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第    捌話  地下

 木村が殺されてから数日が経とうとしていた。季節はもうすぐ梅雨。そのせいもあってか今日は曇天の空だった。そんな曇天の空をぼーと見ていたのは木下であった。木村が死んだと聞かされてショックを受けているようだった。隊員たちもその気持ちを察して木下をそっとしている。

 しかし、そんなことをしている場合ではなかった。いつ幕府が攻めてくるのかも分からないまま、すごしているからこそ戦闘の準備などをしておかなければならない。戦力も幕府に比べたら月とすっぽんだ。木下もそんなこと十分承知の上ではあったが木村がいなくなった穴は大きいらしい。



                   *



 「螢空!お前、傷の治りが早いな。」

 

驚きの声を上げたのは神流であった。


 「そうか。普通だぞ。」

 「いや、絶対にお前の体はおかしい。」

 「そこまで言うなよ。」


 包帯をはずす作業をしながら楽しそうに会話をする二人であったがそこへ武士達がそこの廊下を走っている音が聞こえた。


 「何があったんだ?」

 「さぁ?」


 螢空は包帯をはずし終わり、服を着る途中だった。


 「ちょっと、何があったのか聞いてくる。」


 そう言って戸を開けて廊下のほうへ出て行く。足音がどんどん離れて行き、すぐに近づいてくる。


 「おい!螢空!外へ行くぞ。」

 「何があったんだ?」

 「幕府の役人と思える奴が攻めてきてるらしい。」


 その事を聞くとすぐさま廊下に出て門のほうへ向かい始めた。


 「人数は?」

 「まだ分からない。」

 「誰なんだ・・・。」


 螢空の知っている奴が今、攻めに来ていた。



                   *



 古松籠とともに九州の武士達は窓のない道を歩いていた。道には蝋燭の光しかなく、太陽の光は微塵も感じられない。それもそのはず、古松と武士達が歩いていたのは地下だからだ。江戸時代にこんな地下道があるのなんて誰も気付きはしないだろう。

 古松はその小さい体のせいもあってか、他の武士達よりも少々疲れているようだった。

 この地下道は江戸につながっているようであった。しかし、地下道と言っても人が二、三人通れるほどの広さでしかも、酸素が十分ないため武士達も皆きつそうだった。

 そこまで地下道が狭いのは人員の問題だったのだろう。今の江戸では金を使うようになってきている。そのせいもあってかうちこわしや一揆がさかんに行われるようになり、飢え死にする人たちが増えたのである。農民の年貢あっての武士の生活なので武士も苦しんでいる。そんな中、地下に穴を掘れといわれれば、断りたくもなる。だから、徳川は役人の人々だけを使って掘らせたのだった。もちろん、古松も。



                   :



 十時間くらい経ったであろうか。まだ江戸にはついていない様子だった。武士達の額には汗がにじんでいる。やはり、九州から江戸を徒歩で行くのは想像以上にきついものであった。

 仕事が終わったら給料、倍にするよう言ってやる。

 古松は内心そうつぶやきながら淡々と足を進めて行った。

 そして、江戸に着くと広々とした空間が広がっていた。

 しかし、やっとのことで江戸についてほっとしていた時に古松は後ろから次々と武士が倒れていく音がした。

 素早く後ろを見るがそこには十数名の血を流した武士が倒れているだけで誰もいない。


 「こんなところがあるとはな・・・」


 後ろから古松の首に鋭い刃を突きたてて男は続ける。


 「お前ら俺達にどれだけ隠し事をしている。」

 「君が思っているほどです。久保 之翠。」


 そう、今、古松に刃を突きたてているのは紛れもなく江戸地区を管轄し隊長たちの中でもリーダーの役割を果たしている久保 之翠であった。


 「君は私をつけてきたというわけですか・・・」


 首に突きつけられた刃にも怯えずに古松が言う。


 「そうだ。だが、こんな場所があるとは予想もしなかったがな。」

 「久保 之翠。君は少しは頭がいいと思っていましたが期待はずれですね。」

 「別に期待なんてしなくて良い。」

 「ふふふ。そうですね。期待なんてしなくても良かった。で、私を殺しますか。」

 「ああ。」

 「九州の武士達とも戦うのですか。」

 「そうだ。」

 「笑止。君一人で何ができる。」

 「さあな。」


 古松と久保の前の武士達は全員、刀を抜き始めた。


 「だが、俺一人だけじゃないぞ。ここに来たのは・・・」

 「ぐはっ!!」


 武士達の後ろのほうで叫び声が響いた。


 「何!!」


 古松は驚きの声をあげた。


 「俺の他にも幕府に疑問を持ってる奴らはいっぱいいる。」

 「まさか!お前・・・」

 「ああ。お前以外の隊長全員連れてきた。騎覆を殺したのはお前だろう?」

 「調べたんですか。まぁ良いです。この地下で君達は死ぬんですから。万が一出られたとしても君達はお尋ね者になります。」

 「それはどうかな。お尋ね者になるのはお前のほうかもしれない。」



                   :



 「おいっ!ここ埃っぽいぞ!」

 「うるさい!」

 「ハゲは黙れ。」

 「ハゲじゃなねぇよ。てめぇから斬るぞ。」

 「おおやるか。」


 口げんかをしているのは鍼霞 叶ともう一人はあの会議にはいなかった奴。

 名前は櫂坐(かいざ) 婆既(ばき)。近畿地方管轄・隊長を勤めている奴だ。体格は力強く筋肉ががっちりとしている。

 櫂坐以外は会議に来ていた人と同じだ。そこにいないのは久保と古松と木下だけだった。まぁ久保と古松は武士達を倒していけば時期に会えるだろうが。


 「けんかをするな。早く片付けるぞ。」

 「おい、その人数で俺達に挑もうってか?ふざけるなよ。」


 声を出したのは武士達だった。


 「ふっ。俺達とお前達が同等と考えるなよ。俺達とお前達の差は月とすっぽんだ。」

 「何だと?なめるなよ。全員でかかれ!!」

 「おお!!」


 武士達が走ってこちらに近づいてくる中、隊長等は笑みを浮かべて刀も持たずに突っ立っているままだった。

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