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魔狼転生  作者: 兎月 晃
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第六話「迷宮探索の旅」 第一部<賞金稼ぎとしての依頼>

闘技祭を無事に終え、次なる段階へと駒を進められる状態へとなった。

闘技祭は、サラさんの優勝で幕を閉じた。そして、俺の下には巨漢のヴィルゲルムが実験に協力してくれることとなった。更に……。

「何かをされていたとは言え、俺が犯した罪は、決して許されるべき事ではない。だが、俺は戦う事でしか自分を役立てる術をしらないから、何か俺に出来ることは無いか」

エンペスティアの申し出を受け入れ、彼も実験に協力してもらうことになったのだが……。

「エンペスティアを自由にすることは、少し難しいかもしれないね」

皇帝であるレオンの言葉が、扉から現れるなり行動の制限をかける。

「そうですね。宰相の魔法の影響下にあったとは言え、多くの方を公衆の面前で殺めていますので、危険視する方が多そうです」

付き従う形でやってきたミュレイもレオンの言葉に追随する。

「何とかならないのか」

俺は聞いてみたが、色よい返事を期待した訳ではない。それは、二人の言葉が正しいと判っているからだ。

「そうだな……。司法取引と言う形で、私やミュレイが個人的に雇ったと言えば、対外的には納得させられるだろう。それでも外出などには制限がかかるだろうが」

以外に代案があっさりと出てきたことに拍子抜けしてしまったが、エンペスティアが俺の実験に協力してもらう事が出来そうで一安心した。

「それで構わないので、私に贖罪の機会を与えては貰えないだろうか」

と、エンペスティアの方も納得してくれたようだ。

「では、私が賞金稼ぎ(バウンティーハンター)と言う立場から、その腕を見込んで護衛として雇った、と言うことにしましょう。そうだ、ヴィルゲルムさんも御一緒に雇われたことにすれば、下手なうわさも立たないでしょうから、如何ですか?」

ミュレイが口裏を合わせてくれるようだ。

それを聞いて、大きな身体を屈め(ひざまず)いたヴィルゲルム。

「皇族の方の護衛を、名目上とは言え拝命できることは、我が身のほまれつつしんでお受けいたします」

面を上げた彼の顔は、とても晴れやかで嬉しそうだ。

こうして、俺の二人の協力者は、正式に同僚として、ミュレイに雇われることとなった。

「ミュレイ。以前にも話したように俺も賞金稼ぎ(バウンティーハンター)として登録して、斥候せっこうと言う形で同伴したいのですが、構わないでしょうか」

俺は、出会ったばかりの頃にした約束を果たそうと思った。

「もちろん、構いませんよ。それどころか、頼もしい斥候が居てくれるなら、大助かりです」

ミュレイの方でも笑顔で請け負ってくれた。

俺たちは、新人賞金稼ぎ(バウンティーハンター)として、城の中で登録手続きを済ませた。と言っても、書類に目を通してサインをしただけだが。

その後、俺たちは謁見の間から場所を移して、城の地下にある魔法の実験施設に来ていた。

「失礼な質問になるかもしれないが……」

そう断りを入れてから、エンペスティアが俺に真剣な目を向けて来る。

「エヴェイユ殿は、どういった方なのですか? 皇帝陛下との中も宜しい様でしたし、宰相の呪い(カース)を解除するなど、普通の魔法使いには、無理な案件だと思うのですが」

正直に言って、戸惑った。本当の事を話すべきか、表面上の事だけを伝えるべきか。

「俺は、別の世界から来た人間の転生者で、この世界では魔狼の肉体に魂を宿しています」

そう言ってから、俺は外見変化(ポリモルフ)を解除する。俺の外見は、二十歳前の人間の肉体から、サイよりも巨大な魔狼の姿へと変貌する。

『そして、六人の精霊王と契約し、この世界の魔法の理を知る存在となった』

正確に言うなら、更に上位存在である“神様の使い”と契約しており、死後は自分自身が七人目の精霊王として、この世界の魔法の根源となることは伏せて置いた。

エンペスティアとヴィルゲルムは、俺を見て固まっている。

一緒に来ていたミュレイとアラインヘルシャフトは、普通にしているのだけれど、その隣ではサラさんも固まっている。そう言えば、ミュレイとレオン、それからアラインヘルシャフト以外には、俺が魔狼だと言う事を伝えてなかった。

三人が現実へと帰ってくるまで、数十分の時間が必要だった。その間に俺は魔狼の姿から魔法で人間の姿へと戻っていた。

「ちなみに紹介がまだだったな、我こそは真竜にして独裁の王アラインヘルシャフトなり」

魔法の実験場なので、かなり広い空間では有るのだけれど、アラインヘルシャフトが真竜の姿になれば、それは窮屈きゅうくつな空間になる。

そして……。再度、三人が現実逃避の為に意識を手放した。

それから、数十分。三人の意識が戻ってくるまでの間に、新たに仲間となった二人に贈り物をする為の準備を進めていた。

用意したのは、魔鉄と魔法を付与した宝石を少々。

意識が無いのを良い事に身体の大きさを測定して、大まかに鎧の各部位を錬成空間で作成する。

二人の為の武器も作成しておくことを忘れない。エンペスティアには鎌を、ヴィルゲルムには戦斧をそれぞれ用意した。そして、サラさんの為に短剣を一振り。その三本の武器には、全て柄の部分に小さな穴が有り、持ってきた宝石が入るようにしてある。

作業をしている間に目覚めた三人は、俺が錬金術を施しているのを見て、大いに驚いていた。サラさんは、俺が錬金術の師エメリアさんよりも精錬の練度と速度が早い事に驚いていたようだ。更に自分が教えた付与魔術の方も、俺がよどみなく流れるように付与

をする様子に溜息ためいきを吐いていた。

「一つ一つ丁寧に時間をかけて行っていた作業が、今では職人の様な手さばきになっていますね。日々の訓練の賜物たまものですね」

ミュレイの一言にサラさんが同意する。

こうして、俺の手によって、二組の鎧と三本の武器が創られた。

「身に付けて貰って、感想を聞かせてくれたら嬉しいのだけれど」

俺が言うと。二人は恐る恐ると言った風に無言で震える手を鎧へと伸ばした。

「本当に、これを装備しても良いのか」

エンペスティアは、信じられないと言った感じで俺の方を見て来る。

「君たちに協力してもらう実験と言うのは、その鎧から更なる情報を得て、最終的には真金(オリハルコン)真銀(ミスリル)を使った武具一式を作成する事なのです。だから、遠慮なく使って下さい」

俺は笑顔で実験の最終到達点を答える。

「それに、皇帝の実の妹である私の私兵として雇う訳ですから、街で買えるような武具では示しがつきませんからね」

ミュレイの言葉は、半分本音だが、残り半分は二人が気兼ねなく鎧を纏う為の方便だろう。

それに気が付いたのか、エンペスティアとヴィルゲルムは頷くと、各パーツを宝石でも扱うような慎重な手つきで身に付けていった。

全ての鎧を身に付けたところで、付与した魔法が一気に発動する。

「「なんだ、これは!」」

二人の驚愕の声が重なった。

「鎧を身に付けたはずなのに重さを感じないどころか、むしろ何も身体が軽くなった様な気さえするぞ!」

ヴィルゲイムの最初の感想は、これだった。

軽く実験施設を走っていたエンペスティアは、

呪い(カース)によって、無理やり力を発揮していた時とは違う。筋肉に無理を強いるのでは無く、保護しながらも限界を超えた力を発揮できるように創られているのか!」

一度、限界を超えた力を行使していた為か、付与されている魔法の一端を感じ取る事ができているようだ。

「サラさんの鎧と基本的には同じ構成で、同じ魔法を付与してあります。後は、実際に使ってみた感想を元に調整していきたいと思っています。最後に三人に武器を御渡ししますので、使いたい()()を教えてください。」

俺のセリフに三人が不思議そうな顔をしている。

「使いたい魔法と言われたが、俺たちは剣士ですから、魔法なんて使えるようになりませんよ」

「エンペスティアも言っていたが、魔力が低くて魔法が使えないから剣士としての道を選んだんだ。今から魔法が使えるようになると……」

言っている最中からヴィルゲイムは、気が付いたらしい。今まさに魔法の鎧を身に着けて、魔法を発動させていることに。

「そう言う事ですね。既に攻撃力倍加の付与がされていたと記憶していますが、何か他にも武器に付与を考えられたのですか?」

サラさんが両手に剣を持ちながら、言葉を繋いでくれる。

「この机に置いてある宝石には、攻撃系の魔法が既に付与されています。これを武器の穴にはめ込むことによって、攻撃魔法を武器にまとわせることが出来るようになります」

俺は、机の上に置いた宝石の数々を指さして、それに付与された魔法について説明していく。

「試作品を持ってきているので、数は少ないが、武器の特性を向上させるには十分な魔法を付与できたと思う。是非、使ってみて感想を聞かせてくれ」

三人は説明を真剣に聞くと、それぞれが惹きつけられた宝石を手に取る。

サラさんは、黄色い雷属性を封じ込めた宝石を短剣ショートソードに。

エンペスティアは、黒色の闇属性の魔法を封じ込めた宝石を漆黒の鎌に。

ヴィルゲイムは、紅色の火属性を封じ込めた宝石を戦斧ハルバードに。

手に取った宝石を各々の武器にはめ込んでいく。

手にした瞬間に何か感慨があったのだろう。三人は、自分の武器に見入っていた。

「一時は、未来を諦めた俺に……。感謝の言葉も無い」

エンペスティアの本音を聞いたような気がする。

暫くそうした後、三人は俺に深々とお辞儀をして、サラさんは俺の後ろに、エンペスティアとヴィルゲイムの二人は、ミュレイの後ろへと控えて、彫像のように動かなくなった。

どうやら言葉ではなく、行動で示してくれるようだ。

こうして、頼もしい配下が増えた。

「さて、新しい仲間も出来たことですし、お仕事の話をしても宜しいでしょうか」

ミュレイからの提案だ。

「多少聞くのが怖いですが、新人賞金稼ぎ(バウンティーハンター)としての初仕事は、どのような内容になるのでしょうね」

俺は軽口を叩いてみたが、新人に頼むような簡単な仕事じゃないと言うのだけは、何となく気が付いている。

「人気のない場所に暫く放置されていた迷宮ダンジョンが見つかりました。そこの掃討が今回の依頼になります」

俺以外の全員に一瞬緊張が走る。何やら危険な感じがする。

「暫く放置されていたと言うところも気になるのですが、そもそも迷宮ダンジョンとは、どういったモノなのですか」

素朴な疑問をしてみたが、どうやら他の人たちは理解しているような顔つきをしている。

「魔力溜まりと言った方が良いかもしれませんね」

「魔力溜まりですか」

「この世界では、全てのモノに魔力が宿っているという考え方が主流なのですが、それらは世界中を循環していて、稀に一か所に留まってしまうのです」

「そうして、そこに出来たのが迷宮ダンジョンと言う訳ですね」

ミュレイは理解が早いと言う顔をしているが、要は前世で言うところの炭素や酸素の循環の様なモノだろうと、捉えれば難しい話ではない。

「けれど、それだけなら脅威があるようには感じませんね」

「そうなのですが、迷宮ダンジョンには、他にも性質があり、森の動物を魔物に変化さて迷宮ダンジョンを守らせたり、様々な遺伝情報を取り込むと、独自の魔物を生成したりすることも出来るようになるのですよ」

「魔力そのものに知恵が付いた感じに聞こえますね」

俺は呆れたように答える。

「これが大地そのものの知恵なのか、魔力の方に知恵が付いたのか、はたまた違うところから知恵を授かっているのかは定かではないのですが、時間が経てば、それだけ厄介な存在となるのが迷宮ダンジョンなのです」

「そして、今回の迷宮ダンジョンは、発見が遅れたので、対処が難しくなっているから、王宮就きの賞金稼ぎバウンティー・ハンターに依頼が来た訳ですね」

「そう言う事です。期待していますね」

ミュレイの顔が偉い笑顔になっているのが気になる。

「では、賞金稼ぎバウンティー・ハンターミュレイ=フェリクスの名において、作戦実行を明日の朝一番とします。それまでに出発できるよう準備の方をして下さい」

こうして俺たちは解散した。そして、各々の準備を行うために自分の自室や控室へと移っていった。決行は明日。いよいよ実践だ。



やっと続きがかける状態になりました。

今回から中盤へと差し掛かります。

これからも魔狼転生を御願い致します。

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