36話 都会を巡る三期生
電車に揺られること十数分、遂にオタクの聖地へ辿り着いた。
駅周りの壁にはMonster Liveのみんなの立ち絵が並び、明後日開催されるイベントを告知している。
イベントに参加するファンだろうか、何人かがスマホで写真を撮っている姿も見えた。
「ほ、本当に貼られてる...!」
「なんか有名人になった気分だね」
「そうね、有名なのはVの姿だけれど」
「私達有名人」
「というか、人多いね...」
平日の昼だというのに、結構な人数が行き来している。
有名になってきたこともあり、僕が狐狐だとバレないかという不安が襲ってくる。
不安そうな表情でバレたのか、優里ちゃんが手を繋いできた。
「わっ...」
「大丈夫、私達もいる」
「何〜?歩ちゃん心配してる?」
「う、うん...ちょっと怖くなっちゃって...」
「可愛いね〜、大丈夫大丈夫!」
「な、撫でないで...」
「髪崩れるからやめてあげなさい」
「はーい」
「とりあえず初めての都会だし、あちこち回りましょ」
僕は三人に連れられて駅を出た。
そこに広がっていたのは高い建築物が並び、看板にはアニメやゲームの広告が貼られている。
グッズ屋を覗くと様々なグッズが所狭しと置かれ、ファンを呼び込んでいるようだった。
「す、すごい...!」
「歩ちゃんは田舎に住んでるんだっけ?」
「うん、周り山ばっかりだよ」
「田舎いいな...」
「私達はずっと都会だから田舎に憧れるわ」
「田舎良いところだよ」
「じゃあいつか歩ちゃんの家にみんなで行こうよ!」
「さ、流石に遠すぎると思う...」
「だよね〜...」
「いつか機会があったら、で良いんじゃないかしら」
「うん、諦めるのはまだ早い」
「そうだね、いつかのお楽しみって事で!」
「う、うん...」
まずは朝ご飯を済ませることになり、良いお店を探す。
僕は右も左も分からないので三人の後を着いていく。
足が短いせいかトテトテと擬音が付きそうな感じで歩いていた。
「朝だからお腹に優しいもの食べたいわね」
「そうだね〜」
「歩ちゃんは何食べたい?」
「え、えっと...都会っぽいもの食べたい、かな...」
「都会っぽいものね...」
「都会っぽいものか〜...」
「何かある?」
僕の意見で三人が考え込んでしまい、罪悪感に包まれた。
近くにあった蕎麦屋さんが目に入り、すぐに提案する。
「ぼ、僕あの蕎麦屋さん行きたいな...!」
「私蕎麦好き」
「お蕎麦だったら軽いし良さそうね」
「私も賛成〜」
「お蕎麦でいいの?」
「う、うん!こんな感じのお店来たことないし、なんか都会っぽい感じするなって思って食べたいかなって...」
「必死にならなくていい、私も蕎麦食べたい」
「うぅ...ありがとう」
僕達は蕎麦屋さんに入店する。
食券を買って僕達は席に座り、蕎麦が来るのを待つ。
成美ちゃんがネギたま蕎麦、恵ちゃんが肉蕎麦、優里ちゃんがざる蕎麦、僕はきつね蕎麦の子供サイズを頼んだ。
別にキャラに合わせたわけではなく、普通に厚揚げが大好きなだけである。
だが、三人の視線は何か微笑ましいものを見る目をしていた。
「ご馳走様〜」
「ご馳走様でした」
「ごちそうさまでした」
「ご馳走様でした、美味しかった」
「美味しかったわね」
「私も初めて来たけどまた来たいかも」
お腹いっぱいになった僕達はグッズショップを回ることにした。
都会限定のグッズもあるらしく、僕はまだ見ぬMonster Liveグッズに胸を高鳴らせる。
「まずはここよ」
「おぉ...!」
見渡す限りグッズの数々、既に部屋に飾っているグッズもあるがネットでしか見たことのないグッズ、存在すら知らなかったグッズが置かれていた。
「全部買う...」
「うわぁ、歩ちゃん大人買いだ...」
「私もこれ買う」
「大荷物にならないようにね」
アクリルキーホルダー、缶バッジ、クリアファイル、ブロマイドなどなど...
すぐさま僕の片手は大きな袋で埋まるのだった。
そして次の店、そのまた次の店で新たなグッズを買い終わるとパンパンの袋を持つ僕がそこにいた。
「全部買ってしまった...」
「流石に買いすぎたんじゃない...?」
「でもMonster Liveグッズは全種類揃えたいから」
「流石ね」
「今からお昼ご飯食べにいくけどその荷物大丈夫?」
「だ、大丈夫...!」
「それでどこに行こうかしら」
「僕ここ行きたいな」
スマホで画像を見せる。
僕が行きたいのは僕の地域にはないファミレス、トイッターで写真を見てずっと行きたかった。
三人に着いて行き、憧れのお店に入店する。
「ここが...!」
「歩ちゃん目が輝いてるわよ」
「ずっと来てみたかったから...!」
「早く何か頼もうよ、お腹空いちゃった」
「私はこれ」
優里ちゃんに釣られるようにみんな注文を決めた。
数分後、僕達の前に並んだ料理達は美味しそうな匂いを漂わせる。
僕達は手を止めることなく平らげるのだった。
「さあ、お腹もいっぱいだし今日の夜配信に食べるご飯やデザートを買いに行くわよ」
「やった〜!」
「お菓子は昨日のがあるけど」
「いっぱいあって損はないでしょ?」
「それもそう」
「僕も甘いものならいっぱい食べるよ」
「あんまり食べ過ぎも良くないけど、たまには良いわよね」
「早速出発!」
「おー!」
「お〜!」
「おー」




