123話 最終決戦に向かって
下トーナメントを勝ち進んだ僕達は、同じく勝ち進んだチームと戦いマップ数2:1で勝利することができた。
ラウンド数も全ての試合で延長戦にもつれ込む大接戦、疲労はピークに達している。
その試合に勝利したあと、上トーナメントで敗北したチームと決勝行きを掛けて戦った。
何をしても通用しないような感覚に陥り、負けてしまうかと思った場面があった。
そんな中、つばロバの打開力や小豆さんとニコさんのアシスト、僕のサポートも刺さりこの試合もマップ数2:1で勝利することができた。
1マップ目は11:4と大差で負けてからのスタートだった。
そこからの逆転勝利は僕達の自信へと繋がる。
初戦敗退した僕達は下トーナメントを這い上がり、決勝戦へと駒を進めることができたのだ。
ネット上の反応も凄まじい事になり、チームここからが話題ランキング上位に食い込むほどだった。
Monster Liveのみんなからも応援メッセージが届いており、僕は若干の目眩を感じる頭でそのメッセージを読んだ。
(こうやって応援されると嬉しいな...)
興奮と疲労で体がおかしくなったように感じる。
だが、明日は決勝戦。
ここまで進んできたのだ、負けたくはない。
ネットを見ているとチームここからの這い上がっていくストーリーに応援ムービーまで投稿され始めた。
各メンバーの活躍したシーンを切り取って並べ、かっこいい曲と共に流していく。
そして動画の最後には『ここからWIN』の文字が映し出される。
(まさか自分がこの立場になるなんて...)
既に部屋の明かりを消し、ベッドに横になる。
スマホの明かりですら僕の眠気を覚ますことはできないみたいだ。
徐々に落ちてくる瞼と意識を無理やり起こして応援してくれる人達に感謝を伝えたかった。
@九尾狐狐 Monster Live三期生
応援ありがとうございます!
皆さんの応援を力に優勝まで突き進みたいです!
決勝戦も応援お願いします!
#狐狐ライブ
#ここからWIN
投稿を終え、アラームを設定せずに眠る。
今日ばかりはしっかり体を休めようと思ったからだ。
最近遅寝早起きで自主練や推しのアーカイブ消化で疲労が溜まっていたと思う。
瞼を閉じると一瞬のうちに眠りに付くのだった。
ぼやける視界に部屋中にあるMonster Liveグッズが映る。
ふらふらと頭が揺れている感覚に襲われながら、ゆっくりと体を起こす。
目を擦ると視界が鮮明になってくる。
ふとベッド近くの机を見ると、ゼリー飲料と栄養ドリンクが置かれていた。
『歩へ
最近大会でかなり忙しそうだけど、体調管理はしっかりね!
大会が終わったらゆっくり休む事!
決勝戦ガンバレ!』
置き手紙が一緒に添えられていた。
僕は心の中でお母さんにありがとうと言いながらゼリー飲料を口にする。
空いた方の手でスマホの電源を入れると、13:00と表示された。
(うぁ...相当疲れてたのかな...)
通りでいつにも増して頭がふらつくと思った。
流石にこの体調のまま決勝へ挑むわけにもいかない。
お母さんからの差し入れをお腹に流し込み、ベッドからゆっくりと立ち上がった。
お母さんはお昼休憩を終えてお仕事に戻っているようだ。
僕は顔を洗って菓子パンを棚からもらった。
ゼリー飲料を飲んだせいかより空腹を感じてしまい何か口にしたい。
菓子パンを手に自分の部屋に戻り、Monster Liveのみんなのアーカイブを眺めながらゆっくりする。
今日は決勝戦だが、今ゲームの練習をすると本番まで集中力が保たないと思ったのだ。
(あ、ドクロちゃん新作のホラゲやってる)
僕が練習期間の間に投稿していたようで、知らぬ間に見逃していたと思う。
ホラゲは苦手だが、ドクロちゃんの動画ならそこまで怖く感じない。
菓子パンと水筒に残った水を手元に用意して動画の再生ボタンを押した。
時間は集合時間2時間前になる。
途中、眠気が襲ってきたので少し昼寝した。
今は頭もスッキリして視界もはっきりとしている。
決勝戦に向けての準備は完璧だ。
「歩、決勝戦頑張ってね!」
「うん、ありがとう、頑張る」
お風呂を済ませて晩御飯を食べてる時にお母さんにエールをもらった。
もちろんお母さんだけでなく大勢のファンのみんなに応援してもらってる。
その応援に応えるためにも優勝したい。
チーム流れ星のファンも負けじと応援メッセージを投稿する。
上トーナメント無敗のチーム流れ星、そのチームに初戦敗れ下トーナメントに落ちたものの這い上がってきたチームここから。
まるで漫画やアニメのような展開に視聴者は大盛り上がりだった。
その盛り上がりに若干押されながら、エイムを温める。
マネキン撃ちでヘッドラインの確認、カスタムゲームで各マップの定点を確認。
少し体調に不安を感じた朝だったが、どうやら問題なさそうだ。
試合開始40分前、チームの通話部屋にみんなが集まる。
僕も通話部屋に入り、試合の時間まで待つ。
「さ〜狐狐ちゃんも来たね〜」
「揃ったな」
「まさかここまで来れるなんてね〜」
「初戦敗退から決戦進出ですか...」
「い、今考えたらすごいね...」
「そうよそうよ?
もう既に凄いんだから、優勝なんてしちゃったらもうどうなっちゃうのか」
「これ勝ちてぇな〜」
「とにかく、最大限に楽しんで優勝しちゃお!」
みんなからは全く緊張が感じられなかった。
と言ってもふざけているわけではなく、程よいリラックスを感じるのだ。
僕もなぜか緊張感は全くなく、初戦で負けた相手にどこまで通用するのか試したい気持ちが強かった。
各自配信の準備が整い、配信を開始する。
そして訪れた試合開始の時間。
再度椿さんが大きな声でチームを鼓舞した。
「決勝戦まで這い上がったんならもう優勝するしかないよな!
って事で勝つぞ!
チームここからWIN!」
その声に応えるように僕達も大きな声を出した。
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