第貮拾參話 突入
「零になってる暇なんかない」
木下は少しからだが震えていた。たぶん、 武者震いという物だろう。
「木下隊長……あの約束を忘れていませんよね? 」
「ええ…忘れてないわ……」
本当にこの人は憶えているのか? と疑問を抱くが口には出さないでおこう。
「一先ず、 宿場を見つけることにしましょう。そこで江戸を崩すための計画を相談しあうわよ」
*
螢空たちは江戸城から少し離れた場所の宿場に泊まることにした。
何故、 黒船が来航したから江戸を攻めやすくなったのか。それは人の幕府への不安である。
欧米は軍艦の威力を日本に見せつけることができ、 日本はそれに対抗する力がありません。
たとえ開国を求める方が下の立場であったとしても勢力の差が日本を下にしているのです。
これを見て国民はどう思うでしょう。今の日本は皆、 日本と考えていませんでした。江戸の人々なら他の県で起こっていることは他の国で起こっていることと同等なのです。そして、 これを気に皆、 一つの日本だと考え始めるのです。
そして、 欧米からの圧力。本当に日本を幕府に任せていいのか? と思うのです。
:
「で、 どうする? 」
木下が皆に問う。ここは皆、 一人一人の意見を出すのが妥当だと思う。
「やっぱり、攻めるなら夜がいいと思う」
「同感」
神流が意見を出し、 潤璽が同感する。
「ちょっと……いいですか? 」
「何? 」
俺が木下に問う。
「あの〜江戸の地下は広いんですよね? 」
「ええ、 そうよ。それが? 」
「そこを……爆破できないかな〜って……」
その刹那。
驚愕の表情を浮かべて俺に反論してきた。
「無理! 江戸にはたくさんの住民がいるのよ! そんなことできる訳━━━━」
「いや…」
木下の言葉に横は入りしたのは神流。
「その住民を全部避難させれば…」
「そこまでしてやることじゃないだろ」
神流に反論したのは檜都。皆、 座っているのにやはりこいつだけは立っていた。人と接するのが嫌なのだろうか?
「いいや…………地下は徳川の陰謀の下、 造られた物だろ? それを壊されたとしたら、 あいつ狂うんじゃないか? 」
「……やる価値あるわね」
それに合わせて皆、 首を縦に振る。
「じゃあ、 俺はもう部屋に戻らせていただきます」
「ええ……後のことは私が説明しておくわ……たぶん、 明日の夜に攻めると思うから…」
「失礼します」
俺は自分が泊まる部屋へと行き、 布団に飛び込む。
やはり、 まだあの時の傷のせいか…体が重たい…零……俺もなりたかったな……あいつを倒したい……力が欲しい…
*
「じゃあ、 説明するわ…螢空は一人で徳川と会うわ」
「はぁ! どういうことだよ! 」
声を上げたのは神流。
「あの子が決めたことよ。『自分が言い出したことだから…』と」
神流はしぶしぶ認めたようだ。
「それで、 琴遂くん以外の人全員で江戸に潜入しましょ。この中では一番重傷だからね」
なので、 この場にいるのは十人だ。
「俺は抜ける」
そう言ったのは檜都だった。その言葉に反応して木下驚きの表情を浮かべる。
「何で! 」
「俺には関係ないことだ。自分が言い出したことなら一人でやってろ」
「どうしてそんなこと━━━━」
「死にに行く奴に手助けは無用だ! 」
檜都の怒声が部屋に響く。
檜都は部屋の入り口の方へ歩き出し、 部屋を出て行った。
「あのときの会話を聞いていたのね…………檜都…」
皆、 木下の言葉が分かっていないようだった。それを察して木下が話し始める。
「私達が江戸城に侵入してから十分後に江戸城の下部を爆破します」
「ッ! 」
皆、 驚愕の表情を浮かべた。
「その十分間で私達は敵を錯乱させるのよ」
*
戸を開ける音がした誰かが入ってくる。俺の元で座った。
その瞬間、 俺は毛布で顔を覆いつくした。
自分が何でそうしたのかは定かじゃない。体が勝手に動いた。
「……話は全部聞いたよ」
「…………そうか…」
その声の正体が神流だと分かり、 毛布をどかす。そのときの俺の顔はひどかったのだろう。神流が少し、 笑ったようだった。
「なんて顔してんだよ…………本当に死ぬ気なのか? 」
「……ああ…」
少しの間、 沈黙が続き、 神流が急に立った。
「お前が決めたことならしょうがねぇよ…………けど、 生きれるなら精一杯生きろ」
神流は部屋から出て行く。その後は風呂入ったりしてすぐに寝た。
しかし、 俺が寝ている間も木下たちは何かしていた。それが申し訳なくてしょうがなかった。
*
朝起きるともう宿場には琴遂と檜都しか居なかった。
俺も急いで外に出る。けど、 外に出ても意味のないことに気付き、 宿場で待っていることにした。
昼過ぎになって木下たちが帰ってきた。どうやら、 地下に爆弾を仕掛けたり、 江戸の住民に非難するようにこっそりとそのことについてまわさせたらしい。
爆弾の管理は誰がするのかと聞いたら、 神流と一緒に来た木下の部下に任せたらしい。 そして、 江戸城の爆弾はちょっとした知人に金を払って頼ませたと言っていた。
それから江戸城の傍まで行き、 夜になるまで待った。
「もうすぐ日が沈むわね…」
空が赤色からだんだんと青、 黒に変わっていく。
「さぁ…始まるわ」
日が沈んだ。
その刹那。
木下が声を上げる。
「行くわよ! 」
江戸を崩す。戦いが始まる。




