149話 Monster Liveを愛する者達④
ニコさんの話によると、世界を繋ぐゲートは常に魔力が漏れているらしい。
現世の空気が異世界に入るだけなら何の影響もないのだが、異世界から現世に魔力が漏れることが問題。
ストレス社会によって人間から発生した負の感情が魔力によって悪霊と化すそうだ。
その悪霊を裏で退治しつつ人々のストレスを緩和させるために配信者となったのが一期生。
それに続いて愛嬌のある動物園のアイドル達を魔石で人間化させ二期生としてデビューさせた。
それでもなお悪霊は増えていくばかり、最終手段として現世からデビューした三期生に後を託し、ゲートそのものを閉じることにしたのだ。
「そうすれば魔力が現世に漏れてこないんですね...」
「悪霊は増えないけど一期生も二期生も配信できなくなっちゃったんだ...」
「負の感情も凄く増えてるでしょうね...」
【これゲート開いたらヤバいことになるんじゃ...】
【溜まってる負の感情全部悪霊化するってこと?】
コメントにあった予想は当たっていた。
ゲートを開くと安定する間、全開状態になるのだ。
その間に入り込む魔力で溜まった負の感情が悪夢化し、現世の脅威になってしまう。
悪霊は人には見えないが悪霊から干渉することができる。
よく見る怪奇現象なんかも悪霊が原因だとか...
「それでもやっぱり帰ってきて欲しいですよね...」
「説得して帰ってきて欲しい...!」
「問題はゲートを開いた時に発生する悪霊ですね...」
ニコさんも同じことを話し始める。
一期生のみんな配信したい気持ちはあるが、現世に迷惑を掛けたくないとゲートを閉じた。
それでも今まで通りの生活はできず、配信のことが頭に浮かぶと話す。
僕達は説得を試みた...
説得の末、ゲートを再度開くことになった。
心配されていた悪霊は全員で退治することにした。
ゲートの前には一期生と僕達が並ぶ。
『まさか三期生のみんなが来ちゃうとはね〜』
『もう、会うことはないと思ってた』
『私も全く同意見です』
『ここまで来て説得されるなんて思わなかったぞ』
レミさんソラさん、ニコさんとルドラさんが呟いた。
ゲートが開き、全員が潜っていく。
次に見えたのは次々と悪霊が発生していく現世だった。
「予想はしてましたけど、凄い光景ですね...」
「どんどん増えてる...」
一期生のみんなが想像以上の状態に顔を顰める。
僕達も初めて見る光景に息を呑んだ。
『想像以上...』
『三期生のみんなも手伝ってくれ』
『当たり前...任せて』
『当たり前ですわ!』
『まっかせて!』
僕以外の三期生が答える。
全員が悪霊に埋め尽くされそうな夜の街に消えていく。
そんな中、ニコさんが振り返り僕に話してきた。
『狐狐さん、お願いします...』
『うん、任せて』
僕はそう答えた。
「狐狐先輩かっこいい...!」
「これMG杯と同じ感じじゃない...?」
「確かにそうですね!」
【あっつ】
【やっぱりニコ狐狐コンビ好きだわ】
【覚醒するんじゃない!?】
ゲームの中の僕は髪の毛が少し輝き、目に稲妻のようなものが走る。
MG杯で有名になった覚醒した僕だ。
画面の左上には残り悪霊数が表示され、討伐することが分かる。
「覚醒した狐狐先輩の妖術で主人公がパワーアップしてる」
「これ無双ゲー始まっちゃう?」
「始まりそうですね...」
操作可能になり、動き始めると今まで以上の速度と攻撃力になっていた。
現世に発生した大量の悪霊、その討伐に向かう。
最後の悪霊を倒した瞬間、スローモーションになり画面がフェードアウトする。
どうやらゲームクリアのようだ。
後日談がムービーとして流れる。
帰ってきた一期生と二期生、詳しい事情は話せないがファンの人達は納得してくれた。
みんなは配信のある日常に戻り、今日も楽しく配信をしている。
すると僕の部屋が映し出され、机の上にある写真がズームされた。
そこにはMonster Live全員が笑って写っている写真が飾られていた。
「終わった〜!」
「終わりましたね...」
【お疲れ様〜!】
【クオリティすごかった...】
【めっちゃモデル綺麗なのに重くないのすげぇ】
【戦闘普通に面白そうw】
「最後の写真見たら泣きそうになっちゃった...」
「分かります...めっちゃいい写真...」
「みんな無事に帰って来れて良かった...」
「そうですね...」
無事に完走し、エンディングトークをする。
スタッフロールが最後まで流れ、ムービーの最後に映った写真が全画面で表示された。
最初のタイトル画面で破られていた写真は最高の写真へと変わっていた。
「はぁ...みんなの笑顔が最高...」
「最高ですね...」
【噛み締めてるw】
【Monster Liveファンのこの2人おもろいな】
【確かに最高だけどw】
【言い方よw】
達成感と長時間配信の疲れでホワホワとした頭でどうにか配信を締める一言を言う。
何を言おうか考えるが思い付かず、感じたことそのまま言うことにした。
「Monster Liveはいいぞ...!」
「いいぞ!」
「それではおつここです〜」
「おつここ〜!」
【草】
【Monster Live最高!】
【おつここ〜w】
【締めそれでいいんかw】
【おつここw】
長時間の配信が終わり、稲香ちゃんと軽く話した後倒れるようにベッドに入り込むのだった。
ゲームの中とは言えMonster Liveが無くなることを考えてしまった。
静かな部屋でそんなことを考えているとみんなの笑顔が浮かんでくる。
「ふふ...」
嬉しくなってつい笑ってしまった。
やっぱりMonster Liveに入って良かった、その日の夢はみんなで温泉旅行に行く夢だった。
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