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前世がコミュ障男な僕がVtuberになれますか?  作者: カムカム
9章 コミュ障、顔が広くなる!?
103/158

102話 ルドラさんの過去

今回は少し重い話になります...

通知が鳴る。

通話部屋にはルドラさんがいた。

僕は今まで通り通話を繋ぐ。


「もしもし...?」


「狐狐、チャンネル登録者十万人おめでとう。

後輩がこんなに立派になって私は嬉しく思う」


「ありがとう...!

僕もこのMonster Liveに入れて良かった!」


「ああ、本当に狐狐が入ってくれてよかった」


ルドラさんの声はどこか悲しい雰囲気をしていた。

コメント欄でもそのことに気付いた人が心配するコメントを書いている。


「ルドラさん、どうかした...?」


「いや、少し昔を思い出してな。

狐狐、お前にもっと自信を持ってもらうために、私の話をしてもいいか...?」


「うん、大丈夫...」


配信時間はみんながテンポ良く回してくれたおかげで余裕がある。

それにルドラさんの過去について知りたい自分がいた。

ルドラさんは静かに話し始めた。




〜ルドラ視点〜


「お姉ちゃんは何色のドラゴンが好き?」


可愛い弟が私に話しかけてくる。

弟の手元には紙と色鉛筆、今からお絵描きでもするのだろう。


「そうだね〜...お姉ちゃんは赤が好きかな!」


「赤か〜、かっこいいもんね!

でも僕は紫が好きなんだ!

紫色のドラゴンが大好き!」


「あはは、夢で見た世界で一番強いドラゴン?」


「うん!

優しくてかっこよくて、人間と仲が良い最高のドラゴン!」


弟は紙に空高く飛ぶ紫色のドラゴンを描いていく。

決して上手いとは言えない絵でも弟の中ではそこが生きる世界だった。

病室のベッドの上から動けない弟の...


ある日弟がこんなことを言った。


「このカッコよくて優しいドラゴンがお姉ちゃんだったら、背中に乗せてもらえるかな〜?」


「うん、お姉ちゃんがかっこいいドラゴンになったら世界中のどこまでも連れて行ってあげるよ!」


「やった!じゃあ早く治さないとだね!」


弟はマッスルポーズを私に見せてくれた。

その満面の笑みが辛かった、弟は余命宣告を受けていた。


弟に何かしてあげられないかと探している時、Vtuberという文化に出会った。

顔を出さず、イラストを動かして配信をする。

しかもMonster Liveというグループが新規ライバーを募集しているらしい。


ゲームには触れてこなかった人生だが、どうだろう。

多くの不安を残しつつも私は一期生としてデビューすることになった。


モデルはもちろん紫色のドラゴン。

設定はマネージャーや同僚が考えてくれた。

だが、名前は自分で決めなければならない。

ネーミングセンスのない私は適当に『ドラゴン』からラゴン。

『パープルドラゴン』からルドラを取り、『ラゴン・ルドラ』という名前にした。


初配信では緊張をしないためにもキャラになりきって配信した。

それが好評だった、続けていくうちにそのキャラが私の配信スタイルになった。

たまに慣れないゲームで焦った時素に戻ってしまうが...


チャンネル登録者も伸び始め、このことを弟に伝えようと病院へ向かった。


「あ、お姉ちゃん!」


「ああ、お姉ちゃんだぞ!」


「お姉ちゃんなんか喋り方おかしい?」


「ふふふ、実はな...じゃん!どうだ!」


「女の人にドラゴンの羽が生えてるよ?」


「これは紫色のドラゴンが人間になった姿なんだぞ!」


「そうなの!?」


「そしてこれはお姉ちゃんだ!」


「えぇ!!」


それから、弟に私の配信を見てもらい元気になってもらった。

二人で私の配信を見ている時間がずっと続けば良いと思っていた。




月日は経ち、弟の体調は少しずつ少しずつ悪化してしまう。

既に医者から告げられた余命は過ぎており、何が彼をここまで生かしているのか分からないそうだ。


「お...姉ちゃん...?」


「ああ、ここにいるよ」


「ごめんね...今日は眠い...」


「ゆっくり眠ると良い、お姉ちゃんはここにいるからな」


「うん...ありがとう...おやすみ...」


「......おやすみ」


弟はそのまま幸せそうに瞳を閉じた。

そして、目を覚ますことはなかった。


医師曰く全く苦しまずに亡くなったらしい。

だが本当にそうだろうか、死人には何を聞いても分からない。


弟がいなくなった今、私は配信をする目的を失ってしまったのだ。

しばらくの休暇をもらい、それでも心が回復しなかった。


辞めようとした時、マネージャーから連絡が入った。

辞めるのは三期生のデビューを見届けてからでもいいんじゃないかと。

どうせ最後だ、そう思ってデビュー配信を見始めた。


赤桶奈女々、鬼野鳴子、ガシャ=ド=クロ。

妖怪のコンセプトにあった良い個性をしている。

最後は狐のモデルか、この配信を見たら私はみんなに後を任せて引退しようと思う。




四人目の九尾狐狐は本当にオーディションを受かったのだろうか...?

視線は泳ぎ、落ち着きがなく話し慣れていないのか呼吸のタイミングがバラバラで息を切らしている。

まあ、他の三人が大丈夫そうなら任せられるだろう。

配信を切ろうとした時だった。


『ぼ、僕は!えっと...Monster Liveが大好きです!

あ...え、み、みんな好きなんですけど、と、特にラゴンルドラさんが大好きなんです!


ぼ、僕ってその...コミュ障で...友達とか、そのいなくて...

でも毎日Monster Liveの配信を見たいんだって、生きていました...!

ま、まさかぼ、僕が...も、Monster Liveに入れるとは...思ってなかったんですけど...


と、とにかく!

Monster Liveの皆さん!体調に気を付けて毎日配信待ってます!

あ、こ、コメントがす、凄いツッコミ...

は、初めてですこんなの...えへへ...』


途切れ途切れの話なのに、何故か私の心を動かした。

狐狐から感じられた異常なほどの愛。

その後も事あるごとにMonster Liveの話ばかりする。


私の頭に掛かった霧が晴れた気がした。

何の為に配信をしていたのか。

それは弟を元気付ける為、それと同時にまた別の人も元気にしていたのだと。

その時、誰かに背中を押された気がした。


私はマネージャーに連絡を入れる。

もう少しMonster Liveの一員でいたい、そう思った。




〜〜〜〜〜〜〜


「重い話をしてすまないな、だが私は狐狐に救われて今ここにいるんだ。

いつか私のファンにも話したいことだったがこの場を借りてしまった事、本当に申し訳ない」


「大丈夫....!問題ないよ!

ココ友も騎士団の兵士のみんなも問題ないよね」


【むしろ教えてくれてありがとうやで】

【俺らのコメントで無理させてたかもしれない...?】

【そんな過去があったんか】


「みんな大丈夫って言ってるし、僕も大丈夫!

話してくれてありがとう、ルドラさん。

それにルドラさんは僕の救世主でもあるから、お互い様だね!」


「...ああ、そうだな。

改めて、すまなかったな重い話をしてしまって。

私はこれで失礼するよ。

......ありがとう、狐狐」


「うん、こちらこそありがとう!」


ルドラさんとの話が終わり、一気に静かになった配信。

正直記念配信とは思えない雰囲気だったが、嫌な雰囲気ではなかった。

僕もしんみりとしてしまった中、通知が届き自然と通話を繋いでしまった。


「狐狐ちゃん十万人おめでとう〜!!」


クラッカーの音と共に聞こえたのはローバーさんの声。

今の雰囲気を一気に変えるような声に思わず笑ってしまうのだった。

読んでいただきありがとうございます!

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[良い点] まさか最推しを引退から救っていたとはまさに奇跡の狐だな
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