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ある日の夢日記  作者: 涼樹錦
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10月18日 一人温泉旅行

 今日は一人で温泉旅行に来ました。日々の疲れを癒そうと思い旅館を一人で予約しました。旅館に荷物を置いてぶらりと街を散策。ふらふら歩いていると賑わっている商店街が見えてきて心がわくわくしてきた僕は思わず飛び込みました。手前からソフトクリーム屋、饅頭屋、煎餅屋とお土産や観光客向けのお店が展開される中、一軒だけ異常に賑やかなお店が開いてました。外観はまるで江戸時代のような年季の入った木造の建物に中は綺麗に現代風に内装されたお店でした。外から見ても地元の人が昼間から呑んでいるよう楽しそうな雰囲気のお店に私はついつい惹かれてしまいます。

 少し中に足を踏み入れると淡い桃色の甚平を着た若い店員がすぐ私に気付いてくれました。

 外からでは見えなかったけど手前にテーブル席、奥が畳のお座敷でした。

 

 「おひとりですか」

 

 その一言に笑顔で頷くと店員は私にカウンター席を勧めてきましたが、私は奥のお座敷を希望しました。靴を脱ぎ座布団に正座になると先程の店員がお茶とおしぼりを持ってきてくれました。卓上に置いてあったメニューをパラパラとめくると美味しそうな海の幸の写真が目にいっぱい広がります。夕食は旅館で食べるからと軽いお刺身などのおつまみを眺めていたところでした。

 ごとん。自分の席の向かい側に日本酒とグラスを両手に持った酒臭い髭を生やしたおじさんが座ってきました。


 「あの、どうかされましたか」

 

 「悪いな、ちぃと相席するぜ」

 

 席は他にも空いていますが、私は渋々彼の相席を受け入れました。

 

 「お前さんどこから来たんだい」

 

 「東京からです」

 

 「ほー。わざわざそんなところからか。車か」

 

 「いえ、電車に乗って旅行に来たんです」

 

 「そうかそうか電車か!」

 

 彼はそう聞くと大きな笑い声を上げて店員にグラスをひとつ頼みました。グラスが届くとそれに手にあった日本酒を注ぎ私の前に出してきました。

 

 「これはな、ここの地域の地酒なんだよ、お前さん電車なんだろう。ほら飲んでみな」

 

 私はお酒が少し苦手でしたので軽く舐める程度に留めておきました。

 

 「どうだ。美味いか? 美味いだろ」

 

 「そうですね。飲みやすいと思います」

 

 正直あまり美味しいものではなかった。

 

 「ガッハッハッ。そうだろう。酒だけじゃ味気ねぇな。なんかつまみだ」

 

 そう言って彼は私のメニュー表を奪い取りブツブツと呟く。

 

 「うぅん。ここのお好み焼き定食が美味いんだよな。よし。おーい! お好み焼き定食とマグロ盛り合わせ」

 

 何がよしですか。どこもよしじゃないです。お好み焼き定食ってなんですか。私東京の人なのでお好み焼きとご飯食べませんし、お好み焼きって鉄板目の前にして焼くからいいんじゃないんですか。そもそも何勝手に頼んでるんですか。

 色々と込み上げてくるものはありましたがどうも悪気がなさそうなので怒る気にもなれませんし、気の弱い私は何ひとつ言えぬまま料理が届きました。

 私の目の前にはなぜか大きな器にほんの少し申し訳なさそうに乗った馬肉ユッケ、明らかにおかずに見合わない量の大盛りのご飯に漬け物と味噌汁。なんか色々と違います。それに対して彼は同じ器にたくさんのマグロの赤身やトロの刺身が盛られています。醤油皿にわさびをたくさん入れてマグロを醤油にたぷたぷにつけて豪快にかき込んでいきます。あっという間に完食すると突然立ち上がり、醤油皿に残ったわさび醤油を私のご飯にかけ回して店を出ていきました。

夢で会った人は絶対に一度は会ったことがあると言われていますよね。誰なんでしょう。

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