122話 勝ち進んだ4チーム
「ぃよっしゃぁああ!!」
椿さんの雄叫びが響き渡る。
それもそのはずである、ラウンド数は12:13。
後1ラウンド取られたら負ける場面で4キルし同点に追いついたのだ。
「ナイスッ!!!」
「椿お前強すぎんだろ!」
「クアドラ...ナイスです」
「椿さんナイス!」
ラウンド数が10:10で並ぶと、2ラウンド差が着くまで延長戦が続く。
そして今13:13、先にラウンドを取得したチームが精神的にもリードできる。
「よし、ここ取ろう!」
緊張感で手が震える中、椿さんの声が聞こえる。
冷静さを取り戻すために深呼吸を何度も繰り返す。
「楽しんで行こ!」
「そうよそうよ、楽しんでたら自然と勝っちゃうんやから!」
「う、うん...!」
「ココちゃんだいじょぶよ?」
みんなの声で緊張感が薄れ、手の震えも静まっていった。
ラウンド開始までのカウントダウンが終わり、ラウンドが始まる。
今まではゆっくりとエリアコントロールをしていたがここでラッシュをする。
「行け行け〜!」
「突っ込め〜!」
楽しそうに叫ぶつばロバの2人。
だが圧倒的な強さはそのまま、通路で構えていた敵を2人撃ち倒しサイトへ入り込んだ。
「2人ともヤバすぎw」
「ガンガンいくぞ〜!」
サイトを制圧し爆弾を設置した。
だがそれだけでは留まらず、つばロバの2人がディフェンダーサイドまで前線を進める。
相手はまさかこんな所まで来ているとは思わず、椿さんがもう1人キルしていった。
「裏1人です」
「ディフェンダーサイドにもう1人いた!」
「じゃあもう残りの場所確定じゃん、裏を3人で倒して!」
椿さんの指示に従って、小豆さんとニコさんと一緒に3人で裏の警戒をする。
その間にローバーさんが1人キルして人数状況5:1、圧倒的なラウンドとなった。
この状況は覆ることなく、爆弾が爆発して僕達のチームがマッチポイントとなる。
「デカいよデカいよ!」
「ここで決め切ろう」
「はい、守り切りましょう」
「ラッシュのカウンターで索敵矢残しておくね」
「了解!」
勝てば勝ち進める、運命のラウンドが始まった。
相手が同じようにラッシュしてくるかと思ったが、冷静にエリアコントロールをしてくるようだ。
椿さんがAサイト通路で敵を発見、更にBでも小豆さんが接敵した。
「これ広がってるな...」
「時間使わせよう」
爆弾を設置できずに時間切れになればアタッカーサイドの負けとなる。
勝負しに来ないのなら自分達も顔を出さず、時間を使わせる。
焦れば立ち回りにも現れるのでその隙を突くことができる。
「A来た!」
椿さんが4人の敵を目の前に、すぐさま引いて生存する。
時間もあまりなくこのままA設置になるだろう。
僕はダメージ矢を定点で打ち、入り口に落下する。
「入り口にダメージ矢落ちるからね」
「マジか、当たってくれ...!」
ローバーさんが祈った瞬間、2人がダメージ矢によって落ちた。
サイトのクリアリングと急いでいたこともあり、警戒できていなかったのだろう。
「来た来たぁ!w」
「やった...!」
「こーれ狐狐ちゃんのおかげで勝ちます」
僕はそのまま高台へ登りスモークでサイトが見えない中、索敵矢を放つ。
練習でマップは大体把握しているので、綺麗に壁に刺さる。
爆弾を設置している姿が映し出されて敵の居場所が2人分かった。
「はいモク抜き!」
椿さんが索敵で映し出された敵をキルする。
だが相手も上手く対処し、スモークを抜き返して椿さんと一緒にサイトへ入ろうとした小豆さんが倒されてしまう。
人数状況は3:2、爆弾も設置できていないので僅かに僕達が有利か。
「モク消えてから動き合わせてもいいかもな」
「裏は罠で見ることができているので、3人でリテイクしましょう」
「りょ、了解...」
ローバーさん、ニコさんの動きに合わせて動く。
爆弾の設置完了の音が聞こえた、サイトに1人いることは確定し、おそらくもう1人もカバーでサイトにいるだろう。
「モク消えたらサイトにエントリーするからカバーお願い」
「はい、分かりました」
「高台からも見るね」
「任せた」
モクが消えローバーさんがサイトへエントリーしていく。
予想通り、2人でディフェンダーサイドの入り口を見ていた敵のヘイトを集めながら障害物で射線を切るローバーさん。
エイムがズレている敵をニコさんが倒す。
だが、もう1人にニコさんが落とされてしまう。
そこでローバーさんが再度顔を出すと同時に僕も高台から射線を通した。
ローバーさんが瀕死までダメージを与えるが打ち倒されてしまう。
頑張って練習したリコイル制御が上手くいき、僕が残った1人を撃ち倒すことに成功し、マップで残ったのは僕だけとなった。
「やった...!」
「ナイスゥ!!!」
「狐狐ちゃ〜ん!!」
「狐狐さんナイスです」
「っっっぱ狐狐ちゃんなんよぉ!!」
「ツヨスギだろぉ!」
爆弾を解除するキーを長押しする。
勝ちが確定しているというのに手の震えが止まらなかった。
この震えは緊張によるものでは無く、歓喜による震えだ。
溢れそうになる涙で歪む視界に『WIN』の3文字が見えた。
MG杯最後まで残った4チームが本配信に映し出される。
その中には上トーナメントで無敗のチーム流れ星の姿があった。
「後2回勝って流れ星倒すぞ!!」
「流れ星も上トーナメントであと1回戦うけどね、多分勝つだろうな」
「私達はあと下トーナメントのもう1チームに勝って、上トーナメントの負けた方と戦って、上トーナメントの勝った方に勝てば優勝か!」
「そうですね、3回勝てば優勝になりますね」
「俺達ならいけるでしょ!」
椿さんの言葉に自然と頷いてしまうほど、僕達はお互いを信頼できるチームになっていた。
初戦の敗北、そこから絶対に負けたくないという気持ちが溢れ今に至る。
最終日まで残ってチーム流れ星を倒し、優勝したい。
「明日も勝つぞ!!」
「おー!」
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