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第貮拾玖話  所有権

 「来たか……神流…」


 蝋燭の明かりだけの地下の地下。階段をタンタンと下りてきたのは神流だった。


 「やっぱりここは崩れてませんでしたね」

 「ああ……計画は予定通りだ」


 暗い地下の先を見ながら徳川は言う。徳川がいるところしか蝋燭の明かりが灯っていない。


 「神流…………お前は今まで通り、 木下と一緒に行動しろ。あいつは絶対に明治側に就く筈だ。もしも、 明治側に就かなければお前が誘導しろ」

 「了解致しました」


 その時、 地下に明かりが灯る。


 「びっくりしましたよ…………急に地面が揺れ始めるんですもの…」


 そこは広い空間で白衣を着た奴らが大勢といた。そして、 その奥には死体の山が…


 「徳川様……」


 徳川の前に来る、 一人の白衣の着た女。


 「不死はもうすぐ完成です。あなた様が不死になるまであと少しですよ」

 「そうか……もうすぐか…………それで人間は用意できてるのか? 」

 「はい……1000万人ほど…」


 白衣の女性が指差した先には大勢の人間が檻の中に入れられていた。


 「1000万人か……ちと多すぎる気もするなァ…………神流…お前は仕事をしてから地上へ上がり、 木下と合流しろ」

 「了解…あなたは? 」


 徳川は階段の方へ歩きながら言う。


 「…私は死ぬ」


 徳川は嗤った。



                   *



 「さぁ、 立って下さい。あなたの傷はもう治っているんですからまずは固まった筋肉などを動かしていかないと」


 そう言われて立とうとする。すると、 普通に立つことが出来た。しかし、 足は痛くて歩きづらい。

 その俺の様子を見て子松は言った。


 「立つことはすぐに出来ましたか……僕達が毎日、 筋肉をほぐしておいたからですね。感謝してください」


 「ありがとう」と古松に言うと「いいえ、 問題はありません」と答えた。



                   :



 「ここ…………ここでやるんですか? 」


 口元を歪めて螢空は言う。


 「はい、 そうです。何か不満でも?」

 「…いや…………」


 古松に連れられてきたその場所は━━━━。


 「ここって……子供が遊ぶ…………広場じゃないですか…」


 何もない空き地。ここで修行をやるというのか? 馬鹿言え。こんな場所だったら人に見られるではないか…

 俺の焦っている顔を見て古松はげらげらと笑った。


 「そこまで焦らなくても大丈夫ですよ。螢空。さぁ、 広場に入ってみて下さい」


 古松に押されて広場に足を踏み入れる。すると、 何か水の中に入った様な感覚がした。

 うっ

 と後退ろうとしたとき、 古松が俺の背中を強く押して無理やり広場の中に入れた。するとそこには『空』の一員と想われる奴らがいた。


 「あなたはまず、 能力について知らなければいけませんね。能力の種類は八つ。螢、 蜂、 蝶、 蚊、 蟻、 蚤、 蛾、 蛇の八つです。

 広場は外から見ると、 誰もいない広場だった。しかし、 入るとちゃんと人がいた。これは蛾の能力です。

 蛾の能力は簡単に言うと……透明にする能力です」


 透明かァ……能力っていうのはやっぱりすごいなァ……でも……


 「…でも、 零の能力者に俺たちの能力は効くんですか? 」

 「……効きますよ…僕達の能力は零の能力をもってしても防ぐことや壊すことは出来ません。じゃあ、 説明に戻らせていただきます。透明になったとしても触られれば普通の人に気付かれてしまいます。なので、 この広場の周りには結界が張られているのです」


 結界? 結界なんて存在するのか……?


 「結界なんていうものは人に気付かせない結界です。広場には近寄らせない。存在感が薄くなるようなものです。あなたも普通の広場にしか見えなかったし、 近づこうとはしなかった。僕が入れない限りね」


 それはそうだった。なんか……なんか分からないけど…広場には入りたくなかった…それが結界の影響か…

 しぶしぶ納得した。


 「…でも……零の能力なら零に気付かれるんじゃ━━━━」

 「そうです。普通の結界ならば零に気付かれてしまう。なので、 その結界をも透明にしているのです。それだったら零には気付かれない」


 そう言うことか…

 ほとんどのことを理解することができた。


 「心力を手に入れる…高めるためには集中力を高めるしか方法はありません。なので、 螢空。君には━━━━…僕達の攻撃を能力を使わずに避けてもらいます」

 「やっとその話かよ…………籠…」


 広場にいた数人の人の中の一人が言った。そいつには見覚えがあった。


 「お前は……! 」

 「そう言えば、 彼に螢空(ほたるぞら)の能力を取られましたね。蛇道もそうですけど…………彼の名前は吏雄。能力は蜂です」


 そいつは俺の方向を向くと目の瞳孔がレモン型になった。そして、 俺の首に刃を突きつけて言う。突きつけるといっても彼は何もしていない。これが吏雄の…蜂の能力なのだろう。


 「てめぇに協力してやるよ。せいぜいがんばるんだな…」

 「彼は心力を手にする修行に協力してくれます。もう一人は桃です」


 桃という女は俺を吏雄の許に連れて行った女だった。


 「桃の能力は蛾」


 透明の能力か…………あっ! 

 螢空は何かに気付き、 古松に問うた。


 「そういえばこの場所は? 」

 「言っていませんでしたっけ…千葉県です」


 千葉県か……江戸とは離れていない…


 「では始めましょう。修行を…」

 「ちょっと待って…」


 感情のない声で言う桃。


 「私、 結界を透明にするのに能力を出してるから……戦えない…」

 「そういえばそうでしたね…………二人で十分ですね…………では吏雄…」

 「…分かってるよ」


 吏雄は我武者羅に返事をした。

 その瞬間。古松の瞳孔がレモン型になる。



                   *



 「ハァ…………ハァハァ…」


 螢空は切傷をたくさん負い、 息は切らしていた。


 「おいおい! もう終わりか? 螢空! 」


 吏雄が声を上げる。

 そして、 吏雄の能力が俺を襲う。何本もの刃がこちらに飛んでくる。それを紙一重で避けた。しかし、 避けた先には古松が俺に殴りかかろうとしていた。

 やばい!! 死ぬ!! 

 そう思い、 唐突に螢空(ほたるぞら)を出してしまった。

 俺の前に光の壁ができ、 古松が弾き飛ばされる。その最中に態勢を立て直す。


 「能力は出してはいけないといったでしょう。螢空。まぁ、 今のを喰らったら死んでたかもしれませんが……」


 古松が螢空を見る。すると、 古松の目が変わった。

 その刹那。

 螢空が嗤い出す。


 「あははははははは………………このひよっこが…………」


 その目には何かの紋章が…


 「お前は……! 」


 古松は驚愕の表情を浮かべる。

 すると、 螢空は非情の声で言う。


 「………………我に所有権を移させたのは……」

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