第 零ノ貮話 真実
男は部屋を出て長い廊下を歩いていた。この男の名は螢空。上杉螢空だ。見た目は二十歳くらいだが本当の年齢は十六〜十七歳くらいなのだ。二十歳に見えたのは身長のせいでもあっただろう。しかし、体はまだ少し細い気がする。髪は首くらいまでで、険しい顔を浮かべていた。
螢空が今、いるところは城だ。江戸城。螢空は徳川の首を殺りに来ていた。
◆
周りを警戒しながらしばらく歩いていると血の跡を見つけた。その横には部屋があり、そこから吐きそうになるくらいのもの凄い鉄の臭いがしてきた。
うっ
と思い口元を手で塞ぐ。おそるおそるその部屋を見るとその光景は凄まじいものだった。
壁のいたるところに血が付着しているのだった。
目の前の光景に驚きすぎて言葉を失う。
そして、集中が切れて地面に手を着く。すると、妙な音がした。
ビチャッ
暗くてよく見えなかった血が廊下に続いていたのだった。よーく目を凝らさないと見えない血の跡だ。
この血の量。誰かがここで戦ったんだ。そして、その血が廊下に続いている。傷を負いながらも必死に逃げようとした証拠だ。
とっさにそう理解して立ち上がり、血の跡を辿って行く。
一つの部屋にたどり着いた。さっきの部屋とは違いちゃんと戸がしてあった。
その戸をそっと開けていく。
部屋は暗かった。蝋燭に火が灯されていない。
誰もいないのか? と思い辺りを見回す。
すると、不意に女性の声が聞こえた。
「ここから先へは行かせぬぞ」
俺は身構えて目を凝らして辺りを見る。
そして、直感する。
二人いる。
そう思った刹那、蝋燭の灯りが灯される。
女性はきれいな着物を着て畳にに座っていた。もう一人は男性で刀を抜こうと横で構えていた。
「立ち話もなんだから座れ」
「えっ……!」
何を言ってるんだこの女。
そう思って余計、身構える。
「早く座れ。おぬしにも時間がないのじゃろう?」
それはそうだけど……
少し戸惑うがしぶしぶ座っていしまう。
女性はさっきから表情を一切、変えていなかった。美人と言えば美人だ。
「おぬしが上杉螢空か?」
女性は淡々と質問をしてくる。
はいと答えると女性はそうかと質問を繰り返す。
「上杉の姓は母方のか?」
そんな質問をされると思ってもいなかった。
「……はぁ……よくご存知で……」
母のことに触れられると反射で声が小さくなった。
「父は誰か知っておるのか?」
まだ質問を繰り返すのか? と思い答えが雑になり始める。
「知りません」
「だろうな」
だろうな…だと……俺の父親の事知ってるのか? こいつ…
螢空がこいつ、何者だという目で見ながら、螢空が女性に問う。
「何かご存知なのですか……?」
「まぁな……聞きたいか?」
女性が問い返してきたとき、男が会話に横は入りする。
「その事を話してもよろしいのですか? ××様」
女性の名前はよく聞き取れなかった。
「よい……別にどうでもいいことじゃ…………おぬしの父親は……」
思わず息を飲み込む。
「徳川 家康様じゃ」
えっ!
その言葉を疑った。俺は大きく目を見開き言う。
「ちょっと待て!! 徳川家康って四十年位前に死んでるぞ!」
「そうじゃ。しかし、それは表での話…………だが裏では違う。家康様はまだ生きている。不老の薬を飲んだからな」
何言ってんだこいつ不老? 不死? 何言ってんだよ
「不老とは不死とはまた違う。心臓を刺されれば死ぬし、殺せるのは殺せる。だが年はとらない。何も危害を加えなければ一生、生きれる」
「そんなことありえるわけないだろう! しかもそんな大事なことを何で俺に!」
あっ!
俺は気付いてしまう。それを察したようで女は言った。
「そうじゃ…お前はここで私が殺す。もう一つ教えてやろう。不老の薬を作るには実験が不可欠だった。家康様は大勢の女性と付き合い、子を産ませた。そして、その子供は全て差別の住民にして、公開処刑にはその地区の差別の住民が全員参加するように命じた。もう分かったのではないか? おぬしが母親を殺したのは薬の実験のせいだったんだよ」
えっ? 母さんを殺したのはあいつの……あいつの……
そして、足が勝手に動き出し、奥の戸へ向かう。
「何処へ行く気じゃ?」
女の横を通ったときに聞かれる。
「徳川を惨殺しに」
女はフンッと言い、俺の腕を掴んだ。
何だ……この女……力が強い……
「行かせはせぬと―――」
その刹那。女が刀を抜く音がする。
「―――言ったであろうが!」
刀が俺に向けて振り下ろされた。




