45話 打ち上げはバイキング
車に揺られること数十分、目的のお店に着いた。
このお店はバイキング形式でいろんな食べ物があるので女性にも人気のお店らしい。
実際、受付に女性のグループが並んでいた。
僕達は宴会用の広い個室に通された。
各自ジュースを用意して席に着き、乾杯の音頭をルドラさんが取ることになった。
「あ、あんまりこのようなことは慣れてないのだがな...
とりあえず、今日のイベント成功と三期生との初対面を記念して、乾杯!!」
(全員)「乾杯!」
「いっぱい食べるのだ!」
「食べ切れる分だけ取るんだよー」
「私達も行きましょうか」
「一気にみんな行ったら混雑するし私は少し待ってるよ」
「私も」
「それじゃあ私も時間を置いて行こうかしら」
「そうだね、私も待っておこうかな」
二期生全員とニコさんとルドラさんが先に席を立つ。
レミさんとソラさんと三期生の僕達はとりあえず待っておくことにした。
「狐狐ちゃんは田舎の方から来てるんだったよね?」
待ち時間、ソラさんが話しかけてくる。
「あ、うん田舎から来てるよ」
「ソラさん聞いてよ!狐狐ちゃん移動でボロボロになってたんだよ!」
「ちょ、ちょっと奈女々ちゃん...?」
「トイッターで何かしら起こってると思ってたけど何があったの?」
「狐狐ちゃん人見知りだから道聞けないし、方向音痴だから迷って、しかもスマホの充電まで切れてたんだよ...」
「うわ...大変だったね...」
「心配してた」
「全員で探し回ったのよ、無事で本当に良かったわ」
「ご心配お掛けしました...」
「初めての都会だから仕方ないよ、これから慣れて行こう」
そこで部屋の扉が開き、最初に取りに行ったみんなが美味しそうな料理を皿に持って帰ってきた。
「待っていただきありがとうございます。
残りの皆さんが持って来るまで待機していますね」
「食べててもいいよ?」
「では先に頂いておこうか」
「うん、そうして」
「ほら狐狐ちゃん行こう!」
僕は連れられるように席を立つ。
頑張ったせいかお腹もいい感じに空き、僕は思い切って並んでいるお皿の中でも少し大きめのお皿を手に取った。
僕は最初にサラダを食べるのでお皿に野菜を盛る。
胡麻ドレッシングを他の料理に掛からないように少しだけ掛け、お寿司やお肉などを余ったスペースに並べて行く。
空腹だからか、もうちょっと食べれるかもと思い少し多めに盛ってしまった。
僕は自分の席に戻る。
「狐狐ちゃんちゃんと野菜食べるんだ」
「うん、最初は野菜食べたいなって」
「偉いね〜」
そう言う奈女々ちゃんのお皿には茶色い食べ物が盛られている。
部活やってる男子くらいでしか見ないお皿をしていた。
「奈女々ちゃん茶色ばっかりじゃない!?」
「パンちゃんもいる?」
「私はバランス良く食べたいの、揚げ物は厳禁よ」
「偉いね〜...」
「偉いねbotになってる」
「だってみんな偉いんだもん」
推し達の会話を聞きながら食べるご飯は美味い...
そう思いながらもぐもぐと食べ進める。
他のみんなも時々話しながら食べ進め、何人かはおかわりをしに行った。
僕はすぐに満腹になり、デザートをちまちまと食べていた。
みんなもいろんな話で盛り上がる中、僕は気になったことを聞いてみる。
「そ、そういえば、新しいMonster LiveはMonster Live四期生じゃなくて、Monster Live familyなんですね」
そう聞くと、マネージャーの葵さんが少し気まずそうに話し始める。
「実はセブン先生が体調を崩してしまったんです」
「え...大丈夫なんですか...?」
「はい、睡眠不足や座り続けての作業が続いて限界が来てしまったそうで、先生本人は楽しいからと四期生を募集するつもりだったらしいのですが、さすがに負担を掛け過ぎてしまうと判断して新シーズンとすることにしました」
「そうなんですね...」
「私達三人の新衣装モデルを寝ずに作っていたらしいわ」
「しかもイベント前日にだって...」
「頑張りすぎ」
「それは頑張りすぎだね...」
「ちなみにラフ画は完成してるってさ」
セブンママは描く速度が尋常じゃなく速い上にクオリティが低くならないのだ。
Vtuber界トップ級のMonster Liveを支えるママがどれほどの人材なのかが伝わる。
「と言うことは、新しいママは誰になるんですか?」
「それは募集します。
もちろんかなり難しい条件もあるのでそう簡単にママになれるものでもありません」
「Vtuber界の顔のようなグループなのよ?
しっかりしたママが来てくれなきゃ!」
パンさんが胸を張ってそう言った。
「とりあえず今言えることは新シーズンではママが新しくなることと、ライバーのコンセプトを人外であること以外固定せず、様々な種族のモデルをデビューさせていきたいと思っています」
「凄く楽しみです...!」
「す、すごい...狐狐ちゃんの目が輝いてる...」
ソラさんに顔を覗かれた。
輝くのも無理はないだろう、僕はそもそも人外が好きなのだ。
それに加えてVtuberが好きだ。
その結果Monster Liveが僕の好きが寄せ集まったようグループなのである。
まだ見ぬ新しいライバーがデビューすると考えただけでもテンションが上がっていく。
話もひと段落し、終了の時刻までジュースを飲んで時間を潰す。
僕は炭酸を味わいながら周りを見渡した。
今ここにいるのは僕の推しの人達、そのグループの一員として僕はここにいる。
ネガティブになりやすい性格なせいか、やはり考えてしまう。
(僕なんかより、もっとVtuberになりたい人がいたんじゃないか...?)
胸のどこかに感じる罪悪感を流し込むように、コップに残ったジュースを飲み込んだ。




