33話 なんとか合流...
長い間電車に揺られ続け、今は鳴子ちゃんの車に揺られていた。
助手席に奈女々ちゃんが座り、隣にはドクロちゃんが座る。
車の場所まで移動する間に落ち着きを取り戻し、泣き出したことが恥ずかしくなってきた。
「狐狐ちゃんお疲れ様」
「あ、はい...泣き出してすみませんでした...」
「初めての都会だもん、仕方ないよ」
「終電までに辿り着けて良かったわ」
「ご迷惑...お掛けしました...」
「問題ない、というか敬語...?」
「確かに、敬語じゃなくていいのに」
「えっと...リアルだと、その...まだ慣れなくて...」
「またゆっくり慣れていきましょう」
「そうだね〜」
今までパソコン越しに聞いていた声が今すぐ近くで聞こえる。
みんなリアルの姿も美人さんで元男のせいもあってか緊張感が高まり続けていた。
自然と内股になり視線を合わせないように窓の外を眺める。
「そういえばどうして連絡付かなかったの?」
「えと...モバイルバッテリーの充電が...なくて...」
「充電忘れ?」
「あ、はい...」
「あらら...」
僕はなぜここまで遅れてしまったのか話し始める。
全ての始まりは最初の駅を出発した後からだった。
降りる駅を確認し、間違えないように電車を降りる。
何回も駅に停まるため時間がかなり掛かり、空港の次の目的地に着く頃にはお昼時になっていた。
(充電が3%...お店に着いたらモバイルバッテリーで充電しよ)
そう思い、マップを頼りに駅近くの飲食店を探す。
数十分探していると、美味しそうなパンが店内に見えたお店を発見し、そこでお昼を食べることにした。
ちょうどのタイミングでスマホの充電が切れてしまい、僕はバッグにスマホを入れる。
「いらっしゃいませ」
お洒落な店内、心地よい音楽、一瞬にしてこのお店にして良かったと思う僕だった。
メニューは様々なパン類があり、僕はランチのサンドイッチを頼んだ。
サンドイッチを待つ間に充電しようとモバイルバッテリーにコードを刺した時だった。
モバイルバッテリーは光らず、スマホにも充電中のランプが付かない...
(嘘...充電切れ...?)
一気に血の気が引いた感覚が全身を襲う。
外出しないせいで地元ですら詳しくないというのに、右も左も分からない場所で目的地に行けるとは思えない。
そんな中メニューが届いた。
(慌てても仕方ない...落ち着こう...)
幸い、何度も確認したおかげで最終目的地の駅名は覚えている。
どうにかして向かえるはずだ...
具材たっぷりのサンドイッチの美味しさが口一杯に広がり、気持ちが少し落ち着いた。
さあ...頑張ろう...!
お腹も膨れ、そう意気込んでお店を出た。
(この電車に乗って、この駅で降りる...)
念のために持っていた紙とペンが役に立った。
どうにか目的の電車に向かう。
(人が多い...!)
凄まじい人の量、しかも一人一人の歩行速度が速い。
小さい僕は人の波に押し流されるように行ったり来たりを繰り返していた。
(待って、反対方向に向かってる...!?)
隣の駅に行くだけなのに、電車は反対方向に進む。
僕は慌てて停まった駅で降りる。
(ど、どこに向かえばいいの...)
行き先が多くなれば電車の量も停まる駅も多くなり、どれが目的の駅に向かう道か分からない。
その他諸々の出来事、電車に乗っていた時間も込みでこの時間になってしまった...
「本当にお疲れ様だね...」
「帰ったらココ友のみんなに無事を伝えるのよ?」
「え、何かあったんですか...」
「みんな狐狐ちゃんのこと心配してた」
「話題ランキングに♯狐狐はどこ?がランクインしてたよ」
「あ、え...そ、そうなんですか...」
「ほら」
ドクロちゃんがトイッターを見せてくれる。
そこにはみんなの心配するコメントがズラッと並び、中にはリアルの僕を知らないのに探すと言う人もいる。
奈女々ちゃんが発見したと投稿していたらしく、その投稿に大量のコメントが寄せられていた。
「明日の配信で謝っておかないとね」
「はい...そうします...」
「罰として一緒にお風呂入ること」
「え...うぇっ!?」
突然の発言に思わず変な声が出る。
生まれ変わって十数年、いくら自分の裸を見てきたとしても他の女性の裸を見ることに耐性は無い。
断ろうとするがそんな隙もなく二人も乗ってくる。
「あ、それいい!私も〜」
「私の家なんだから私も入るわよ」
「あ、い、いや...流石によ、四人は...」
「入れるわよ?」
「入れませ...入れるんですか...?」
「狐狐ちゃんびっくりしそうだね、鳴子ちゃん家見たら」
「も、もしかしてどこかの社長令嬢とか...」
「まあそうね」
「えぇ...まじですか...」
「会社はお兄ちゃんが継ぐから私はあんまり関係ないわね」
「お兄さんがいるんですね...」
「鳴子ちゃんもお兄さんも努力家なんだよ〜」
「うん、凄い」
「急に褒められると照れるわ」
「ぼ、僕も頑張ります...」
「狐狐ちゃんはまずは緊張しないようにすることかしらね」
「う...一番難しいかもです...」
「ってなわけでリアルでも敬語禁止!!」
「ふぅ...わ、わかっ...た...」
「無理しないでいいけど、敬語ない方が嬉しい」
「そういうことよ、みんなリアルでも狐狐ちゃんと仲良くなりたいの」
「あ、ありがとう...頑張る...!」
「その調子よ、このまま明日のオフコラボ、明明後日のイベントも頑張りましょう!」
「お〜!」
「お、おー...」
「おー」




