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第  肆拾話  大監獄“ゲインドス”・世界最高評議会“ガバメント”

 朝の出来事は終わり、 ミストリアスの家へと戻るべく足を進めた。

 道は頭の中に入れていたのですぐに着く事が出来た。無事に着く事が出来たのでほっとした。

 家の扉を開けようとする。あれ? 開かない間違えて横に動かしていたのに気付き、 扉を押してみたら普通に開いた。

 開けた目の前にはミストリアスが眉間に皴を寄せて立っていた。


 「どこに行っていたんだ…? 」


 その声には思いっきり怒気が篭っていた。思わず身を退きそうになる。


 「ちょっと散歩に…………」

 「君さァ……身の危険とか考えたことある? 」

 「考えたことは…あります……」

 「…………はぁ〜…もういい、 起こる気が失せた。で━━、 何かあったか」


 ミストリアスは後ろを振り向いて机の横にある椅子に座った。

 俺はミストリアスにあったことについて説明をする。


 「散歩している途中に人の腹が爆破されてるところを目撃してそれで周りの人にこの国の事情は知りました」

 「爆破か……この頃は前に比べて更に回数が増えてきた。戦争になる時期は近いと思う」

 「話には続きがあるんです」


 俺がそう言うとミストリアスは「続き? 」と首を傾げた。


 「その爆破された人のところに大勢の人が集まっていたんです。そして、 それを遠くから見て笑った奴がいたのでちょっと気になってそいつを尾行したら黒い布を纏った集団がいてそいつらは“魔術師”って言ってた」


 ミストリアスは訝しげな表情を浮かべて繰り返した。


 「魔術師? 」


 俺は黙って首を縦に振る。

 瞬間、 ミストリアスはあはははと笑い始めた。


 「冗談も大概にしろよな。魔術師がこんなところでうろついているわけがない。魔術師はこの国から海を渡って北東に行ったところにある魔術を教える学校にいるんだ。

  その学校に入るには莫大な“ギルー”がいる。そして、 その魔術を教える学校の地下には“ゲインドス”っていう大監獄がある。それは魔術師達によって見張られていて魔術師達が死刑するんだ。だからその魔術学校は“囚人達の墓場”とも呼ばれてんだよ。

  魔術師達はそこを見張らないといけないし、 この世界を創りだした“創造主”様のところでも働かないといけないんだ。そんな奴らがこんな国に来る筈ない。幻覚でも見たんだろ? それか偽者だよ。その黒い布を纏った奴らは」


 ギルーって何なんだろう。話の流れからして金のことか? まぁ、 そこは後で聞こう。その前に創造主なんているのか? この世界はそいつによって創られたのか…。

 ミストリアスは俺の言う事を信じようとはしなかった。そりゃそうだ。あって一日ぐらいしか経ってない奴の言っていることなんて信じる筈がない。

 ミストリアスは「じゃあ、ご飯にしよう」と言ってなにやら準備をし始めた。そう言えば、 この世界に来てから一度もご飯を食べていない。それを思い出すと急に腹が鳴り、猛烈に腹が減ってきた。


 「おい……遠慮せずに食っていいぞ」


 椅子に座って机の上に出されたものは目玉のような物、 枝のような物、 繋がっている三つの赤い実、 白い実、 そして、 赤・青・黄・白・緑の実のみじん切りを炒めている物だった。

 全て見たことがない物だ。

 飲み物として出された物は緑色で何やら下のほうが凍っている物だった。

 異世界になると何でも違ってくるのに何故、 言葉が通じるのだろう。

 見たことのない物を口に運ぶ。

 案外、 おいしい。

 淡々と食事を口へと運びながらミストリアスに問うた。


 「ミストリアスさん……」

 「ナレイルでいいぞ。後、さんも付けなくていい」

 「ナレイル……俺の言語は何でお前達に通じるんだ? そして、 お前達の言語は何故、 俺に通じるんだ? 」


 ナレイルは「ああ、 言ってなかったっけ? 」と言い、 言葉を紡いだ。


 「この世界はな。他の世界と交流をしているんだ。交流をしている世界は三つ」


 指を三本立ててこちらに向けると「正確に言うと四つだけどな」と付け足した。


 「だから、異世界者は普通に観光しに来たりするんだ。異世界だからさァ。言語も違うんだ。そのための対策に交流している世界とこの世界にはある装置が創られたんだ。装置の名前は“ランゲージスイッチ”。だから、 お前の言葉は理解できる」


 そんなものが異世界にはあるのかと関心した。


 「その異世界の入り口ってどこにあるんだ? 」

 「ああ、 まず、 この世界の形は円だ。で、 その円、 つまり俺達がいる“イラキーハ”はいつも一定の方向に回っている。その一本の軸の上を北、 下を南って呼んでいる」


 そこは俺達の世界と同じ呼び名であった。


 「北のところに一つ入り口があり、 他の三つは南にある。何で北には一つしかないのかと言うとだな、 一つはその北の入り口から繋がる世界には創造主がいるから。もう一つはそこに魔術の学校。大監獄があるからだよ。ここの世界に来て一番初めに見るのが大監獄なんてのは嫌だろう? だから“ガバメント”は北に設置したんだろうよ」


 ガバメントって何かは分からないが異世界の入り口を移動させる権限を持つ組織らしい。すごく偉い組織なのだろう。

 食事を全て食べ終わり、 一服する。

 そして、 俺はふと疑問に思うことがあった。

 ここって戦争をしているんだよな。何で食事と物が豊富なんだ? 

 答えは見つからない。

 戦争なんてしてはいけないんだ。けど、 俺には止めることが出来ない。俺が出来ることは━━━。

 椅子から腰を上げて立ち上がる。


 「どうした? 」


 ナレイルは訝しげな表情を浮かべて言う。

 俺はナレイルの方向を向いて一礼した。


 「短い間だったけど、 お世話になりました」

 「え? 」


 ナレイルは対応に困っている。


 「いや、 ここにいたら戦争に巻き込まれるから……」


 理由を告げるとそうかと低い声で返事をして階段を上がって行った。

 俺は静かに扉を開け、 静かに閉めた。



                   *



 「ちょっと思い切りが良すぎるんじゃない? 」


 あの時、 家の屋根にいた黒い布を纏った奴が言う。

 そいつの前には堂々とした構えで座っている、 黒い布を纏い顔には黒い仮面を付けた奴がいた。

 そいつらがいるこの場所は何やらどす黒い物に覆われていて壁はぐにゃぐにゃと一定した形を保っていない。

 ここは部屋と言うより空間と言った方が妥当かもしれない。


 「思い切りなどすぎない。それより本当にいたんだろうな。赤い眼の異世界者という奴は」


 仮面をつけた奴は威圧感のある声で言う。あの時屋根にいた奴は頬に汗が垂れる。


 「そうやって殺気を立てないでよ“ボス”。本当にいたよ。連れてくる? 」

 「いや、 僕が連れてくるよ」


 ボスと呼ばれる奴の座っているところの隣にいつの間にか誰かがいた。


 「ボス。いいですか? 」

 「行って来い」

 「では」


 ボスと呼ばれる者の隣にいた奴が闇に吸い込まれて消えた。



                   *



 キューティル城。世界最高評議会ガバメント。


 「Onlooker(オンロクゥー)によればもうこの世界に来ているというではないか」


 そこには長い机があり、 何席もの椅子がある。椅子に座っているのは老人や大人ばかりだ。子供など一人もいなかった。そして、 女もいない。


 「あんな石盤に記されていることなど迷信だ」

 「だが、 もし本当だとしたら我々ガバメントに支障をきたす。場合によっては崩壊する危険がある」

 「始末しておかなければならないか」


 椅子に座っている何人もの人が意見を交わす。


 「そう言えば“キール”でそ奴と似た物を身に着ておる奴らが現れたと言っておったぞ。Onlookerが言っておったわい」

 「そ奴らで釣りますかな。議長。どうですかな? 」


 長方形の机の一番端。長方形の短い線の部分に一人だけ座っているやたらと白いひげを伸ばした老人の方を向く。

 そうやらこの老人が議長のようだ。


 「ならば、 釣るためにそ奴らをゲインドスへ送るのじゃ。そして、 時期が来れば処刑判決を言い渡そうぞ」

 「そ奴らを捕まえる手段は? 」


 老人は長いひげを触り少し考えて言う。


 「やむ負えん……1ランク魔術師を手配させろ」

 「分かりました。至急手配いたします」

 「議長。一つ宜しいでしょうか? 」

 「構わん」

 「Black(ブラック) rebel(リベリー)の動きが気になります。オンロクゥーが言っていたのですが奴もこいつらと接触したのことです」


 長いひげを生やした老人ははぁと大きなため息をついて言う。


 「それくらい分かっておる。Black rebelはOnlookerによって見張らせてある。問題はない。他にないのか」


 挙手する者はいない。


 「では会議を終わる」


 椅子に座っていた人々が一斉に立ち上がり、 一礼してその部屋から静かに出て行く。

 その部屋に残ったのは議長と十人の男達。


 「議長。私達は行かなくても宜しいのですか? 」


 十人の中の一人が長いひげを生やした議長に問う。


 「お前達はゲインドスに行ってくれ」


 十人の男達が出て行こうとした時、 一人の男を呼び止めた。


 「ガイド。お前だけは赤い眼の奴を見張っていてくれ」

 「Onlookerが見張っているのでは? 」


 頭だけ後ろを振り向く。


 「あやつらはただの傍観者。赤い眼の奴に何が起ころうとも動かん。だから、 おぬしが」

 「分かりました。では」


 ガイドと言う男は部屋から出てバタンと扉を閉めた。

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