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第  拾伍話  銃声

 「約束どおり、 江戸の内部には九州の武士を配置しました。けど、 少し人員は減りましたよ」


 何でいつもこんな暗い部屋にいるんだろう。


 「そうか。御苦労、 古松。ちゃんと鹿児島の奴らは置いてきたのか? 」

 「置いてきましたよ」


 いつもどおり声に迫力がある人だなぁ…

 そう思った瞬間、 障子の隙間から外を見ていた徳川の目がこっちを向く。


 「古松。お前は俺を裏切っているのか? 」


 徳川の目をじっと見つめて言った。


 「……そんなわけないじゃないですか。小さい頃からの長い付き合いなんですから…それとも僕を疑っているんですか? 」

 「いや、 そんなことはない君は信頼できる男だよ」


 徳川の言葉の後、 じっくりと徳川の目を見つめる。


 「そうですか……では、 これで」


 戸を開けて部屋を出て行く。その直前まで徳川がこちらを睨みつけていることが分かった。


                   :


 「仮面を被りおって。古松の奴め」


 部屋に残っていた徳川はひとりでに言う。


 「良くここまで働いてくれたものだ。しかし、 もう用無しだ」


 そう言うと、 椅子の横に置いてあった銃を手に取り、 部屋を出た。


                   :


 まだあいつは気付いていない。

 推測のうちだからまだ分からないが現時点では気付いていない。

 どうする? いや、 まだ気付いていないんだ。今、 裏切ったらこれまでの努力が無駄になる。

 まだ早い

 バンッッ

 その銃声は後ろから鳴り響いた。


                   *


 「うっ!! 」


 気が付くとそこには人影があった。


 「ッッ誰だ……」


 相手は反応しない。目の前がぼやけていてよく見えない。


 「答えろ……ここはどこだ…」


 すると、 そいつはフッと笑い言った。


 「あいつらか……」


 あいつら? 誰だ……それは

 頭の中でぼんやりと考えるが口には出ない。

 目は少しずつ見えるようになってきた。だから、 体を起こそうとする。

 体が重い。麻薬でもかがされたのだろうか? しかし、 覚えはない。そんな短時間では無理だ。もし出来たとしても部屋にいた一緒の奴らにまで被害が及ぶはず。では一体…


 「やっと立ったと思ったらぼうっとしたままかよ」


 その言葉に反応して、 やっと相手をはっきりと見ることが出来た。

 こいつは…


 「新撰組…………近藤(こんどう) (いさみ)…」

 「知っているようだな……話が早い…」


 近藤は俺の胸倉をつかんで言う。


 「お前が気絶する前に会っていた奴らのことだ」


 だろうと思った。俺をつけてきていたという訳だ。そして、 あいつらには逃げられて部屋に残っていたのは寝たきりの俺と言うことか…

 それにしてもここはどこなのだろう。

 そして、 話を聞くのに俺を縛らなくてよかったのか?

 明るいな…時間はあまり経っていないという事だな。雨も降っていないようだった。

 それにしても埃っぽい部屋だ。全然使っていないところか…倉庫かな……


 「そいつらの組織の名は空」


 空…俺達には馴染み深い言葉だな…


 「お前はそいつらに何をされた」


 近藤は俺を睨みつける。


 「何にもされていません」

 「では何を言っていた」


 まだ近藤は俺の胸倉をつかんだままだった。それに目をやると近藤は察したように胸倉をつかむのをやめた。


 「何も…」


 チッと舌打ちをして小屋の戸を開けた。


 「もういい……終わりだ…」


 外へ出るとやはりまだ曇天のままだった。


 「あの…本当に帰っていいんですか? 」


 小屋を出て少し歩き、 振り向いて言う。


 「どうせ話さないんだろ……こっち的にも話してもらった方が楽だがな…」

 「何故北海道に? 空を追いかけてきたんですか? 」


 自分が答えないのに質問するのは失礼だが気になって仕方がない。


 「いや…部下に逃げられた…」


 気まずい空気のまま近藤は去っていった。


                   *


 「へっくしゅん!! 」


 大きな声を上げて沖田がくしゃみをする。


 「どうしたの? 風邪? それとも噂されてるのかな?」


 その横にいた子供が沖田に問いかける。


 「うるさい。一気に質問してくんな」

 「あ〜、 うるさいなんていったらいけないよお兄さん」

 「うるさいって言ってるだろ。あっち言っとけ! 」


 しっしっと子供を向こうにやろうとする。

 そして、 子供はどこかへ行った。

 近藤さん…どこ言ったんだろ……ちゃんと江戸集合って言ったのに…また、 道、 間違えてんのかな…


                   *


 ここに戻ってくるしかなかった。だって他に帰る場所がないのだもの…

 廊下を歩きながら考える。そして、 一つ思いついたことがあった。


 「木下さん…」

 「な…に…」


 木下は机にダラ〜としていた。声には力がなかった。

 そんな木下さんを見ながら、 少しの間、 考える。

 結論が出た。


 「いえ、 なんでもありません。失礼します…」


 今、 その話をしては聞き流されると思い、 ゆっくりと戸を開けてその部屋を出て行った。

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