113話 MG杯初戦①
数回の練習配信を終えたチームここからはまた一段階成長したチームになっていた。
フリーマッチでオンラインに潜った時は考えた作戦も刺さり勝率の方が高く、僕のエイム力や立ち回りもいい指導者に囲まれていたことで急成長。
僕1人が取り残されている時にラウンドを取れることもあった。
そうして迎えたMG杯本番初日。
対戦相手はチーム流れ星、リーダーのスターさんが率いる優勝候補のチームと言われている。
そしてこの流れ星には吉良キラリちゃんが入っているのだ。
ネットではかつてチームでニコさんに挑んだ僕とキラリちゃんが敵同士になる展開にファン達が大盛り上がりしていた。
中には僕とキラリちゃんがメインで描かれたファンアートまで投稿された。
『皆さん準備はよろしいでしょうか?』
既にカスタムマッチ部屋に全員集まり、試合が始まるのを待っていた。
運営からのゲーム内チャットが届き、お互いのチームが『ready』とチャットを打つ。
少し間が空き、まずは相手チームピックのマップである王都で戦うことになる。
王都は爆弾設置箇所が2箇所、中央が広く中央の制圧が勝敗に大きく関わってくる。
ABサイトの入り口が狭く、スキルの使い方も考えなければいけないため防衛有利と言われるマップだ。
「っしゃ、王都は結構練習してたからいつものキャラでいくぞ!」
「おうよ」
「スモークは任せなさいな!」
「が、頑張る...!」
「あまり固くならないで、楽しくやりましょう」
キャラクターを選択していく。
椿さんは変わらずドラゴン、ローバーさんが天使、小豆さんが精霊、ニコさんが呪術師、僕がエルフだ。
「相手は前回やった時と変わらない構成か...」
「スターのドラゴンがマジでおかしいんだよなぁ...」
チーム流れ星はスターさんがドラゴン、キラリちゃんが錬金術師、その他の3人はスターさんに招待された配信者だ。
1人目はヒトデさん。
大声を上げたり強めの言葉を使う配信者だが、困った時には手を貸してくれる良い人だ。
あまりにも良い人すぎてビジネスギレなんて言われているらしい。
今回の使用キャラはドワーフだ。
2人目はりゅうせいさん。
かなりイケメンの顔出し配信者、凄まじい陽キャで視聴者との距離が近い。
好きあらばオフ会を開き、ファン達と飲み合うらしい。
たまに来るアンチには自分のダメなところを積極的に聞きまくるなどの噂もある。
今回は天使を使用するようだ。
3人目はVtuberの星空ムクモ。
星の形をした飾りがたくさん付いた大きなツインテールをした可愛いVtuberさんだ。
歌がものすごく上手く、毎回歌配信では大勢の人が涙を流すらしい...
それでいてゲームも上手いうえに性格も良い。
人気な個人Vtuberの1人だ。
使用キャラはエルフのようだ。
錬金術師とドワーフについて再確認しておこう。
錬金術師はプレイヤースキルで機動力が化けるアタッカーキャラだ。
爆発ポーションで自分を飛ばし、高い場所に乗ったり相手を浮かせたりできる。
更にはグレネードのような役割がある拡散ポーション、爆破機能のついた索敵ロボットを使用でき幅広い立ち回りができるキャラだ。
必殺技は特大の爆破ポーションを投げ、即死のダメージを与える。
ドワーフはサポートができるスモーク役だ。
ドラゴンの使用する短いスモークを応用した魔剣を使用し、長時間のスモークを炊くことができる。
移動速度と武器性能上昇を上昇させるバフフィールドを発生させる魔剣、投げて着弾したところにダメージフィールドを発生させる魔剣など後方支援のスキルが多い。
必殺技は最高位の雷魔法を込めた魔剣を使用して広い範囲に大ダメージを与える雷を落とす。
「最初取るぞ〜!」
椿さんの声でふと我に帰る。
お得意のスキルとミニHPポーション購入。
慣れた足取りでAサイトへ向かった。
「相手の立ち回り的に最初はスモーク炊いてラッシュしてくると思うから...よし、Bサイト3人にしようか」
「分かりました、中央に罠置いてBに寄ります」
「一応Aサイトにもスモーク炊く準備しておくね?」
「了解、壁買ったからヤバそうなら張るぞ」
「よっしゃ、Aは狐狐ちゃんとロバでBは俺らで守るぞ!」
「始まるよ〜!」
小豆さんが少し楽しそうに言う。
その声とほぼ同時にカウントが0になり、最初のラウンドが始まった。
途端、Aサイトの通路から多くの足音が聞こえた。
「これAだ!」
「さ、索敵矢は温存しておく!」
「マジか、勘が外れた!
ニコさんは中央を、小豆さんは引き気味でAに残って、俺はB援護行く」
「了解!」
「了解です」
「壁割られた!」
入り口を天使の壁を作るスキルで塞いでいたが、その壁が割られる。
ローバーさんは壁を張ると同時に後ろまで引いているので倒されることはなかった。
壁を割るだけ割ってローテーションする立ち回りもあるので、エントリーしてくるかは分からない。
入り口にエイムを合わせていると、足元にドワーフのスモークを発生させる魔剣が刺さった。
「Aスモーク!」
「ラッシュ来る!」
椿さんの言った通り、スモークを合図にドラゴンが翼を使ってサイトに入ってきた音と同時に足音がサイト中に響き渡った。
スモークを超えて無理やりサイトに入った椿さんが撃ち抜かれてしまった。
そのまま爆弾を設置しようとした敵の頭がローバーさんの魔弾によって撃ち抜かれた。
まるで見えているように...
「ナイス索敵矢!」
「タイミング最高すぎ!」
「後2人サイトに入ってるの見えたぞ!」
僕が相手のエントリーに合わせて索敵矢を撃ったのだ。
椿さんが相手の視線を自分に集めてくれたから、索敵矢を破壊するのに時間が掛かった。
椿さん的には1人は持っていきたかっただろうが、ダメージを与えた上に設置していた唯一のヒール持ちである天使を落とせたのだ。
ギリギリ優勢といった所だろうか。
「爆弾設置!」
射線が通らない場所から爆弾設置音が聞こえるが、そこは勉強済みだ。
ダメージ矢には反射石を付与することができ、壁を反射させて矢を飛ばすことができる。
それを利用して、隠れ設置の場所にダメージ矢が2本刺さる。
再度設置しようとしていた錬金術師がダメージ矢によって落とされる。
「狐狐ちゃん!?」
「ヤバすぎ!」
「それは聞いてないw」
爆弾がAサイトの奥へ落ちる。
相手は僕達のが見ているサイトから爆弾を回収した後で設置しなければならない。
時間はまだあるが、八方塞がりとなった敵はスキルで対応するも人数有利は覆らなかった。
「ナイス〜!」
「ナイスです」
「ナイスすぎる!」
「ナイス!」
「ナイスだよ〜!」
「狐狐ちゃん決まったなぁ!」
「勉強しててよかった...」
「ほら言ったじゃん狐狐ちゃんが最強なんだって!」
最初のラウンド、ダメージ矢も上手く決まり最高の滑り出しだ。
学んだことが発揮され、緊張感も緩んだように感じた。
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