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前世がコミュ障男な僕がVtuberになれますか?  作者: カムカム
1章 コミュ障、Vtuberデビュー!?
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1話 高校生活はスタートが肝心

今後は2日に1話投稿していきたいと思います

暖かい日差しが照らす教室に涼しい風が吹き込む。

今日は高校の入学式だ。

胸に花を付けた学生達が続々と自分の教室へ足を運ぶ。

教室に着いた途端、コミュ力の高い人達がグループを作っていく。

だが、僕はその輪に混ざらず教室の隅の席から仲良く会話する人達を眺める。

クール系で高校デビューしようとしているわけではなく、ただ単純になんと話していいか分からず馴染めないのだ。


「終わったらカラオケ行かね?」

「行く行く!同中の奴らも連れてきていい?」

「いいぜ、学割だから結構安いと思うぞ」


男子グループからそんな会話が聞こえてきた。

今日会ったばっかりだよね...?

なんでいきなり密室空間のカラオケに行けるのだろうか。


「この後スイーツ食べに行こう!」

「いいね〜私好きなんだよね、甘いの」

「私オススメしたいお店あるからそこ行こうよ」

「うん、行く!」


今度は女子グループから聞こえて来る。

スイーツか、僕も甘いものは好きだから場所だけ教えて欲しいかな。


そんなことを考えているうちに、次々とグループが出来上がっていく。

あっという間に僕以外の全員がどこかの輪に入っている状態になってしまった。

もしかして、僕以外みんな陽キャなのか...?


数分後、チャイムが鳴るとほぼ同時にガヤガヤとした教室に教師が入ってきた。

流石に入学早々怒られたくないのか、皆静かになり自分の席へ戻る。

教師は若い男性だ、失礼かもしれないが見た目は完全に教育実習生のようだった。

教師は配布するプリントを教卓に置き生徒の方を見る。


「みんな入学おめでとう!」


祝いの言葉から始まった教師の話は数分で終わり、学校での注意事項を簡単に説明しただけだった。

そして、自己紹介が始まり出席番号が早い順に名前と趣味や目標など簡潔にまとめられた自己紹介をする。

僕は苗字がわ行な為、出席番号は最後だった。

徐々に迫る自分の番...寿命が縮んでいく感覚に襲われる。

もちろん逃げることもできず、ついに来た僕の番...


「はいよろしく、部活頑張れよ!

じゃあ最後、鷲川歩(わしかわ あゆみ)

「ぅ...は...はぃ...」


頑張って返事をしたつもりが震える声が教室に響く。

みんなの視線が僕に向けられて緊張で声が出なくなりそうだ。

今にも泣きそうではあるがどうにか声を振り絞る。


「ぼ、ぼくは...わしかわ、あゆみです...」


徐々に声が小さくなってしまう。

緊張からどんどん頭の中が真っ白になっていき自然と下を向く。

次は何を話していいか分からず、考える間の2秒ほど教室は静まり返る。


「あ、え...えと、音楽とか、聴きます...お願いします...」


一瞬の間が空き、拍手が送られる。

まばらな拍手が僕の心にとどめを刺す。

中学までの人生を振り返り、コミュ障をどうにかしたいと高校デビューを目指したがこの有様である。




自己紹介が終わり今日は解散となった。

チャイムを合図に、生徒達は待ってましたと言わんばかりに教室から飛び出していく。

僕もその流れに任せるようにトボトボと教室を後にする。

廊下を歩いて下駄箱に向かうその時、後ろから肩を叩かれた。


「ひぃ!」

「あ、ごめんごめん...

確か歩さん、だったよね?」


女子生徒に話しかけられるが名前が分からない、顔は見た記憶があるのでおそらくクラスメイトだろう。

自分の自己紹介に必死でクラスメイトの名前は誰一人分からない。

肩を叩いてきたいかにも活発系の女子は満面の笑みを浮かべて話す。


「今からスイーツ食べにいくんだけど、歩さんもどう?」

「え...あっ、えと...スイーツ...」

「あ...もしかして甘いの苦手だった...?」

「う、あ...うん、ごめんなさい...」

「そうだったんだ、ごめんね無理に誘っちゃって。また明日ね!」

「うん...」


走り去っていく女子生徒の背中を見て、僕は自分が惨めに思えてしまったのだった...




「ただいま...」

「おかえり、...その様子だと失敗しちゃったみたいね?」


家に帰るとエプロンを付けたお母さんの鷲川奈々(わしかわ なな)が玄関まで来てくれる。

お母さんは僕がコミュ障だということを知っており、なにかと応援してくれているのだが期待に応えられず高校まで来てしまった。

その高校でも早速失敗している為、もうどうしようもない。


「うぅ...上手く話せないよ...」

「そうね...でもこれから話せるようにならないとこれから苦労しちゃうよ?」

「分かってるけど...」

「うん、頑張って慣れていこう」


頭を撫でてお母さんはリビングに歩いて行った。

僕は二階の自室に入ると学校指定のカバンを机に置き、部屋にある姿見で自分を見た。

そこに映るのは悲しそうな表情を浮かべる僕がいた。


「体は美少女なんだけどなぁ...」


150くらいの身長、少しだけ存在を主張する小さな胸、少し長いサラサラの髪、パーツの整った顔。

“前世の僕”がこの子を見たら一目惚れしそうなほどの美少女が鏡に映る。


前世では「美少女になれば人生イージーゲームだ!」と口癖のように言っていたが、いざ実際に生まれ変わっても中身が変わらなければ意味はないのだろう。

美少女に生まれ変わって、チヤホヤされるのなんて夢物語だろう。

クローゼットのハンガーに制服を掛け、部屋着に着替えて愛用の机に座る。


(推しの配信でも見て癒されよう...)


僕はパソコンを立ち上げ、動画サイトのMe tubeを立ち上げる。

星の数ほどある動画の中でもVtuberの配信を僕は追っていた。

Vtuberは二次元(バーチャル)の絵を現実(リアル)の人の動きに合わせて動くようにする事で、そのキャラクターが配信をしているように見えるのだ。


前世でハマっていたVtuberが生まれ変わった世界でも見れるとは思わなかった。

だが前世で見ていた配信者はおらず、世界線が違うのだろうと納得した。


トイッターという前世のSNSと似た物がこの世界に存在しており、眺めていると自分の最推しVtuberが配信の告知をしていた。

『Monster Live』という、人外のライバーだけで構成されたVtuberグループがあり、僕の最推しはそのグループ一期生のパープルドラゴン騎士団団長、ラゴン・ルドラさんだ。

ルドラさんの見た目は、凛々しい顔に立派な2本の角、腰まで伸びた紫色の髪を一本に纏め、背中に生えた大きな翼が時々動いて見える。

いかにもかっこいい系の女性Vtuberなのだが、とてもポンコツでコメント欄には常に「団長ご無事ですか!?」が流れる。


僕もそのギャップに惹かれてファンになったのだ。

そんなルドラさんの告知の動画タイトルを見て心が高鳴った。


『Monster Live三期生オーディション決定!』


僕は迷わずその配信待機場に入場していくのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「体自体は美少女なんだけどなぁ...」 上記を誤字報告しました。意図したものでなければ修正をお願い致します。 言いたい事は分かるのですが、「自体」には自らの体という意味合いもあるので「頭痛が…
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