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第  貮拾話  俯瞰

 俺は弱い…

 あいつを蹴ったとき確かに手ごたえはあった。けど、 あいつは全然効いてないようだった。何で何だ…やっぱり俺が螢空に頼っていたからか? 

 駄目だ……こんなに弱いんじゃ無理だ……



                   *



 目を瞑っていても分かるような眩しさに襲われてパッと目を開いた。

 まだ頭がぐらぐらする。あいつの手刀せいであろう。あれ…でも俺…地下にいたんじゃ…

 そのことについて知りたいがまだ起き上がれない。

 腹には包帯がしてあった。誰がしてくれたのだろう。まず、 誰がここまで運んで…………ん? ここはどこだ? 江戸か? それとも…


 「気が付いたようだな…」


 部屋と廊下の境目をまたいで戸によっかかりながら立っていたのは神流であった。


 「神流…」


 着物の下や手にはまだ包帯が巻かれていた。そして、 それから一つ疑問が湧いた。


 「どうやってここへ……連れて来たんだ? そんな体で…」


 神流がこちらを向いて俺の傍に来て胡坐を掻く。


 「俺のほかに四人ほどの木下の部下を連れてきた」

 「ここは…江戸? 」


 質問すると神流は左右に首を振った。


 「ここは宮城だ」


 宮城…まだ江戸まで距離はある……そういえば


 「みんなは! 」

 「大丈夫…全員、 無事だ。もう目が覚めている」

 「そうか…」


 ほっとして力が抜けた。それに対して神流は質問してきた。


 「何があった…お前ら全員血だらけで倒れていた……何があったんだ…」


 皆からは何も聞いていない様子だった。


 「お前ら…地下を通ってきたんだろ? 通り道に琴遂って言う男がいたはずだけど…」

 「ああ、 そいつも連れてきた。地下に血の跡があったから走って地下を進んだらそいつが倒れていたんだ…お前らと同じく血だらけでな…………で…何があったんだ…」


 何を言えばいいのかまとまらない。あれは怪物だった…次元を超えてるよ…


 「…殺し屋が…新撰組が殺し屋を雇ったんだ…」


 神流は俺の顔をじっと見つめてから言う。


 「それは本当の話だが…大事なことを隠しているだろう? 」


 こいつには敵わないや…と小声で呟く。すると、 神流は言った。


 「ちょっと待て……殺し屋だと? それじゃあ人間があんなことをやったのか…いくらなんでも無理だ。そいつは能力者だったのか? 」


 神流からの問いに左右に首を振り、 言った。


 「そいつは能力者でもなんでもない普通の人間だった…」

 「どういうことだ…」


 神流は驚愕の表情を浮かべていた。そんな神流にこう警告する。


 「冷静に聞いてくれ…」


 辺りは突然と静かになり、 風で揺れる木の音しか聞こえなかった。



                   *



 「嘘だろ……? 」


 話し終えた後、 神流はまた驚愕の表情を浮かべていた。無理もないだろうと思う。

 あの話には根拠がない。けど、 あいつの現実ではありえない行為が事実と物語っていた。(ゼロ)と言う奴らの存在や誰もがもっている生命の力…(ひゃく)

 その(ひゃく)を操る力…心力(しんりょく)

 何がなんだか分からないが俺たちも(ゼロ)になるしかない。新撰組や空の組織も使えるんだから…けど、 どうやって…………


 「(ひゃく)、 心力(しんりょく)を操るんだ? 」


 その言葉を口にしたのは神流であった。俺と同じことを考えていたみたいだ。


 「(ゼロ)を探さないと…」


 神流が深々と考え込む。そして、 俺はあることを思い出した。


 「あいつ…何か嫌な感じがした…何か……怖い感じ…」

 「そんなもの当てにはならないだろ…」


 あっさりと意見を捨てられたがこっちも粘る。


 「新撰組の土方も同じ感じがしたんだ…」


 それを聞いて神流は少しの間、 考え込み言った。


 「賭けてみるか……お前の傷が治ったら江戸へ向かう。けど、 地下は通らないで地上を通るぞ。お前の感覚に賭ける」


 そして、 神流は部屋を出ていった。部屋は俺一人になり、 自然の音が聞こえた。



                   *



 江戸城から俯瞰の風景を見ていた徳川。独り言を言い始めた。


 「俯瞰風景…なんといい景色だろう…私以外の人間は皆、 塵のようだ。実に面白い風景だ。そして、 この景色もいつか一変することになるだろう。今、 思う存分に拝んでおかなければ」


 徳川は真剣な顔をしながらも口元は歪んでいた。


 「仕事の方はどうなんだ? 蘇鷺(そろ)…そうか…わしの息子が…………ふん…時期、 そ奴も(ゼロ)になる…計画に支障が生じるならば殺してしまえ……何…? 金ならいくらでも払うと言うたはずだが……? うむ…また……」


 徳川は何のそぶりも見せずに椅子に座っているだけであったがその独り言は誰かと会話をしているようでもあった。


 「螢空を中心とした反乱軍…新撰組…空…旧幕府軍…そして……明治維新軍…駒は揃った。これからは日本は一つとなり、 そして…………世界は我が物となる…」



                   *



 「あ〜うるさいなぁ…あの人の声は」


 片耳を押さえながら男は呟く。


 「何やってんだ殺し屋…」


 その横にいた土方が聞くと一つの単語に反応して男は言う。


 「ちゃんと名前があるんですから蘇鷺と呼んでください…………徳川からの連絡」

 「おっ…なんて言ってた? 」


 その質問を聞くと蘇鷺と名乗った男は少ししょんぼりした。


 「計画に支障があるならあいつ殺せって…」


 それを聞くと土方は高々と笑った。

 ここは地下。その声が全体に響き渡る。


 「ばかだなぁ。お前も…そんな奴すぐに殺しちまえばいいものを」

 「あなただって殺してないでしょうが! 」


 反論した蘇鷺に対して「わかった、わかった」と言う土方。


 「ほんとに江戸で会えるんでしょうね? 」


 蘇鷺が土方に問うと土方は「ああ。」と言って言葉を続ける。


 「本当だよ…あいつらの目的は決まっているんだから。そして……次に会うときには容赦しない。そこを血の海にしてやる」


 土方と話していた蘇鷺と言う男。それは螢空たちがやられた殺し屋であった。

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