第 拾肆話 同類
「で…何で、 重傷の俺が鍼霞を担いでるんだ? 」
「……」
久保が鍼霞を背負い、 息を切らせながら言う。久保の問いに対して周りの奴らは久保を直視しないように違う方向を向いた。
「お前ら……覚えてろよ…」
久保が低い声で言う中、 全員黙っていた。
*
空は曇天。
北海道の本部に居座っていたがそこも窓がない箱のようにそこにいると気まずくなった。
俺の「螢空」と言う能力が分かったからであろう。過去に実験をされそれを周りの人たちは軽蔑しているんだ。
そんな空気には慣れていたが長時間は居たくない。そして、 外に出た。
あれから二日経ったがまだ、 あの見た夢が頭に残っている。
神流はまだ目を覚まさない。だから、 嫌な気持ちを相談する人がいない。
ぶらぶらと歩くとどんどん暑くなってきた。湿気が多いからだろう。
もう、 あそこには帰りたくない。けど、 これと言っていくあてもない。これからどうすればいいんだろう…
何か…江戸幕府のことなんてどうでもよくなって来ちゃったな…
「螢空」
不意に後ろから声が聞こえ、 振り返る。
しかし、 そこには誰もいなかった。
誰だ……
良く辺りを見回すが道を歩いている人しかいない。
「こっち」
また声がした。振り返るが誰もいない。
すると、 後ろから手が伸び俺の口を塞いだ。
「内の部下が泣きついてきてね…代わりに私が来た」
そいつは女のようだった。口を塞いでいないもう片方の手には短剣。それを俺の腰に突きつけて続ける。
「お前を連れて行く」
俺は言われるがままに連れて行かれた。
:
「よぉぉ! 同類! お前の能力は螢空と蛇空か……」
男はいかにも偉そうな椅子に座り、 声を上げ言う。
誰なのかと問うた方がいいのか?まぁ一応問うてみよう。
「お前は誰だ…」
「俺の名前を言う前に自分から言うのが普通なんじゃねぇのか?」
いや、 こっちは連れて来られた身だぞ。俺の名ぐらい調べて置けよって突っ込みたい所だがそんな空気ではない。目の前で座っている男。強い。
「上杉 螢空。で…お前は?」
「俺の交渉に乗るなら教えてやる」
教えないのかよ。
「交渉とは……」
どうせ仲間になれとか幕府側に来いとかそういうことだろ…
「お前はそちら側の人間じゃない」
ほら。俺は嫌そうな顔をするが男は構わず続ける。
「俺はお前と同類だ」
*
「…下……長…木……隊長!! 木下隊長!! 起きて下さい!!」
いつの間にか寝てしまっていたようだった。
「ああ。どうした…」
まだ頭がぼうっとしている。夜遅くまで仕事をしているせいで寝てしまったのか……
「あの隊長が言っていた地下の通路について…」
地下の通路?ああ、あれか…
「それで?」
「その件について古松隊長以外の隊長が全員こちらに来ております」
「ああ、そう………………えっ!! 」
:
「よぉ、仕事中に寝る馬鹿」
部下の知らせで頭が平常に戻った私はちゃんと突っ込むことが出来た。
「冗談を言う状況じゃないでしょ!! 本当に地下はあったの! 」
「ああ」
包帯を巻いていた久保が答えた。どうやらその一件で怪我をしたらしい。
「今から全て説明してやる。良く聞け」
他の人たちも真剣な表情になり、 久保が地下で起こった内容を話し始めた。
*
同類だと?こいつも能力者か…
焦っている気持ちが表に出ているぞ螢空。そんな簡単に表に出していては戦略は立てられないよ。
「さっきのは嘘だ」
「さっきの?」
さっきのとは何だ。目の前の男は笑みを浮かべて言う。
「俺はお前のことは知っている。だから、 別に名前なんて聞かなくても知っていた」
じゃあ何で聞いたんだ…………そうか…こいつ俺の表情や行動を伺っていたのか。こいつ、何も考えていない馬鹿と見かけで判断したがそれも仕組まれてたのか……こいつは
俺の一言でたぶん全てを理解した。こいつは
敵に回すと厄介になる!!
二人とも同じことを思い、 そして、 男は続ける。
「お前を連れてきた女も俺も俺の後ろにいる奴らも全員能力者だ」
そいつの言うとおり男の後ろには人影があった。
「お前の知っている奴の中にも能力者はいる。お前はまだ分かっちゃいない。日本の仕組みをだから江戸幕府に反乱を挑むな。後悔するときがいつか来る」
「後悔なんてしない。俺は徳川と共に江戸城と共に死ぬ」
男は驚きの表情を浮かべた。
「正気か? 」
「そうだ」
「ならいい、 無駄に命を投げ捨てる奴なんて不要だ。だが…」
他のところを見ていた視線がこちらに向けられる。それに反応して身構える。
「お前の能力はもらっていく」
瞬間、 男が視界から消えた。いや違う。これは俺の視界が悪くなったんだ。地面がゆらゆらと揺れ、 床に倒れこむ。
「なっ…何をした……」
男が俺の前に立ち言う。
「さようなら。 上…け…く……」
*
「古松は徳川の差し金だったと言うことね…」
「ああ」
そうなると…私達の会議の内容もたぶん漏れてる。
「おい、 ひとつ気になることがある」
「気になること?」
「沖田の言葉だ」
私は意味が分からず首をかしげるすると、 説明をし始めた。
「あいつは次の時代の名前を知っていた」
「名前?」
「そう、 明治時代っと言っていた」
ふうん
そのことは少し聞き流した。
「そして、こうも言っていた。その明治時代には入ってはいけないと…」
「どういうこと?」
「まだ分からない。新撰組が何を知っているのかは……ゴフッ…ゴホッッゴホッッ」
久保が咳き込みをし始め、 横にいた上杉が久保の背中をさすった。
「無理するな。 お前の傷は尋常じゃないんだ。相手は能力者だったんだからな」
「能力者?古松が……! 」
初耳だ。さっきの話では一言も…
「久保は言い忘れてたがあいつは能力者だ。で、 種類は何だったっけ?」
「多分、 蟻だ。力が強くなる」
能力者の詳細が一気にわれるなんて……一体どうなってるの?




