147話 Monster Liveを愛する者達②
チャプター2が始まった。
異世界へ向かうことは不可能と思われたが、ドクロちゃんの出身地である冥界を経由すればみんなのいる異世界に行けるかもしれないらしい。
ドクロちゃんが言うには、現世を監視している冥界の監視者6人から冥界に入る許可証を貰わなければならないそうだ。
「6人もいるんだね...」
「監視って何してるんだろ...」
稲香ちゃんが疑問を口にした途端、ゲーム内の奈女々ちゃんがそのことを聞いた。
どうやら監視者は自ら命を絶った人間の魂を回収しているとのこと。
人間の魂の揺らぎを見てその人の元へワープするらしい。
「6人じゃ足りなくないかな...」
「不謹慎だけど、結構な人数亡くなってるってニュース...見たことあります...」
少し暗い話になったので急いで雰囲気を変える。
「と、とりあえずその6人を探さないといけないんだね...!」
「そうですね...!」
だが奈女々ちゃんの妖術でも監視者は見つけられない。
どうしようかと悩んでいると、6人の監視者が目の前に現れた。
「わ...びっくりした、急に出てきた...」
チャプター2はすぐにクリアできる内容かなと思った矢先、イベントが始まった。
監視者は穢れてしまった魂ばかりを回収する毎日、娯楽に飢えていると言うのだ。
そう、鬼ごっこの始まりである。
「スーツ姿でめちゃくちゃ速いですねこの人たち...」
「人じゃないよね...これ...」
「そうだ、冥界の人だった...」
まずは1人目、住宅街を走って逃げている。
これは簡単だ、家の屋根を通り最短ルートで走れば捕まえられる。
予想通り、ものの数秒でタッチすることに成功した。
「最初はこんなものだね」
「や、やっぱり狐狐先輩...上手すぎないですか...?」
「そ、そうかな...」
反応が気になり、チラリとコメント欄に目を向ける。
【ガチじゃん...】
【遊びたかった監視者君秒で捕まっちゃった...】
【これは監視者涙目】
【RTA勢だったかぁ...】
どうやら僕は練習しすぎてしまったらしい...
残る監視者は1人。
このイベントは操作に慣れていなかった人に練習してもらうようなイベントのようだ。
基本的な動きから、妖術を組み合わせる応用まで必要になってくる。
しかも監視者が逃げながらアドバイスしてくれるのだ。
「遂に最後の1人ですね」
「どんな逃げ方か楽しみ...!」
【獲物を狩る目をしている...】
【これがRTA勢...】
【公開された瞬間からやってるワイ、もう追いつかれて焦ってる】
【狐狐ちゃんが相手だったのが悪かったなw】
最後の1人は今までの5人を合わせたような総復習だった。
やっぱりと思いつつ、マウスを握り直す。
「スタート...!」
速さは主人公とほぼ同じ、僅かにこっちが速いか...
つまり少しでもミスをすれば距離は縮まない。
これ相当難しい...
とは思いつつも少しずつ距離が縮まる、練習の成果が存分に発揮されていた。
「...っよし!」
「うまぁ......」
【速すぎです】
【これ理論値レベルじゃない?】
【ミスわかんなかったレベルで草】
【ノーミス...】
曲がるタイミングなどを勘で先読みしたらびっくりするほどハマってしまった。
自分でも未来が見えたような気がしていた...
「これで冥界に行けますね」
「冥界って絶対怖いところじゃん...」
「狐狐先輩の機動力なら敵なしですよ!」
「そ、そうだといいなぁ...」
こうしてチャプター2は冥界に入っていくところで終わった。
チャプター3は冥界を駆け回るのだろう。
チャプター3が始まった瞬間、鬼の妖に囲まれてしまった。
バトルが始まるが、ドクロちゃんが説得する。
このまま見逃してもらえると思った瞬間、3体の鬼は主人公に金棒を振り下ろした。
「コマンド!?」
画面に映ったキーを咄嗟に押し込んだ。
間一髪、主人公は横に飛び回避できた。
どうやら説得は無意味なようだ...
ゲーム内でドクロちゃんが説明する。
監視者と同じく冥界には娯楽を求めるものがいる。
そのストレスはやがて戦うことで発散するようになったらしい。
そんな戦闘狂のような妖の前に現れた人間、絡まない訳がなかった。
倒すしかないか、僕は戦闘の立ち回りを脳内で振り返っているとドクロちゃんがまた話しかけてくる。
冥界で妖を人間が倒せば現世との戦争の火種になりかねないとのこと。
戦闘は回避しなければならないのだ...
「ど、どうやって回避すれば良いんだろう...」
「き、気絶させるとか...ですかね...」
「かな...」
と思った瞬間、始まったのは鬼ごっこだった。
今度は逃げる側である。
しかも見失うまで追われるうえに別の妖に見つかれば鬼役がどんどん増えるシステム...
この為のチャプター2なのだと理解した。
「じゃあ、僕の腕の見せ所かな...!」
「狐狐先輩なら余裕です...!」
【なんだろう...この安心感...】
【こーれ圧勝です】
【勝ったな、風呂食ってくる】
【↑風呂入るか飯食うかどっちかにしろw】
薄暗い冥界、紫色の空に浮かぶ赤い月。
昔の時代を感じさせるような木の一軒家が立ち並び、目を赤く光らせた妖達がのそりのそりと行き来している。
そんな不気味な世界で始まった命を賭けた鬼ごっこ...
僕は本当にこのゲームに入り込んだように、大きく深呼吸した。
「鬼さんこちらってね!」
「こ、狐狐先輩が頼し過ぎる...」
僕は慣れた手つきで妖術を使用し、目の前にあった家の屋根に登った。
目指すは冥界の王がいる城へ向かうこと。
ドクロちゃんのおかげでマップも把握できている。
さあ、Monster Liveを助けるために走ろうか...
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