表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔狼転生  作者: 兎月 晃
29/30

~最果ての旅~

魔界にて階位十三位の爵位を持つハナズオウと再開をした一行は、彼の待つ居城へと案内される。

「流石で御座いました。産まれたてのリッチとは言え、魔界でも上位の存在を魔物の得意分野である魔法で、しかも人間が打ち取られたのですから」

吸血鬼ヴァンパイアの青年が何時の間にか戻ってきており、まるで劇場の役者の様に大げさに両手を広げて称賛しながら近づいてくる。

その両脇には、紅と蒼の宝玉が付いた杖を携える古きリッチの二人の存在もあった。

「私たちにとってのケジメを付けただけですので……。かえってお時間を取らせてしまい、申し訳ありません」

逆にミュレイは吸血鬼ヴァンパイアの青年に向けて、淡々と言った感じで話していく。

それからは、お互いに何かを話すと言う雰囲気にもならず、黙々と第十三位の悪魔ハナズオウの元へと向かって歩き続けた。


どれだけの距離を、どれだけの時間歩いただろうか。

永遠と夜の暗闇が支配する魔界において、時間間隔は己の疲労と腹のすき具合だけが頼りだった。

疲労が溜まれば休憩を取り、腹が減れば食事を取った。

そんな休息を五回も取った頃、見えてきたのはアニメやゲームに出てくるような中世の荘厳なお城だった。

ミュレイの実家でもあるライオネル王国の王城も十分に荘厳なのだが、二割程こちらの方が大きく、装飾も豪華に見える。

「ワシには芸術なんぞ判りませんが、魔界の城ってぇのも、すごいもんですな」

この魔界での旅の間に、すっかりと素で話すようになった巨漢の冒険者ヴィルゲルムは、愛用の戦斧を肩に担ぎながら、驚きを隠そうともしないで豪快に話す。

「そうであろう。そうであろう。我が主殿は、素晴らしい城に住まわれているのだよ」

蒼の宝玉のリッチが誇らしげにしている。

「外見だけでなく、内部の装飾も見て驚くがよい」

紅の宝玉のリッチも自慢げに対応してくれた。

「正直に言えば、我々魔物に芸術性を求められても気にするモノの方が少ないと思うのですが、それでもとハナズオウ様は、他に類を見ない城を建てられたのです」

吸血鬼と言えば、元貴族という先入観イメージが有ったのだけど、美術品などに触れていなければ、それほど興味も湧かないのかもしれない。

「それにしても、なぜこうも不死の魔物が多いのですか」

素朴な疑問だった。ハナズオウの修める魔界の地は、不死系の魔物で溢れているのだから。

地獄の黒犬(ヘルハウンド)が唯一の生きた配下と言っても良いのかも知れませんが、私の様な産まれながらの吸血鬼(ヴァンパイア)は、不死では在りますが“一度も死を経験したことがありません”ので、他の不死系の魔物と同列に考えられても困りますね」

青年は顎に手を置き、思案顔で私の問いに答えてくれた。

「お答えいただけたことに感謝します。不死系の魔物とは言っても、ひとくくりには出来ないという事ですね」

そんなことを話していると、城門の前まで辿り着いていた。

開け放たれた城門の内側には、まるで不死系魔物の見本市となっていた。

「よくよく考えたら、一つの国の国民が、全てが不死の魔物な訳ですからね」

死神との異名を持っていたエンペスティアが言うのも不思議な感じだけれど、正にそういう事だろう。

「流石に何万と言う数の魔物に出迎えられるのは、生きた心地がしないですね」

青い顔をしたサラさんが、俺に寄ってきて囁くように感想を述べている。

魔狼の姿となった俺は、幾分の安心感を与えられているのか、ミュレイも俺の側にくっつくようにして歩いている。

エンペスティアとヴィルゲルムは、堂々とした歩みで、俺たちの前を進んでいる。

その更に前の先頭を吸血鬼の青年が歩き、最後尾をリッチの二人が歩いてくれている。

そんな生きた心地もしないような城正面の道を、たっぷり500m程も歩いただろうか。

城の正面玄関へと続く階段を上っていくと、今度は城の正面の巨大な扉が左右に開かれた。

そこから出迎えてくれたのは、この城の主である階位13位のハナズオウ本人だった。

「ようこそ我が城へ! 君たちを歓迎しよう!」


ハナズオウに案内されながら、城の中を歩いているのだが、要所余所にあるシャンデリアや壁掛けのトーチに明かりが灯っていて、中は驚くほど明るかった。

そして、案内役の吸血鬼の青年やリッチの二人が言っていたように、内装はとても豪華に出来ていた。ところどころに置かれた絵画や陶器、それから鎧などは、人間の世界から持ってきた物だろうか。

でも、何と言っても気になるのが、ハナズオウの肩に乗っかっている蛇だろう。最初はマフラーか何かかと思うぐらいに大きくて長いと言うのが第一印象だ。人間を丸のみに出来るほどではないにしろ、2m近くある蛇を肩に乗せて歩いている姿は異様に映るだろう。

「なんだ。ラーズに興味があるのか」

ハナズオウは、片に乗せている蛇を指さし、ラーズと言う名で紹介してくれた。

「えぇ。魔界こちらへ来てから、生物らしい生物にお逢いしていなかったので」

「そうか。ラーズは、我が相棒だ。手術の時には消毒から麻酔まで、助手として非常に優秀なのだぞ」

「本当に優秀な相棒なのですね」

俺の返答にハナズオウは満足したのか、心なしか微笑んでいるように見える。

それからは、何気ない話や魔界に来てからの話をして歩みを進めていた。


ハナズオウに案内されたのは、大きなテーブルを備えた食堂だった。

人数分の椅子が用意されており、席に着くのにも控えていた執事やメイドの人たちが椅子を引いてくれる等、高級な料亭へと来たような感じを受けた。

まぁ……全く精気を感じられないから、彼らもアンデッドであることに変わりは無いのだろうけど。

「どうだ。暫く魔界で暮らさないか」

全員が席に着くと、おもむろにハナズオウから話を振られた。

「非常に魅力的なお誘いですが、それの意味する処は何でしょうか」

「そう警戒しなくてもよい。単純に君たちに興味を持った。そう言ったら信じるか」

俺たちは、暫くの沈黙と目線での会話を行った。

「私を始め、他の者たちも国の重役となっております。何も言わずに国元を離れれば、不審に思って騎士団が動き出すやも知れません」

ミュレイが代表して返答してくれる。

「それならば安心するが良い。仮に24年の歳月を魔界で過ごしたとして、人間の世界ではせいぜい24日しか経過しないからな」

どうやら時間の経過に相違があるようだ。

更にハナズオウは続ける。

「しかも我が任されている第13世界は、不老不死の世界だ。この世界にいる間は、肉体的な加齢に悩まされることも、死の恐怖に怯える事も無いのだぞ」

「つまり、人間界で10年の歳月に相当する修行を、リスク無く10日間で行えると言う訳ですか」

俺は思わずと言った風に聞き返してしまった。

「興味を持ってくれたようだな。嬉しいぞ! 正にその通りだ」

エンペスティアとヴィルゲルムは、己の武を鍛えるのに最適な環境に興味津々と言った風に見えるが、あくまでも俺とミュレイの護衛と言う立場を守り、無言を貫いている。

サラさんも多少なりとも興味はあるようだが、人間世界と暫く離れることを天秤にかけた時、そこまでする価値を見出していない気がする。

「私は、国元へ変える事を望みますが、他の者たちの意見は尊重したいと思います」

ミュレイも俺たち各々の雰囲気を感じたのだろう。その目が、エンペスティアとヴィルゲルムを頼みますと言っているようだ。

「では、俺の方は折角のお誘いなので、自分の種族の原点でもある魔界に残って、暫く自分を伸ばす修行をしたいと思います」

「「俺たちもお供します」」

やはりと言うか何と言うか、エンペスティアとヴィルゲルムは乗っかってきた。


そこから話の進展は早かった。

俺はハナズオウの居城に一室を借り、そこへ転移魔法陣ワープ・ポータルの魔法陣を設置させてもらった。これで、何時でも此処へ戻ってくることが出来るようになった。

その後、一旦、全員でハナズオウが用意してくれた転移門ゲートでダンジョンまで戻り、それからミュレイとサラさんを俺の転移魔法陣ワープ・ポータルで城まで運んだ。

最後に俺とエンペスティアとヴィルゲルムは、今度はハナズオウの居城へと繋がる転移門ゲート使って魔界へと戻ってきたのだ。

ミュレイやサラさんと一時とは言え別れ、右も左も判らない魔界で何年も生活することに不安が無いわけではないけれど、俺の転移魔法陣ワープ・ポータルを使えば容易に行き来することが出来るので、それ程には悲観していなかった。


そして……。

ミュレイとサラさんと言う、俺のブレーキ役がいなくなったことで、色々とライオネル城に居た時には出来なかった実験を開始した。

「さてと、まずは暗黒物質創造クリエイト・ダークマター!」

ふさふさの銀毛が逆立つほどに魔力を漲らせて、俺は魔力を限界まで込めていく。

見渡す限りの闇が支配する空間で、それらを限界まで集めて圧縮する。

以前、魔法を行使した時とは段違いの闇が集まり超圧縮が行われていく。

ドンッ!! 音にすれば、そんな感じだろうか。

集まった闇が反転して、賢者の石となり輝き出す。

その大きさは、バスケットボール程にもなった。

前回作成した時には、人の拳程度だった(それでも十分に驚かれたが)ことを考えると、驚異的な大きさの物が出来たと言えるだろう。

それを見た俺は、ちょっとした悪戯を思いついた。

仮初の身体(テンポロリィボデイ)

本来は、憑依(ポセッション)短き再生ショート・リザレクションで魂を宿す為の仮初の身体を創るなどの使い方をする、かなり高度な地重魔法なのだけれど。

今回は、片膝を地面に付き、両手を掲げるように上にあげた形で作成した。

その両手に乗せるように創造したばかりの巨大な賢者の石を乗せる。

光の強さとしては、夜の道路工事の現場にある照明器具を思い浮かべて貰えれば良いだろう。

俺は出来上がりに満足すると、創り出した像の周囲を確認する。

闇空間作成(ダークネス)

賢者の石と仮初の身体(テンポロリィボデイ)で創り出した像を覆い隠すように闇空間作成(ダークネス)を発動させる。

すると、賢者の石から発せられていた光は完全に消え、周囲は再び闇に包まれた。

俺は予想通りの結果に満足すると、同じ工程を四度繰り返した。

そして、俺の魔界での果てなき遊びが暴走する。


ミュレイと言う歯止めの居なくなったエヴェイユ……。

今後の展開をお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ