【続】逆ハー部屋担当侍女の日常
続編です。
逆ハーレムはガッツリ系
メンバーの魔術師は虚弱ですぐ侍女を頼る
これだけ把握していれば前作を読まなくても大丈夫です
2022.6/26
※不揃いの部分を揃えました。内容は変えていません
とある日の逆ハーレム部屋
今朝は【気遣いありがとう】の使い方を採点してみた。
《その1 王太子》
朝の4時に帰るからと呼び出しがあり、そこには満身創痍で汚れきったローズちゃんと、精根尽き果て眠る魔術師様の姿。
他のメンバーは腕を広げ着替えの催促。
「湯浴みは…」「気遣いありがとう、自室に戻ったら湯を浴びるから大丈夫だ」
《その2 団長ジュニア》
「ローズ様は…」「ローズは疲れている。そのまま寝かせてやれ。気遣いありがとう」
《その3 大司教ジュニア》
「ローズ様のお清めは…」「あいつ(魔術師)がやるから大丈夫だ。気遣いありがとう」
《その4 魔術師》
魔術師様は起きる気配もないので、私は汚れたシーツごとローズちゃんを引きずって浴室まで運び、念入りに清める。女の子は事後は清潔に。これ基本。
全て終えた頃、いつのまにか起きていた魔術師様が壁を向いたまま呟く。
「あいつらにわたしがローズを持ち上げられないと言わなかったのか。気遣い感謝する」
――4番、気遣いありがとうの使い所は違うがおまけで正解、5点。1〜3番は問題外、0点
《番外》
宰相ジュニアは隣国に武者修行中のため留守。廊下ですれ違った宰相から「やり甲斐のない仕事を押しつけてすまない」と謝られた。
「お気遣いありがとうございます」と私は答えた。
100点。
お昼は食堂で好物が出た。今日は水瓶座はラッキーデーかも
昼食後、王太子とローズちゃんは2時間の休憩タイム。王太子が仕事をしない事について、もう誰も口を出さない。
――見切りつけるの早いなぁ
私は王太子の傍若無人さはキングっぽくて嫌いじゃない。仕事以外のスペックは激高で、飾りなら王としてアリだと思う。でも今は既に第2王子に傾いてるようだ。
ああ、賭けたい。大穴で王太子に賭けたい。
今はハーレム部屋の隣にある、待機部屋で繕い物をしている。団長ジュニアあたりが破くのが好きらしい。どうせ破くなら、と新しく買わずに縫って着させている。
そろそろクライマックスか、と私は片付けをはじめる。隣だし普通に声が聞こえる。
その時、待機部屋をノックする音。珍しい。
「俺だけど」
ドアの向こうから知った声がする。魔術師様だ。
――絶対ろくな話じゃなさそう。
居留守を使おうとしたらドアを開けられた。
「なんだ、いるじゃないか」
「ええ。おりました」
シレッと答える。
「隣はもうすぐ終わるだろ。終わったらちょっといいか?」
鼻歌まじりの王太子を見送り、魔術師様とハーレム部屋にはいる。ローズちゃんにとっては、休憩程度は準備運動にもならないのか、けろっとした顔で私達を迎え入れた。
――さすがハーレムを築くだけある。
「2人してどうしたの?」
「……魔術師様が、ローズ様に贈り物があるそうですよ」
私の役目はこれ。魔術師様の付き添い。
最近気後れして、ローズちゃんとサシで会う勇気がないから付いてきてほしいと頼まれた。
――ちょっとマザコン気味かな。減点材料。嫁姑問題は私も苦労したわ……
「何かしら?」
ローズちゃんはキラキラした瞳で魔術師様を見つめる。
「こ…これ」
彼が出したのは湿布のようなもの。
「俺としたあとは、いつも立てなくて身体がきつそうだろ? これは腰に貼ると痛みが和らぐらしい。だから……」
――紛らわしい言い方をしているが本人も一番言いたくないセリフだろう。ここは女性軍はスルー1択のはず。
団長ジュニアあたりが言えばローズちゃんも貴方のせいよ、と返すに違いない。だが今は魔術師が相手だ。貴方のせいではないと言ってしまうのか!?
「あ、ありがとう。今は大丈夫だけど、今度試してみるわ」
ニッコリ笑顔のローズちゃん。あのKYの申し子ローズちゃんが空気を読んだ……
「じゃあ、また夜に」
2人は軽くハグをして、魔術師様は私と部屋を後にした。
待機部屋に戻ろうとすると、魔術師様に止められ、
「一枚余ったから君にも。今朝も腰が痛そうだったから」とシップを渡された。
「お気遣いありがとうございます」
私、午後も100点。
シップをもらえてやはり今日の水瓶座はラッキーデーだった、と長い夜に向けて珍しくやる気の出た、本日もいつも通りのくだらない1日。
※12/22 誤字報告をいただきましたので修正いたしました。団長ジュニアのジュニアが抜けていました。報告をしていただきありがとうございました!