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ある日の夢日記  作者: 涼樹錦
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10月31日 ハロウィン

 10月31日

 奇妙な体験をした。


薄っすら目を開けると知らない女が視界に入ってきた。


 「あら、起きたのね。おはよう」


 その声にも聞き覚えはなくただ本当に知らない人が私の隣に座っていたのだ。


 「ここはどこですか」

 「うんうん、大丈夫そうだね。調子はどう」


 こんな異様な環境下で絶好調になれるわけもないだろう。今自分が置かれている状況を整理しようと周りを見渡した。今自分はベッドにいること、広い部屋にベッドとテレビとソファーがあることからどこかのラブホテルであるといううことは容易に理解できた。

とりあえず身体を起こそうと試みた。起き上がれない。両手をベッドの両角に括り付けられていた。途端に今自分が危険な状態にあると理解した。私は恐怖を悟られまいと強がって大声を張り上げた。


「一体ここはどこなんだ! 誰だお前は!」

「もうお兄さんそんなに声を荒げなくてもいいじゃない。別に危害を加えてるわけじゃないんだしさ」

「じゃあこれはなんだよ」


 そう言って私は両手につけられた手錠を女に見せる。


「いやぁ、それは私もわかんないよ」

「どういうこと意味だよ」

「ほらそこ」


 女はそう言って私の右側を指さした。先ほどまでは誰も座っていなかったソファーに一人の女性が足を組んでタバコを吸いながらこちらをジッと見つめるように座っていた。

 その女性に私は見覚えがあった。見覚えというには言葉が弱い。間違いなくその女性は私の母だ。私を生み育ててくれた母だ。


「ママがあなたに手錠かけなさいっていうからかけただけ。私は知らない」

「なんでお前が母さんをママ呼ばわりするんだ」


 自分に妹がいた覚えなど到底ない。


「母さん。なぁ、俺の母さんだよな。助けてくれよ」


 母は二本目のタバコに火を付けながら立ち上がった。羽織っていたバスローブを脱ぎながらシャワールームの扉に向かう。その背中には笠をかぶり美しい淡い青の着物を身にまとった白い女性が描かれていた。


「私はあんたの母親じゃないよ」


 そして私の意識は落ちた。


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