0話 プロローグ
他の方の作品を見て書きたくなりました!
楽しんでもらえたら嬉しいです!
「これが...僕...?」
ふと鏡に映る自分を見て違和感を感じた。
自分の姿を見て、僕は前世の記憶がフラッシュバックのように脳内に流れる。
頭に浮かんできた記憶が正しければ、前世はコミュ障で人が苦手だった男。
しかし今、鏡に映るのはくりくりとした可愛い目、小動物を感じさせる小さな口、絵に描いたような美少女がそこにいた。
「もう小学生なんだね」
僕のランドセル姿を撮影する女性が微笑んで僕を見る。
この人はお母さんだ、お父さんもいるが仕事であちこちに飛び回っておりほとんど家にいない。
容姿なのだが、お母さんはモデルのような顔立ちをしており、お父さんも負けず劣らずのイケメンである。
生まれ変わった僕は遺伝子をしっかり受け継ぐことが出来たみたいだ。
前世の記憶が混ざり、困惑しているとお母さんが頭を撫でてくれる。
心地よさに目を細め、お母さんの方を見た。
「緊張してるの?大丈夫よ」
優しく語りかける声、落ち着く。
僕は赤いランドセルを背負い、明日から小学校に通うことになる。
前世での記憶を活かして優等生を目指そう。
友達いっぱい作ろう!
お母さんとお父さんの自慢の娘になるんだ...!
そう誓って早九年が過ぎた。
今日は中学の卒業式、泣き声と桜の花びらで包まれた学校にはどこか悲しい雰囲気が漂う。
好きな人に告白する人、友との別れを惜しむ人、これから始まる高校生活を楽しみにする人。
皆それぞれ思い出のある人達と輪を作り最後の時間を楽しんでいる。
僕は、その輪を眺めながら中庭のベンチに一人座っていた。
「卒業おめでとう」
ふと三年間担任をしていた先生が僕の隣に座る。
僕は卒業証書の入った筒をギュッと握った。
まるで、別れの寂しさから涙を我慢するように...
だが、僕の場合は違った。
「あっ...え、えと...その...」
「無理に話さなくても大丈夫よ」
「う...はい...」
そう、僕は前世のコミュ障が悪化していた。
まともに話せる人は家族のみ、一体どこで道を間違えてしまったのだろうか...
「あっという間の三年間だったね、高校でも頑張ってね!」
「ぁ...はぃ、あ、ありがとう...ございます...」
「うん、元気でね!」
生徒に寄り添うことで有名なこの先生は一人一人に挨拶に回っていた。
僕はポツンと座っているベンチから賑やかな体育館前を眺める。
僕もコミュ障が治ればな...
そろそろ帰ろう、僕は車で待っている両親の元に向かったのだった。




