28話 抽選結果はいかに
月日は流れ、イベント開催2ヶ月前。
抽選の結果が発表され始める。
ネットでは様々な声が飛び交い、色んな意味で盛り上がりを見せていた。
このイベントはチケット転売ができないよう抽選券自体にバーコードがあり、当選者のメールに同じバーコードが送られる。
このメールは写真越しでは読み取れず、メールの再送をするとバーコードが消去されるというシステムになっており、転売を防止しているのだ。
僕は会場行きの飛行機を予約し、鳴子さんの家までのルートを確認した。
何度か電車を乗り継がなければならず、電車とは無縁の生活をしてきた僕は不安に包まれている。
「ダメだったぁ...もうおしまいだぁ...」
場所は変わり学校の屋上。
僕の横では渡さんが項垂れていた。
誰が見ても分かるだろう、抽選に外れてしまったのだ。
「歩さんはどうだった?」
「え、えっと...ぼ...僕も...ダメ、でした...」
「歩さんもかぁ...」
実はグッズを買おうとしたらマネージャーから「誤って当選してしまった場合処理が大変なので」と言われ、なんと運営から直接買うことができたのだ。
お代はココ友の皆さんに頂いているスパチャから払わせていただいた。
ココ友の皆さんありがとうございます...
「それにしてもVtuber増えてきたよね」
「う、うん」
新たな企業も出てきて一期生がデビューしている。
個人勢もどんどん増えていく一方だ。
いろんなVtuberを見ることができて僕は嬉しいが、やはり全員をリアルタイムで追うことは難しいだろう...
「歩さんは狐狐ちゃん以外に推しの子はいる?」
「そ、そうですね...個人勢の方なんですけど、狐のVtuberを見つけて追ってます」
「もしかしてこの子じゃない?」
渡さんの差し出してきたスマホには実際に僕が追っている狐のVtuber、廻 輪廻さん。
九尾狐狐のような幼い感じではなく、絵柄も相まって大人な印象を受けるVtuberさんだ。
話し方も落ち着いており、オンラインゲームで何度か暴言厨を落ち着かせたことで有名になっている。
ゲームが上手く、実力で黙らせている説もあるが...
「輪廻さん聞いてて落ち着くよね、個人勢でも結構トップ走ってるんじゃない?」
「う、うん...」
「Vtuberか〜...私も始めようかな...?」
「へ...?」
「自慢だけど私は狐狐ちゃんのオープニングムービーを作った人だよ?
自分で自分を作り出して、狐狐ちゃんとコラボするんだ...!」
「え、や...やめておいた方がいいんじゃないですか...?」
「な、なんでよ」
「だって狐狐ちゃん、コミュ障だし...」
「大丈夫だよ、優しく語りかけるから!」
「そ、それにお金だって掛かると思います...」
「イラストで結構お金もらってるし、狐狐ちゃんを推す以外にお金使ってること無いから!」
まずい...このままだと渡さんがVtuberの世界に来てしまう。
僕が狐狐であることがバレたく無いし、クラスメイトとコラボなんてできる自信がない...
でもモデルを作る技量とお金があり、Vtuberへの憧れを持つ渡さんを止めることができない。
「歩さ〜ん?」
「うぇっ?、あ...はい...」
「どうしたの、ボーっとして...」
「いや...考え事していて...」
「そっか、あ、そうそう」
そう言うと渡さんが僕の目をガン見してきた。
「今更だけど、歩さんって狐狐ちゃんに似てるよね」
「ぇ...そ、そぉかなぁ?」
「声も少し似てるし、コミュ障って部分もそっくりだし」
「こ、声似てます...?」
「うん、ここにちは〜って言って見て?」
「え、えっと...こ、ここにちは〜...」
「うんそっくりだ!」
「そうかなぁ...?」
「歩さんってもしかして...」
渡さんが考えるような素振りを見せ、閃いたように僕の方を見た。
僕は遂にバレてしまったかとギュッと目を瞑り、渡さんの言葉を待つ。
「狐狐ちゃんの事を意識してる!?」
「いや、僕は違くて...え?なんて言いました...?」
「だから狐狐ちゃんを意識してるんでしょ?
その似た声、一人称、似た性格...推しの声とそっくりなのいいな〜...」
「そ、そう!僕狐狐ちゃんみたいになりたくてさ、そうすればいつかコミュ障も治るんじゃないかなって...!」
「そうだね〜、コミュ障治すの頑張ってね!」
「う、うん...ありがとうございます...」
「あーあ、歩さんが狐狐ちゃんだったらサインとかもらうし、オフコラボとかしたかったんだけどな〜」
「た、多分狐狐ちゃんだったとしてもオフコラボとかはしないと思います...」
「そうか...ってイベントに狐狐ちゃん出るってことは狐狐ちゃん初のオフコラボあるんじゃない!?」
「ど、どうでしょうね...」
「やばい!楽しみが増えた!
夏休みの課題出た瞬間に全部終わらせてやる!!」
「が、頑張ってください...」
張り切る渡さんを横目に、僕は冷や汗を流した。
逆に今のでバレないのか...
僕は胸を撫で下ろすのだった。




