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第  拾貮話  貮拾年前

 「あなたに死ぬ覚悟はあるのですか?」


 彩捺は男に対して尋ねた。


 「・・・そうだな・・・あるといえばあるが、 ないと言えばないな」

 「そうですか・・・」


 暗い口調になり言葉を続ける。


 「なら、 死の恐怖を私が教えてあげましょう」

 「こりゃどうも」


 男は瞳孔がレモン型になり、 衝撃波が彩捺を襲う。

 それを紙一重で避けて今頃になって刀を抜く。

 彩捺の刀は普通の刀と少し違う形状をしていた。木の枝の様に一本の刀から無数にのびる刃。それを右手で持ち、 空中へ飛ぶ。


 「空中では身動きが取れないと知りながら」


 男は笑みを浮かべて衝撃波を彩捺へ飛ばした。



                   *



 「どうしたのですか? 久保 之翠。ぼろ負けじゃないですか」


 古松が久保を罵り高々と笑う。


 「くそ、 反則だろ・・・それは・・・・・・」


 久保は所々に傷を負い、 口から血を出して、 自分を見下す古松を睨んだ。


 「殺し合いに反則もくそもありません」


 くそが〜あいつ、 こんなもの隠していやがるとは

 悔しそうに内心でつぶやき、 腕を使って立とうとする。

 そこにどっしりと古松が久保の頭を踏みつける。


 「痛っ・・・」


 顔の側面が地面にくっつきそうなくらい強い力だと久保は思い、 古松の足をつかみ退けようとするが力が強すぎて無理のようだった。

 くそぉ、 こいつの力には勝てねぇ・・・


 「哀れですね。地に這い蹲って死にますか?」


 げらげらと笑い久保を侮辱する。久保は最初のときよりも息がしずらくなっている事に気付いた。

 息が・・・しずらい。やばい、 頭もぼうっとしてきた・・・周りがぼやけて見える。

 くそぉ・・・苦しい、 苦しい、 苦しい。

 意識がかすれていく中、 必死で力を入れていた手がゆっくりと地面へ落ちていった。



                   *



 1627年。今から、二十年位前。

 徳川家康が江戸幕府の将軍になって24年。時代は進み徳川将軍は今、三代目の徳川家光となった。

 俺はその頃5歳くらいだった。

 まだ小さいがゆえ、 今の自分の状況は分かっていなかった。このときから剣道をやり始めたがあまり面白くなかったし、 人と接する方が好きだった。



                   :



 10歳になり剣道は人並み以上にうまいと周りには言われて、 少しうれしかった。けれど、 中には認めない奴もいてそいつには良くいじめられた。

 寺小屋にも通い、 農民よりもましな生活をしていたと思う。でも、 俺はあまり気に食わなかった。それは、 寺小屋に行くときに楽しそうに遊んでいる農民の服で同じぐらいの歳の子を見かけたからだ。その時本気で思った。

 俺も自由になりたい。

 それを父親に言うと頬を殴られ、 暗い倉庫小屋に閉じ込められた。

 暗くて、 怖くて、 何回も小屋の戸を叩いたのは今でも覚えている。

 ドンッドンッドンッ

 と叩いた音が小屋に響くのも怖くて夢中になって叩き続けた。

 頬が痛いのなんて忘れてしまっていた。



                   :



 数日後。

 食品を買いに母親と江戸の市場へ行った。人が多くて、 夏の日差しが以上に暑く感じさせる。母親を見失わないために人の波に流されないように足に力を入れて歩いた。

 買った物を少し持ち手伝った。そして、 悪夢は始まった。

 人の波が激しくなってきた。立っているだけで精一杯になり、 買った物を持っている手を広げてしまう。


 「あっ!! 」


 とっさに振り返るがもうそこには買った物はなかった。その振り返った衝撃で人の波にさらわれてしまった。


 「えっ! ちょっ! ちょっと待って! 母上! 母上!! 」


 大きな声で叫ぶが周りの音がそれを遮った。その時、


 「やばい! うちこわしだぁ!! 」


 周りがざわめきはじめいっそう人の波にさらわれる。


 「うちこわし・・・・・・」


 俺はその言葉をここ最近は全然聞いていなかった。俺はその時、頭が良くてすぐに分かった。お金を使うようになったからだ。そして、 米が値上がりして、それを買い占める奴らが出てきた。そいつらから米を売り物に出来なくするために地面に撒き散らすのだ。その時に何人もの人が殺されるらしい。理由は分からなかった。

 人の波からやっと抜け出し、 母親を探しに市場の中へ戻るとひどい有様が広がっていた。

 その時は周りを見てすぐ母親のことを考えたから状況はあまり覚えていない。けど、 死体が数体転がっていたことは覚えている。


 「お母さん・・・・・・」


 俺は愕然とした。俺の目の前には母親の屍があったからだ。目の前が真っ白になりそこに立ち尽くした。

 それからだ。俺は世の中を恨みはじめた。

 そして、 15歳になり、 江戸の隊長、 久保 之翠として全国に俺の名が行き渡った。



                   *



 1630年。


 「家康。これはどういうことかね」


 大きい机の周りに座っている男達がいる。一番堂々と座っているのは徳川だった。


 「その報告書通りですよ」


 徳川は何故か敬語で話す。


 「薩英戦争は1800年より後の予定だよ。何故それを早くしたのかね」


 男は薩英戦争と言ったがそれは、 鹿児島湾で起きた砲撃事件のことである。イギリスが勝ったとされているがこっちではどうなったのかは資料には書いていなかった。たぶん、 皆、 結果を知っているのであろう。

 そして、 徳川は淡々と答える。


 「計画は早い方が何よりでしょう。それに薩摩藩、 土佐藩、 佐賀藩等にはちゃんと行ってあります」

 「慎重に動きたまえよ、 徳川。日本のこれから先のことはお前が今から実行することで左右されるのだからな」

 「肝にめいじております」

 「・・・・・・なら良い」


 あきれたようにため息をつき言う。


 「今日はここまでにしておこう」


 その言葉を聞いたあと10分間、 席を立つものはいなかった。そして、 最初に立ったのは徳川で、 静まり返った部屋から静かに出て行った。

 そして、 残った男達は話し始める。


 「本当にあいつに日本を任せて良いのかね・・・」

 「だが、 計画を遂行するためにはあいつは不可欠だ」

 「これからの行動に気をつけないとね」

 「あの男の役目は後・・・ペリー来航と明治維新だけだ」

 「あいつは不死について調べていると噂で聞いたが? 」

 「フッ・・・」


 不敵に笑い男はこう言う。


 「家康は人の扱い方を知らんな」


 そして、 男達は全員出て行った。残していった資料の表紙には「徳川死亡」と書かれていた。

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