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第    肆話  盤上

 盤上での勝負はまだ続いている。一時間くらいはたっただろうか。しかし、二人とも攻めていなかった。駒は二人とも一つも取られていない。だが、 目には見えない攻撃が二人の間で続いている。

 神流は内心で『すごい』とつぶやいた。木村が戦略に長けているとは知っていたがその木村と互角。いやそれを上回っている螢空がすごいと思ったのだ。

 動きが止まらない二人だったが木村が一瞬止まった。だが、 また淡々と打っていく。そして、最初に攻めたのは螢空だった。桂馬を単独で動かし攻めて来たのだ。それを阻むようにして動かすのは角行。木村は螢空のペースに飲まれてしまった。どんどん駒を取っていく。


 まずい

 心の中でそう思いながら玉を守ろうとする。

 フッ、 木村 剛啓。この程度の男か・・・・・・見当違いだったな・・・

 螢空は余裕の表情を浮かべていた。

 一方、木村はすごく苦しそうな顔をしている。

 決着はついた。二時間ぐらい経過している。木村はすごい粘ったようだ。


 「完敗だ・・・・・・分かった・・・君に指揮権を預けよう。だが・・・うちの隊長に言わない限り、 指揮権は譲れないのですよ。すいません。だけど、 隊長に話をするときに後押しはしましょう」

 「あの、 私達は木村殿に交渉をしに来たんです。その隊長は木下殿でしょう? あの人は幕府には不満をお持ちでないと聞きます」

 「その件ですが・・・そうとも限らなくなってきましてね・・・」

 「どういう事ですか? 」


 いぶかしげな表情で螢空は木村に問うた。


 「今日、 北海道で騎覆隊長が殺害された」

 「殺害! あの人が! 」


 声を上げたのは神流だった。騎覆のことを少し知っていたようだ。一方、螢空は首をかしげている。


 「ああ」


 そこへドタドタと廊下側から音がした。ドンッと障子を開けて入ってきたのは木下だった。


 「木村! この資料について調べて・・・・・・もら・・・い・・・」


 木下にはこの状況がよく分かっていないようだ。


 「何であんたがいるのよ! 」


 木下が驚きの表情を浮かべて声を上げると、 神流はため息をついて淡々と言う。


 「木村殿に用があったからだ」


 神流は敬語ではなかった。木下はあまり好きではないらしい。


 「まあいいわ。それよりこれを見て」


 木下は木村に資料を渡した。


 「これは・・・こんなもの報告には聞いてませんよ」

 「ええ。報告させてないわ・・・」


 木下は少しうつろな目をして言う。


 「何故・・・こんな大事なことを・・・・・・」


 衝撃が大きすぎて言葉が続かない木村。


 「これを知ったものが殺されるかもしれないからよ! 」

 「それの一例が騎覆隊長の死か・・・・・・」

 「そういうこと」


 二人の会話を聞きながら螢空と神流はボーっとその二人を見ていた。

 すると、 木村は螢空たちに気付いたらしくそっちを向いて


 「二人で話を進めてすまなかったね」


 木村が二人をなでて言い、 螢空木村に問う。


 「何なんですか・・・その資料? 」

 「口外しなかったら教えてあげても良いわよ」


 木下が螢空たちに眼差しを送って言った。


 「口外しません」


 螢空は答えるが神流は黙ったままであった。木下はそれを横目で見て少し戸惑いながら話す。


 「・・・・・・騎覆隊長は殺される前にある場所によった」

 「ある場所? 」


 その詳細が知りたく、 言葉を繰り返した。


 「そう、 この古代遺跡なのよ」


 二人に資料を差し出すと、 興味深そうに考えながら見る。


 「それを見た後に急いで私に何かを伝えようと私のところに向かっている最中に殺されたのよ。そして、 その犯人が幕府の可能性があると考え、 このことは伏せて報告させたの」


 その話を聞き終わると、 神流だけ資料を見るのをやめずに何か考えているようだった。

 そして、 それを終えたのか口を開き始めた。


 「この遺跡・・・・・・俺の家が管理していた遺跡だ!! 」

 「何!! 」


 木下と木村が二人同時に身を乗り出す。

 そして、 神流は自分で理解し、 声を上げた。


 「そうか。分かったぞ。この遺跡を手に入れるために俺達を追い出したんだ! 」


 その言葉の意味が分かったのか、 木下と木村も納得の表情を浮かべて言う。

 螢空だけが話についていけていない様子だった。


 「やっぱり、 幕府が関わっている可能性は高いわね」

 「うかつには動けないね・・・・・・反逆を早めないと犠牲者が増えるかもしれない・・・」

 「反逆!! 」


 木村は口を滑らせて反逆のことを言ってしまい、 木下が驚きの声を上げた。それを落ち着かせるように木村が続ける。


 「その話は僕がしておくから君達は夕食を食べてその後は休んでおきなさい。部屋は用意させるから」


 時間はもう九時を回っていた。将棋で時間を費やしたのだろう。

 螢空と神流は言われたとおり、 夕食を食べてから部屋に行き布団にはいって一人で将棋をしていた。一人でやると案外早く終わった。

 反逆なんてそう簡単にはいくはずがないと思っていたけれど、 簡単に話が進んだな・・・・・・幕府への信頼はそこまで深くないってことがよく分かった。だが、 これからは違う。本格的に戦争になっていくんだから。もっと強く。戦略をすごくしていかなきゃ。

 螢空は将棋が終わってそんなことを考えていた。

 おじいちゃんの敵を討つんだ。そのためにももっと強く。戦術も増やさなきゃ。

 神流は布団に入ってそんなことを考えていた。

 その時、 外で大きな音がした。

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