第參拾伍話 凰
やっとのことで万屋に帰り着くと、 皆、 雑談をしていた。
そして、 籠が話しかけて来た。
「螢空…修行方法を変えます」
「ちょっと……待ってくれ…」
頭を下げて、 籠に謝った。
「ごめん…」
驚きの表情を浮かべる籠に対して説明する。
「俺が……おれが本当は籠と吏雄を……傷つけたんだろ? ごめん…」
吏雄は自分のなくなった左腕を触る。
「…過去の事だ……もういい…」
「許しは請わない…許してもらわなくていいから……決断させてくれ。俺は皆を二度と傷つけさせない」
「…そのためにも力が必要になりますね…」
籠は湯飲みを手に取り、 中のお茶を喉へと運ぶ。
「力は……もういいんです……解決しましたから。だから能力について、 いろいろと教えていただきたいんです」
湯飲みを台に戻し、 言う。
「そうですか…………力は…能力はもう手に入ったんですね。分かりました。能力の詳細と凰について教えます。ですが、 今日は休んで明日からにしましょう」
「ありがとうございます」
凰については俺の内にいる空という奴から聞いた。こいつがどういう存在なのかはまだ分からない。けど、 守る為の力をくれると言うのなら感謝しよう。
*
また、 一日が過ぎた。
時間が経つのは早い。そして、 すごく遅く感じるときもある。不思議なものだ。
午前中はそこら辺を散歩して過ごした。籠が午後から修行をやるというからだ。籠にはすごく感謝している。江戸から落ちたときに籠が俺を拾ってくれなかったら俺は死んでいた。あの時は死んでもいいと思っていたが今は生きたい。何か目的があるからこそ毎日が充実していくのだと思い知らされた。
散歩を終えて万屋に帰って昼ご飯を食う。おいしいご飯を食った後、 籠が話し始める。
「まずは凰についての説明をします。凰の種類は大きく分けて三つです。一つ目は基礎・基本となる能力。二つ目はその基本・基礎を合成して使う能力。三つ目は特別な能力、 です。基礎・基本となる能力は第何ノ型…と言います。それを合成して使うのは合成何ノ型…と言います。特別な能力は第特ノ型…と言います。
基礎・基本は
第壱ノ型…蛇殺
第弐ノ型…龍殺
第参ノ型…神殺
第肆ノ型…神速
第伍ノ型…光刃
第陸ノ型…結界
などがあります。
合成はこの基本を合成させるだけです。しかし、 この中で一つだけ合成できないものがあります。
それは第参・肆の型です」
「何で、 できないんですか? 」
「それはですね……この二つを合成させるとあまりにも巨大な力になり過ぎてしまうからです。なので、 この二つを合成した成功例は一つもありません。まぁ、 一回挑戦してみるといいでしょう。最後の特別の能力は今のあなたでも使えない。それは修行を積まないとできないことだからです。神流は雷だったようですね。特別の能力は全て自然のものからなります。そして、 種類は初めから決まっています。
その種類は雷、風、炎、水、氷、です。特別な能力は私達の能力を再現しようとして創られた力です。強力な力であれば私達の能力を凌ぐものになりかねません。なので、 私達も自らの能力を強力にしました。その修行をやりましょう。では、 広場へ行きましょうか? 桃…」
「はい」
籠、 桃と一緒に広場へと向かった。広場に着くと桃は結界と能力を展開し、 桃は見えなくなった。
籠は広場に結界と能力が発動されたことを確認すると口を開き始めた。
「能力を強化するには自分から離しても能力が使えるようにすることです。だから、 あなたの螢空だったら、 自分から離れた場所に螢空を展開をする」
自分から離れた場所に展開する……
そんな事はしたことがない。いつも自分を守るためにしか使っていなかったから。けど…
「何でそれだけで強化できると? 」
「螢空はやったことがないから分からないと思いますが他のところに能力を展開するのはすごい量の集中力と体力が必要になります。それを続けていくことによって能力は強化されていくんです。まぁ、 やってみましょう。凰や能力を発動するときにはあなたの内にいる人の力が必要なのですか? 」
「そうだと思います」
「では、 螢空を発動してみてください」
発動!!
螢空を自分の周りに展開させる。
やはり……
籠は心の中でそう呟いた。
螢空の眼は赤く、 そこには紋章が浮き出ていた。
…あなたの力ではない…………
「そうですね……では、 あの草に螢空を展開してみてください。もちろんそこから一歩も動いてはいけません」
籠が指差した草に螢空を展開しようとするができない。草の方へ螢空をもっていこうとすると螢空はパリンッと割れた。
難しすぎる…
籠はそんな俺を見て言う。
「先に第参・肆の型の合成をしてみましょう」
籠に言われて、 螢空から凰へと切り替えて空が頭の中で話す通りにやってみる。
「合成特ノ型…神速殺」
螢空の周りが光りだす。
もう少し…………
「…すごい……」
あんなにまで……成功するかもしれない。螢空ならできるかもしれない!
…もう少し……
その時、 パンッと音がし、 螢空の体が吹っ飛んだ
広場の塀に頭が当たり、 頭を撫でる。
痛ってぇぇぇ
すると、 籠が俺に近づいてくる。俺の前に立つと言った。
「あなたなら出来るかもしれません。これから頑張っていきましょう」
籠はそっと手を差し伸べる。
差し伸べた手を掴んで螢空は言う。
「有難う御座います」




