐狐さんがいませんが一応連絡しておくことがあります』
『はい、なんでしょう!』
『みなさんには配信での交流も兼ねて三期生コラボをしてもらおうと思います』
『お!早速ですね!』
『狐狐ちゃんは話せるかしらね...』
『フォローはする』
『企画は雑談などで、初配信の感想などを話してもらおうと思います』
『反省会みたいな感じかしら?』
『大体そんな感じです』
『楽しみだね〜!』
『うん、楽しみ』
『連絡は以上です、日程などは皆さんにお任せしますが出来るだけ早いと助かります。』
『は〜い!』
『了解しました』
『分かった』
数時間後、目が覚めた僕はスマホの通知に気付く。
三期生のチャットを開き、未読部分から見直す...
(コ...コラボ...!?)
コラボを知った僕の部屋に小さな悲鳴が響くのだった。




