第 拾捌話 魂
「舟を出してもらうしかないわね……何隻ぐらいいるかしら? 」
「三くらいでいいんじゃないかな? 木下? 」
木下に敬語を使わずに意見を出したのは潤璽と言う人であった。
「まぁそうね。じゃあそれで行きましょうか。目的地は江戸なんだから琴遂も分かるわよね」
こうして、 舟に乗ることになった。俺が乗った舟には潤璽と言う人と檜都と言う人が一緒に乗った。
「ねぇねぇ、 螢空君。君さっきの自己紹介のとき嘘をついたでしょ? 」
問いかけてきたのは潤璽。やはりその目は糸目。しかし、 嘘をついたのは本当だったので思わず意表を突かれた顔をしてしまう。
「やっぱり…木下隊長には言わないから話してよ螢空君」
潤璽が顔を寄せてくる。その後木下には言わないと約束をして、 あのときのことを話した。
「本当のことを言うと俺…襲われたんです」
「襲われた? 」
また顔を近づけてきたもんだから反射でその顔を元の位置に戻してしまう。
「えっと…それは団体の人達で…名前が空とか言う集団」
その瞬間、 潤璽の顔が真剣な表情に変わる。
「話を続けろよ」
横で聞いていた檜都が言い、 俺は話を続けた。
「で…その中心的な人物から仲間に入れ見たいなことを言われてそれを断ったんです。そしたらそいつが『もういい』と言った瞬間、 視界がぐらぐらして来たんです。そして、 男が『お前の能力はもらってく』と言って、 そこで記憶が途切れました」
二人はその話を聞き終わった後、 懸命に何かを考えていた。
*
「ハァハァ……ハァ…」
必死に息を整えようとしているのは琴遂。その頬や着物には斬られた後があり、 着物は血が滲んでいた。
「どうしたァ…まだ抵抗するのか? 」
琴遂の刀は一本しかない。そして、 その一本も刀身は三分の一になっていた。床には刀の破片が散らばっている。そこへぽたぽたと落ちていく紅の水滴。この勝負の決着はついていた。
「もう立っているだけで精一杯だろう……何故立ち上がる…」
「…ハァ…俺の……ハァ…魂がそれを許さねぇ…」
刀身が三分の一ほどになった刀を構え、 声を上げて土方に突撃する。
「うぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 」
それを土方は避け、 琴遂に一太刀を浴びせる。飛び散る紅の水滴。それがゆっくりと地面に落ちていくと同時に琴遂も地面に倒れた。
地面に倒れた琴遂を見て刀を鞘に戻し、 螢空たちが行った方向へ歩きながら土方は言った。
「お前の魂の叫び、 凄まじいものだった……」
土方が去っていく中、 琴遂は目から涙をこぼしていった。
「くっそぉぉぉ…………」
無残に散った刀身が悔しさを倍にした。
*
「…ハァ……ハァ……徳川…僕が裏切っていると知っていながら……」
腕から血が流れる中、 古松はあるところに向かっていた。
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「古松め…紙一重で避けよったわ…腕を撃たれるだけですみおった…」
ハッハッハッと笑いながら徳川は銃をしまう。高々と椅子に座り、 独り言を続ける。
「手駒なら…何人もいる…」
:
「ハァ…ハァ…………着いた…か……」
古松の前には『万屋』と書かれた看板の家があった。
そこの戸を開けると普通の万屋であった。しかし、 目の前には一人の人が立っており、 その人が口を開く。
「ご注文は? 」
「空を欲するなら森羅万象を知れ」
「…どうぞお通りください」
普通の万屋なら注文をしてそこで終わり、 奥へなんて行ったりはしない。
「まだ来ていないようですね…」
「古松…どうしたのですかその怪我…」
「撃たれただけです。たいした傷では……ありません」
「たいした傷ですよ…血を吸ってあげましょうか? 」
「遠慮するよ」
古松は部屋の棚から包帯を探して包帯を腕に巻く。
「弾は貫通しています」
「そうですか…」
古松と話しているのは先の戦闘で彩捺と戦ったあの男であった。
これは全て昨日の話しである。
*
「な〜んかすぐ着いちゃったわね」
ずっと同じ姿勢で座っていたのでみんなそれなりに伸びをしていた。俺も伸びをする。
「けど、 まだ東北の先っちょだよ。これからどんだけ歩くことやら…」
潤璽が項垂れているところを木下は言う。
「はいはい項垂れてないで先を急ぐわよ」
*
「またここに入るんですか? 」
廼斬が声を上げる。
「しょうがないわよ…ここを通る道は最短なんだから…」
木下は頭を抱えながら言う。
そして、 木下を先頭にまた地下の道を歩くこととなった。
*
「んっ! 」
その男は先ほどまで目を閉じて正座で座っていたが何かに気付き目を開けた。
「誰かが入ってきたか……人数は……九人か…」
そして、 その男はまた目を閉じた。
「さぁ、 戦闘になる…”しんりょく”を高めなければ…」
その男は螢空たちが歩いている地下の中の遠くに位置していた。
しかし、 螢空たちとこの男が出会うのは時間の問題。
次回…人々の戦い方が変わり始める




