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第貮拾肆話  拾分

 「今日さ…なんか非難しないといけないらしいよ」

 「えっ…何で…」

 「なんか……江戸が沈むって……」

 「はっ? 誰がそんなこと…」

 「木下隊長が日が沈んでからすぐに江戸から非難しろって…」

 「木下隊長が?……でもあの人の言うことは……」


 住民達が会話をしているところを檜都はじっと見つめていた。すると、 チッと舌打ちをする。


 「早く非難しろ! 本当に崩れるぞ! 」


 その声に反応する住民達が走って非難をし始めた。


 「馬鹿が……中途半端に教えたりするから迷うんだ……」



                   *



 外の橙色の空から青色の空に変わるのをじっと見ていた徳川が口を開く。


 「黒船が来航をした。さぁ動け……わしの血を引く者よ…」



                   *



 門番を倒して中へと入っていく。中へ入ると中に居た一人の男が騒ぎ出した。


 「侵入者だ!! 軽く二百は超えてるぞ!! 」


 二百? 

 疑問を抱いたのが分かったのか木下は説明し始めた。


 「あれは私が雇った。錯乱させるための仲間よ」


 そう言われて理解した。


 「さぁ、 別れましょう。無事を祈るわ」


 木下の言葉で全員違う道を行った。内心でありがとうと呟き、 俺は上の徳川が居る場所を目差した。



                   *



 「何か外が騒がしいな……」


 外の異変に気が付いたのは吏雄であった。


 「それは当たり前ですよ。黒船が来たんですから…」


 古松がそれに反論する。その反論に苛立ったのか吏雄は自分の意見を古松に押し付けた。


 「日が沈んでまで騒ぐことかよ! ぜってぇー何かあったな! 」


 吏雄の言葉に古松もカチンとくる。


 「黒船が来航したことは相当騒ぐことです。日が落ちても騒ぐんじゃないですか!! 」

 「何だと? 」

 「酒が飲めないからって僕にあたらないでください! 虫唾が走ります! 」


 古松は吏雄の顔を見ようとはしない。それにものすごく頭に来たのか立ち上がった、 その刹那。

 戸をガランッと激しく開ける音がする。そこには万屋の入り口にいた、 「ご注文は?」といった老人であった。


 「皆さん!! 早く江戸から離れてください!! 」


 皆、 目を見開いてその老人を見た。老人はかまわず話を続けた。


 「江戸が崩れていくそうです!! 」

 「……そりゃ…本当かよ…爺さん…………」



                   *



 階段を何個も上がっていた螢空は少々疲れ気味だった。


 「ハァ……ハァハァ…………」


 木下達が武士達を錯乱させているおかげで俺はあまり武士に会っていない。でも、 ここまで会っていないのはおかしくないか?

 螢空は疑問を抱きながらも上へと進んでいく。

 すると、 もう上に行く階段がないことに気が付いた。

 この階の他の場所にあるのか?

 そう思い廊下を走っていく。横などに分かれている道は勘で行く。

 ろうそくが一定の間隔で並んでいるだけの暗い廊下だ。

 走っているとある部屋にたどり着く。

 道を間違えたか? と思ったが引き返すのは辛い。そう思い、 戸をゆっくりと開けていく。


 「上杉 螢空……いや…………違うのか……」


 その声には聞き覚えがあった。


 「あの時の………………何故俺の名を…」

 「徳川に聞いた……邪魔はいない……さぁ…始めよう」

 「……陸、 伍、 肆、 参、 弐、 壱、 零…」


 その瞬間。

 床が揺れ始め、 何かが崩れていくような大きな音がする。

 愕然としている蘇鷺に対して独り言のように螢空が呟く。


 「時間を計るのは得意なんだ……子供の頃からね! 」


 蘇鷺に突っ込んでいく螢空。

 零の能力を出される前に━━━━敲く!



                   *



 江戸城の下部が崩れて煙を上げていく。その最中、 真っ赤な炎が発生し、 一気に広がっていく。


 「ハァ……成功ね……」


 木下はちゃんと外へ逃げ切れていた。他の人は見当たらない別のところから脱出したのだろう。

 早く…江戸から離れなくちゃ…………がんばりなさいよ……上杉君…

 そして、 木下は無事江戸を離脱した。



                   *



 螢空がどんどん攻めていく中、 そのせいで蘇鷺は能力を出せずにいた。

 くそ…こいつ……前よりも動きが早い…

 螢空の拳はまだ一回も蘇鷺を捕らえていない。違う。螢空はわざと当てていないようだ。能力を出させないために。

 その刹那。

 螢空は蘇鷺の死角を見つけ、 その死角から蘇鷺の顔に蹴りを入れる。

 しかし、 それも紙一重で避け、 かすり傷になってしまう。

 チッ

 舌打ちをして体勢を立て直そうとした。その時、 こちらも隙が出来てしまう。


 「合成参ノ型…神速(しんそく)光刃(こうは)


 その瞬間俺の視界から男が消えた。

 えっ!! 体の……いたるところが…斬れている…

 それは視界から消えたのではなく、 捕らえられなかったと知ったのは後ろを振り返った後だった。

 後ろを向くと殺し屋が光の刀を持って立っていた。その背中を見て、 遠いのは一目瞭然だった。

 フラフラとなって壁にもたれながら倒れていく。

 視界が暗く、 沈んでいく。殺し屋が何かしゃべっていたのが聞こえた。


 「お前は俺を蹴ろうとしたとき、一瞬、戸惑った。俺に情が移りでもしたか? 上杉螢空」

 「…は……あ……」


 うまく話すことが出来ない。口がうまく動かせないでいた。


 「お前は感情を捨てなければ俺には勝てない! 非情になれ! 上杉螢空! 非情に…零になって、 俺がお前の壁だ!! 」

 「み……のが……す…の……」

 「今のお前は殺しても意味がない。白けた…江戸城は燃え始めている。ここにいたら死ぬからな…」


 殺し屋は去っていった。どうして燃えているのか分かったのだろう…

 考えようとしたが意識がそこまでもたなかった。

 視界は暗闇に堕ちていった。



                   *



 「下部を壊されたな……」


 江戸城が壊されたと言うのに徳川はのんびりと椅子に座っていた。


 「そういえばお前、 随分と早かったの〜」

 「神速を使いましたから」

 「ここの階までか? お前は凄すぎるよ。敵ではなくてよかった」

 「…火も発生したようですし、 逃げられなくて宜しいのですか? 」

 「将軍と言うものは堂々と座っていなければなかろう。お前はそうは思わぬのか? 」


 徳川の隣にいた男がはーっとため息をついた。

 まったく…徳川って人は……

 内心で呟く。

 その瞬間。徳川が隣の男の方向を向く。心を読まれたのかと思い一歩退く。


 「どう思うかの〜……わしの息子は…」


 その口元はにやりとしていた。

 この人はなんという残酷な人なんだと男は思うがその口元は歪んでいた。

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