第 貮話 不老不死
螢空は木村がいるところへ向かっていた。すると、 その途中、 大勢の人が集まっている場所があった。なんだろうと螢空は思い、 人が集まっている方向へ行く。すると、 二人が戦っているのが見えた。一人は北海道の隊長、 木下 薪。もう一人は男性で螢空には見覚えがあった。
どこかで見たことあるような・・・ないような・・・
そう思いつつ戦いを見ていた。
しかし、 木下の武器は刀とは違った。鎖の付いた鎌なのだ。たぶん周りの人の中にはこの武器の意外性に集まった人もいるだろう。
どんな風に使うのか気になった螢空はしばらくその戦いを見ていた。木下は鎌の持ち手を持って、鎖を回し始める。鎖の先には重りがついていた。
ブンッブンッブンッ
どんどん音が強くなっていく。それから、 素早く男に向けて鎖を飛ばした。
その鎖が捕らえたものは男ではなく男の刀であった。
男の刀に鎖が巻きつき、刀を思うように動かせない。
決まったな
螢空はそう内心でつぶやく。
木下は相手が動けない今を狙って、 鎌を使って男に斬りかかった。
ザンッ!
男は素早くよけたが頬が斬られて血が出ている。そこで人ごみから不意に声が転がり込んだ。
「隊長! 隊長! 木下隊長! 」
木下の部下のようだ。
「ああ、 ごめん! 今ちょっとやり合ってたから・・・」
そういいながら戦っていた男の方向を向いた。
「あまり目立つ行動は取らないでくださいよ! こっちはその後の処理が大変なんですか ら! 」
「ごめん! で、 用件は何? 」
木下の声が真剣になった。部下は「はい。」と答えてから何か、 木下に伝えていた。
その内容は螢空には遠すぎて聞き取れなかった。
「えっ! 何ですって! ・・・・・・急ぎましょう」
木下は驚きの表情を浮かべてしばしの間、 愕然としたがすぐさま顔を引きしめた。
「待て! まだ俺との決着がついてない」
息をきらせながら、 木下に呼びかける。
「ついてるわよ。あなた・・・手を抜いてるでしょ? 次勝負するときにはてを抜かないでちょうだい。不快だわ」
木下は言葉通り不快そうな顔を浮かべて、 部下と一緒にどこかへ行った。
この場所にいた人々はどんどんこの場所から離れていった。けれど、 螢空はやはり見覚えがあると思い男の顔をじっと見つめて考えていた。しかし、 やっぱり思い出せない。見覚えがないのかなと思いそこから去ろうとしたとき
「おい、 お前・・・・・・上杉・・・螢空か? 」
恐る恐る後ろを向いた。
*
「何これ? だれが・・・こんな・・・しかも何で北海道で殺されるのよ」
てで口を押さえて苦しそうな表情を浮かべて言う。
木下の前には血だらけの死体があった。この死体の名は騎覆 魯甲斐。中部地区を管轄・指揮する隊長だ。
「騎覆隊長は北海道にある、 一つの遺跡を調べていたようです。その遺跡には文字が記されていて、 その内容は・・・・・・不老不死? 」
部下が疑問げに言った。
「不老不死って・・・馬鹿げてるわ。死なない人間なんて・・・」
その後に続く言葉が分からなくなり、 言葉をきる。
木下は騎覆と不老不死の関係に思い当たることはなかった。
「その遺跡を見られた後、 急いで木下隊長のところへ行こうとしたその途中に襲われたと思われます」
「私の元に! 」
驚きの表情を浮かべ、 声を上げる。
「はい。何かを伝えようとしたんだと思われます」
「何を・・・・・・資料全部貸して! 」
怒声を上げた木下に驚き、 部下は黙って資料を差し出した。
木下は必死に読むがどんなことを伝えようとしたのか分からない。
騎覆は頭が良かった。戦略に関しては右に出るものがいないと言われたほどだ。それに比べ、 木下は頭はあまり良くない。なので、 木下は遺跡の内容についてではなく、騎覆を殺した犯人について考え始めた。
犯人はたぶん遺跡の真実を知っていたもの。ずっと魯甲斐のことを見張っていたのか? いや、 遺跡のところで見張っていた可能性もある。知られてはいけない何かその何かが分からない限り犯人も見つからない。だけど、 一つだけ特定していることがある。犯人は北海道の中にいる。
「木下隊長。これは会議を開かねば━━━」
「それは駄目! 」
部下は少し驚いた表情を浮かべた。そこまで反対するとは思わなかったからだ。
木下は目を細くしてこう言った。
「幕府が犯人だったらどうするの! あなたも殺されるかもしれないわ」
その続きは内心でつぶやく。
いえ、 北海道で幕府に関わる人たち、 私に関わる人たちが全員殺される可能性だってありえるんだから・・・・・・一体、 幕府の裏で何が起こっているの?
「あなた、 魯甲斐が死んだ以外のことは私以外に誰にも話していないわよね? 」
「知っている者が何人かいます」
「その人たちに伝えて! 「遺跡のことは誰にも話すな」と」
「了解しました」
いぶかしげな表情を浮かべて木下は考え始める。
まさか、 幕府が敵に回るなんて・・・幕府が信用できなくなったわ。これからは一人で行動していかないと・・・・・・
そんなことを内心で呟きながら札幌にある本部に戻ろうとしていた。




