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第肆拾壹話  “アヴィリニングの鍵”

 「Onlooker(オンロクゥー)。傍観者であるはずの君が何故、 僕を阻む」


 あれからどれくらいの時が経ったのだろうか。

 俺の目の前には黒い布を纏った男が二人いた。しかし、 二人にも一つ違いがあった。一人は黒い物を頭に被っている。もう一人は頭に何も被らずに白髪が剥き出しとなっていた。


 「阻んでなんかいないよ。けど、 これ以上のことをされるといけないんでネ」

 「ガバメントの犬が」

 「フッ……何とでも呼ぶがいいさ。負け犬」


 二人は自分の毛を逆立て警戒しながらお互いを挑発する。二人はまるで獲物の取り合いをしている猫のようだ。



                   *



 時は戻り昼。

 ナレイルの家を出て路頭をさ迷う。

 自分だけが異界の着物を着ていて完全に浮いていた。

 さて、 これからどうしようと周りを見ながら目的のないまま歩く。いや、 目的はあるのか。黒い布を纏った奴らを倒す。それはナレイルのためにもなるのだから。

 その前にやることと言えば寝床を確保すると言うことか。

 宿場と言う奴は絶対に存在する。なぜなら異世界の人々が観光したりするのだからないのは異常だ。でも、 ここは今、 戦争中だ。ないこともありえるな…。

 考えながら歩いていると周りが見えなかったらしく壁にぶつかって頭を打った。

 痛ッ!!

 頭を抱え込む状態になる。周りの人々からは笑い者だ。

 俺にとっては笑い事じゃない。本当に痛い。幸い血は出ておらずその代わりに小さなたんこぶができてしまった。

 たんこぶができた部分を手で擦りながら歩いて行く。

 すると、 一つ思い当たることがあった。

 “俺って敵を倒したことがあまりないんじゃ…”

 そう言えば俺、 金持ってないや。ここに来る前、 森を通ったな……そこで生活してみよう。そして、 新しい型を考えよう。

 足を止めて、 歩いた道を引き返す。

 その時。ものすごい風が俺の足を止める。そして、 俺の横を瞬速の速さで黒い影が通り過ぎた。その影が横を通った時に確かにその言葉を聞いた。


 『宮殿の旗を見てな』


 俺はすぐさま宮殿の方向を見る。

 その刹那。

 風に靡いていた旗が黒い炎に包まれて闇に吸い込まれたように燃えた。

 その一部始終を見ていたであろう男が宮殿の方を指差して叫ぶ。


 「宮殿の旗が燃やされた!!! ガンドラ人が宣戦布告をして来たに違いない!! 」


 すると、 その叫びを聞いた者達が叫び始める。

 まるで水溜りに石を落としたようにそれはどんどん広がっていく。


 「もう我慢ならねぇ! 攻め込むぞ! 」

 「また戦うの? そんなのいやよ!! 」

 「うるせぇぞ! 黙ってろ!! あいつら…殺してやる!! 」


 怒りのままに叫ぶ者。戦いの痛みを知り嘆く者。

 何個もの意思、 声が合わさり耳障りな音を奏でる。

 その瞬間。足元が光り出し、 紋章が地面から浮かび上がった。



                   :



 えっ?

 いつの間にか他の場所にいた。

 なんだ……ここは…

 そこは全てが逆さま。俺は空の上に立っていて地面は俺の頭上にある。地面と言うよりもそこは黒い沼のような物だ。落ちたら最後、 出てこれない沼。


 「ようこそ。僕の(テリトリー)へ」


 声が上からした。すぐさま上を見る。すると、 沼の上で浮いている黒い布を纏い黒い物を被った奴がいた。

 沼の色と合致していて見分けがつきにくい。


 「君には選択権がある。僕の下にあるこの沼に吸い込まれて死ぬか、 僕に殺されて死ぬか。どちらがいい? あっそう言えば殺しちゃいけなかったね。拉致しなきゃ」


 拉致? 何故拉致する必要があるんだ? 拉致される覚えはないぞ! と言う訳で―――


 「――お前が死ね」

 「やり難いなぁ。でも僕がやりたいって言ったんだから―――」


 黒い布を纏った奴がくるんと回りながら空へと落ちてきた。落ちてきたと言ってもそんなに高いところからではない。俺の身長の三倍のところからだ。


 「――ちゃんとしなくちゃ――――だめだめ…抑えなくちゃ」


 独り言か? と思ったが何か衝動に駆られているようにも思えた。

 ポチャン

 水に石が落ちた音がしたような気がした。

 空耳…いや……

 どうやらこの音は黒い布を纏った奴に関係があるらしい。

 黒い被り物から少しだけ見えた眼。それは抑止力を全て捨て去ったような眼。

 その眼を見ただけで俺は殺されたと感じた。


 「あはは……もう駄目だ…」


 黒い布の下から短い刃物を取り出す。

 そして、 黒い影は残像を残すくらいの速さで俺の方へ向かってきた。

 来た!!

 時はすでに遅かった。

 ザンッ

 飛び散る真紅の血。

 いつの間にか俺の体は斬られていた。斬られた感覚すらまだ分からない。まだ痛みはない。

 瞬間、 痛みが体を襲う。

 斬られたのは腹か胸か分からない。

 地面と言う名の空に膝を付く。


 「Onlooker(オンロクゥー)。傍観者であるはずの君が何故、 僕を阻む」


 オン…ロクゥー? どこかで聞いた事のある単語だ。どこで聞いたんだっけ。

 痛みで下げていた顔を上げる。するとそこには―――


 「阻んでなんかいないよ。けど、 これ以上のことをされるといけないんでネェ」


 ―――あの黒い布を纏った奴らを倒したときに会った白髪の男がいた。

 髪に似合わない黒い布をこいつも纏っている。傍観者でいる気があるのか? と疑問に思う。

 あの時は偶然じゃないかなと思ったが今も同じようだった。それは左目しか見えない。右目は髪で隠れている。右目は存在するのだろうか。


 「ガバメントの犬が」

 「フッ……何とでも呼ぶがいいさ。負け犬」


 オンロクゥーと奴は自ら地雷を踏んだようだ。黒い布を纏った奴が怒りを込めた声で叫んだ。


 「うるさい!!! お前らのせいで…僕達は……」

 「黙れ。違法を犯したのには違いないのだから」

 「言い合っても意見は合致しないようなので殺してあげましょう」


 怒りを抑えている声であった。

 感情を剥き出しにしている。

 この黒い布を纏った奴らにもいろいろと理由があるようだが故意に戦争を起こそうとするなんてやってはいけない。どんな理由があるのだとしても。


 「エータ。2。オ・ミークロン」


 白髪の男が言葉を唱えた瞬間、 黒い布を纏った奴の足元から水が湧き上がる。その湧き上がった水は地面に落ちることなく黒い布を纏った奴の周りを回転しながら囲んでいく。

 卵の殻のようになった水。

 すると、 白髪の男はまた言葉を唱えた。


 「ディガンマ。イオータ。ニュー。デルタ」


 瞬間、 強くて冷たい突風が吹く。

 鳥肌が立ち、 体を縮めた。

 奴は…

 そう思い咄嗟に水に囲まれた黒い布の奴の方を見た。

 すると、 みるみるうちに固まって凍りになっていく。

 こいつも魔術とかいう奴が使えるようだ。


 「まだ終わってませんヨ」


 白髪の奴の言う通りまだ終わってはいなかった。

 パキパキと氷が割れていく。いや、 なんだか内に吸い込まれていっているような。

 パリンッ

 粉々に砕けて回りに飛び散る氷。それは雪が降っているようにも思える。そして、 雨が降っているようにも思えた。


 「フフッ……やはりそうでしたか。前に見てもしやと思いましたが……完成させてしまったのですネ。“闇の力”を。そして、 その闇が齎すのは“無力化”。私の魔術も効かない訳ですネェ」


 無力化!!

 その言葉でピンときた。あの時、 黒い布を纏った奴らと戦ったとき何故か能力が効かなかった。それはこいつらの…黒い布を纏った奴らの魔術がいけなかったんだ。


 「そうだよ。これが僕達の力。この力でガバメントも魔術学校もお前らOnlookerも壊してやる。そして、 ゲインドスに捕らえられた僕達の同胞を解放する。そのためには地位と権力が必要となって来るんだよ」

 「へぇ〜。それでこんな国を戦争に陥れたんだネ。で、 何故異世界から来たこいつを狙うんだい? 」

 「ボスの命令だからだ」

 「いや…――」


 黒い布を纏った奴の声を遮り、 白髪の男は言った。


 「君も少しは見当がついているんじゃないカナ……この子はネェ…“アヴィリニングの鍵”なんだヨ」

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