第參拾捌話 戊辰戦争・ベリストリナ王国
「これが俺の家だ」
その家は窓が上と下についていて高い建物だった。この家も“ダイキカ”と言う物質でできているようだ。家に入る戸は左右に動くものではなく。戸を押して開いた。関心して見ているとミストリアスが笑った。
「あははは。そんなことで驚くなよ。面白いなァ。異世界者は! ははは」
そこまで笑わなくても……
少しムスッとした表情になり、 家へと入った。
「すごい……! 」
心のそこからそう思った。
見たことのないものばかり。
自分が知らないものばかり。
自分が知らない世界がここには広がっている。
しかし、 そう思った瞬間、 俺に恐怖が襲った。
皆はどうなった?
徳川とあの殺し屋が居た。
籠と桃が居た。
━━━その二人は殺されたのか?
駄目だそんなことを考えちゃいけない。生きていると思え。まだ分からないんだ死んだなんて……。証拠はないし確かめることもできない。
帰りたい。
皆を守りたい。
体が震える。現実が分からない。確かめることができない。
怖い。
戻りたい。
戻るのが怖い。
現実が━━━━怖い━━━
「今日は二階の“ベット”で休みな…………いろいろなことがあって頭が混乱しているんだろう? 」
ミストリアスに連れられて覚束無い足取りで階段を上って、 台の上にある布団に寝かされた。
震える体を縮めて毛布を被る。
瞼がだんだんと重くなっていき、 完全に閉じた。
*
「仲間が……消された…桃も傷ついた……」
暗くした部屋で一人、 籠は自分を責め続けていた。
部屋は闇に包まれ、 籠の姿が見えない。
籠が部屋にこもった中、 隣の部屋でじっとしていた吏雄が立ち上がる。
「俺はもう我慢ならねぇ! 籠の所に行く! 」
吏雄が大きな足音を立てて部屋を出ようとするが部屋を出る戸の前に二人の男が立ち塞がった。吏雄は足を止めて二人に向けて言う。
「退けよ……漸爾…膏雫偉……」
二人は無言のまま立ち尽くす。
瞬間。
二人の目の前から吏雄が消えた。
気が付くと二人の首には刃が向けられていた。
「俺が神速の天才だって事。知ってるよな? 」
二人が素早く後ろを振り返るがそこに吏雄は居なかった。
私は……
瞬間。戸が勢い良く開いて、 大きな足音を立てながら吏雄が入ってきた。
「何だ……」
吏雄の方に視線を向けると私の方に向かって来て胸倉を掴んだ。
こいつ……死んだような目しやがって
吏雄は内心でそう呟いて、 胸倉を掴んだ手を離し、 籠を殴った。
床に倒れこむ籠。
「ふざけんな!! お前一人に責任があるなんて思うな!! てめぇだけで落ち込むな! 今のことを考えろ! 今何をしなきゃいけねぇのか! 戊辰戦争を止めるんだろ! 」
吏雄に殴られた頬が赤くなってじんじんする。
けど、 戊辰戦争に参加したら……
「世界の人々の命なんて重過ぎる。仲間の事だけで精一杯なんだ…お前は…………助けに行けばいいじゃねぇか。螢空を。螢空を助けたら戻って来よう」
こいつら…蘇鷺の能力について……!!
籠はそうかと呟いて立ち上がる。
世界の人々とかは考えなくていいんだ。
目の前にあるものだけを見失わないようにすれば。
その後に日本や世界のことを……
ドンッ!!!
何かが崩れるような音。しかも、 その音は比較的近いところから聞こえた。
「…何だ……」
呟く吏雄。
廊下から誰かが走ってくる音が聞こえた。
そして、 部屋の入り口の前まで来て、 漸爾と言う男が声を上げた。
「幕府に反乱する者達が一揆を起こしいる。けど、 規模がでかすぎる。戊辰戦争の始まりかもしれない! 」
早い! 戊辰戦争が早く始まったってことはもう不死の薬は出来たのか!
「すぐに外に出て行きま━━━━」
籠は不意に言葉を止めた。それは━━━
足元が……光ってる……
体全体が光に包まれ消えた。
籠だけではない。吏雄も桃、 空の組織全員が消え去った。
*
空の組織の予想通り戊辰戦争が起こった。
徳川が何故ここまで早く起こしたのか。それは定かではない。
それが吉と出るか。
凶と出るか。
西郷はこの戊辰戦争で有効的な手段を使った。
一つは江戸城を戦場としないことだ。
江戸城を戦場とせず、 江戸とは離れた場所で戊辰戦争を起こしたおかげで外国から攻められずに済んだのである。
しかし、 これは後に西郷隆盛が行ったとされているが徳川がやったことなのかもしれない。
もう一つは銃弾。銃弾と言われても分からない人が多数いると思う。それまでの銃弾は丸い銃弾だった。
━━━が、 薩摩は薩英戦争でイギリスに負けている。そのおかげでイギリスの文化や銃などの武器が入ってくるようになった。そして、 薩摩は日本で一番、 工業が発達していたのだ。
イギリスから入った銃弾は現代のような銃弾で丸い銃弾より威力は強力だ。
こんなのが決めてとなり、 旧幕府軍は敗れ去ったのであった。
西郷隆盛はこのまま朝鮮に攻め込もうと提案するがそれが却下され薩摩へと戻ったのであった。
*
『お母さん! ……お母さん! 』
母親。
自分には親と呼べる存在が一人しかいなかった。
母親。
その存在を俺は殺した。
殺すのに快楽を感じていた。
殺した後に残るのは痛み。
心が苦しい。
俺は恵まれてはいけない。
俺は幸せになってはいけない。
あるのは絶望。
あるのは孤独。
仲間はいらない。
仲間をつくっちゃいけない。
『それはお主の妄想に過ぎない』
妄想なんかじゃない。
『誰が仲間をつくっちゃいけないと言った? 』
いけないんだ。
『君の覚悟は棒切れの様だな。すぐに折れてしまう』
…………。
折れない。
覚悟は━━━折れない━━
:
目が覚めた。もう朝になっていた。
一日の流れはもといた世界と変わらないようだ。
ベットとか言っていたっけ……これってただ布団を台に乗せただけじゃないか。
そのベットやらの上から降りて、 階段を下った。
この階段もダイキカで出来ているのだろうか。俺はまだこの世界のことについて何も知らない。
ミストリアスはまだ寝ていた。あの夢のせいで気分が悪くなってしまった。胃の中に入っているものを口から出しそうになる。
それを懸命に堪えながら、 いい空気を吸うために外へと出る。
吐き気が少し治まったところで散歩しようと思い、 歩き出す。
それにしてもいろいろな形の家があるんだな。これだったら普通に迷いはしないだろう。
家の形を順に覚えていきながら歩いていると人が集まっているところがあった。何があったんだろうと思い人が集まっている場所に行ってみる。俺の目には衝撃的なものが写った。
集まっているところの中心には腹を吹き飛ばされた人が倒れていた。
周りには無数の血の跡があり、 鉄の臭いが嫌というほどしている。
この状況を集まっていた中の一人の男に聞いてみた。
「これは……何があったのですか? 」
「ああ……俺は近くを歩いていたから初めから知ってるが、 この男の近くを歩いていたら突然、 男の腹が吹き飛びやがった。犯人はたぶん“ガンドラ人”の仕業だ。すれ違った瞬間、 腹に爆弾をつけやがったんだ」
「ガンドラ? 」
何だ? それ?
人とついているのだから人種なのだろう。
「服装が違うからあんたは旅の人か? なら知らないで当たり前だ。この大陸は元は一つの国だったんだ。ベリストリナ王国って言う名のな…。だが、 ベリストリナ王国には二つの人種が居たんだ。一つは俺達のような“クセル人”。もう一つは先言った“ガンドラ人”。この二つの人種から成り立っていた王国のほとんどの主権は俺達クセル人にあったんだ。国王の王族もクセル人だしな。そして、 ある事件が起きたんだ。その時の国王であるギルダンド・ベリストリナが暗殺されたんだ。そして、 国民が持っていてはいけない武器。銃をガンドラ人の一人が持っていたんだ。
それまでだったらこんなことにはならなかったんだがその銃を持っていたガンドラ人がガンドラ人のほぼ全ての人間で暗殺を目論んだと証言しやがったんだ。そりゃあ、 初めはガンドラ人も否定していたさ。だが、 証拠が見つかってしまってそこから始まったんだガンドラ人とクセル人の戦争は……」
男の表情は怒りと悲しみに満ち溢れていた。
すると、 こことは少し離れた家の前でこの人々の集団をこそっと笑っている奴がいる。
そいつは真っ黒の布を身に纏っていた。そいつは俺の視線に気付いたのか家と家の狭い間を通ってどこかへ行った。
俺はそいつを追うことにした。




