15話 先輩の3D配信と身近なファン
『それじゃあ、お披露目なのだ!!』
イオさんの声にコメント欄が盛り上がる。
今日はイオさんの3Dお披露目配信、僕も配信をお休みして三十分前から待機していた。
動物園の広場のような空間に3Dになったイオさんがドタドタと擬音が付きそうな感じで走って来る。
ライオンの鬣のようなもふもふの髪が動いている、尻尾が左右に揺れる、小さな体とは思えないほど元気いっぱいな動きがイオさんを感じさせた。
『イオが3Dになったから二期生もみんな3Dになったのだ!』
【待ってた】
【ようやくかぁ!】
【3Dコラボ待ってる!】
実はMonster Liveはすでに一期生全員が3D化、二期生も今日イオさんが3Dになったことで全員の3D化が完了した。
ルドラさんの3D配信があった日、僕は見ていて一瞬気を失ったのが良い思い出だ...
3D配信ではイオさんがコメントのリクエストに答えていろんなポーズをしたり、3D配信恒例のジェスチャークイズが行われていた。
通話で二期生の全員と繋がっており、ジェスチャークイズに答える。
『違うのだぁ!!』
『でもその動きはカンガルーでしょ!?』
『僕はあんな変な飛び方はしない!』
『うさぎさんかなー?』
『あー...言われてみればそうかも...?』
『違うのだ!もっとカッコいい動物なのだ!』
『『『かっこいい動物...?』』』
【ハモったな】
【マジでこの動き分かんないぞ】
【もしかして...表現下手...?】
【しゃがんでジャンプ...若干の前傾姿勢...】
【わかんねぇ...】
『なんで人間たちも分からないのだ!!』
何度もしゃがんでジャンプを繰り返すイオさん、しかし誰も分からず時間切れになってしまう。
画面にテロップで答えが表示された。
『『『ライオン...!?』』』
『ライオンに決まっているのだ〜!!』
【ライ...オン...?】
【ど、どこがライオンなんだ...】
【考察班求む】
『これはライオンの狩りの動きなのだ!』
『ライオン...確かライオンは狩りの時飛ばないわよ?』
『え...な、何を言っているのだ...
そ、それはパンがパンダだから知らないだけなのだ...』
『飛んで狩りをするのはトラだねー』
『そうなのだ!?』
『イオ...もしかして君は...トラに育てられたライオンなのかい?』
『じ、実はそうなのだ!
トラの狩り方にライオンの鬣!
イオが正真正銘百獣の王なのだ!』
【飛んで狩りするのはトラなんだ...今知った...】
【イオちゃんはトラに育てられたのか】
【そんなことよりもう一回ジャンプ見せて】
【どちらにしろ可愛いから関係ない】
その後も独特の表現をするイオさんに視聴者も二期生の皆さんも振り回されていた。
だが全員が楽しそうで見ている僕も終始笑って配信を見ていた、ワイワイとした雰囲気のまま配信は幕を閉じる。
「イオさん可愛かったなぁ...」
しみじみと独り言を呟く、僕は一番がルドラさんなだけで全員好きなのだ。
これで3D化が三期生以外終わり、トイッターでは三期生の3Dに期待する声が多かった。
僕もいつか3Dになれるのかな...
九尾狐狐のモデルを思い浮かべながら、今日はそのまま就寝した。
(なんで月曜日の朝ってこんなに憂鬱なんだ...)
暑くなり始めた今日この頃、夏服も解禁されて僕は半袖で学校に向かう。
あまり肌は出したくないのだが自然には勝てない。
いつも自転車を停める駐輪場の端に到着した。
校内だからといって盗まれないとも限らない、僕は鍵を閉め鞄に鍵を入れる。
慣れた動作で一連の流れを済ませて教室に向かう。
遅刻はしないように余裕を持って登校しているので生徒の数はまだそこまで多くない、教室にもそこまで人はいないようだ。
だが未だに教室にいる人に視線を送られるだけでもドキリとしてしまう。
配信では話すことに慣れたのだが、現実で人と話すのはまだ時間がかかりそうだ。
時間が経つにつれ生徒も増え、席が埋まった頃にチャイムが鳴った。
それは授業が終わった時だった。
「昨日のイオちゃん可愛かったね!」
「ね〜!」
「......!?」
休み時間、僕の右斜め前の席に集まった女子二人の会話に思わず聞き耳を立てる。
狐狐の事を話してほしい気もするし、話さないでほしい気もする...
「イオちゃんの元気な感じいいよね...!」
「分かる、動きも可愛いし」
「ほかに推しいる?」
「イオちゃん以外か〜...」
「私はニコさんだな〜」
「ニコさんいいよね、話し方とかも大人な感じで」
「(分かる...あの落ち着いた声での雑談配信はめっちゃいい...)」
「そっか、ニコさんか...
私は三期生のドクロちゃんかな!」
「ドクロちゃんもいいね...ホラゲ配信ゲーム怖いけどドクロちゃんが冷静で安心して見れる」
「(そう!ドクロちゃんは怖いゲームを怖くないようにプレイするのが上手いんだ...)」
「後三期生だと狐狐ちゃん!」
「ゴホッ!!コホッ...」
びっくりしすぎて唾が気管に入った...
二人から視線を感じるが、俯いて回避する。
その後も二人のMonster Live談義は休み時間ごとに行われていた。
こんな身近にMonster Liveファンがいるとは思わなかった...身バレに注意しないと...