第 漆話 銃
「木村。久しぶりですね。」
「どこに連れて行かれるのかと思いましたけど、あなたの仕業だったのですか。古松隊長。拷問でもする気ですか?」
「そんな手荒なまねはしたくないんですがね。まぁ、答えによればそういうこともします。」
「で、何がしたいのですか。」
「単刀直入に言います。あなたはどちら側につくのですか?」
「どちら側、と言いますと?」
「幕府側か、反乱側か?」
「そこまでお気づきでいらっしゃいますのに何故攻めてこないのですか?」
「質問しているのはこちらです。その後にでも答えてあげましょう。」
しばしの間、考え込み古松に質問した。
「私がもし反乱側と言ったらどうなるのですか?」
「命の保障はできません。」
「幕府側といえば?」
「あなたには間諜をしてもらいましょう。徳川様はすぐに処理しようとしていますが私はそこまでしなくて良いと思っています。反乱側を誘導させて、負け戦にしてしまえばいいのです。」
「そんな条件を私が飲むとでも?」
「あなたは頭がいいはずです。反乱など無駄と言うことは分かっているはず。」
「私が裏で裏切るようなことがあればどうするのですか?」
「あなた達のところにはもうすぐ間諜を送ります。あなたの様子もその間諜を通して把握します。と言うか、あなたはそんなことまで聞くのですからそんなことはしないのでしょう。」
「わかりました。そちら側につきましょう。で、私は今から何をすれば・・・。」
「情報提供をお願いします。」
「分かりました。では、失礼します。」
戸を開けて出て行った木村を少しばかり見て部下を呼び出した。
「木村があっちについてから、一週間でそこを襲撃してください。そして、わざと負けてあなたは木村を見張ってください。蔵沢。」
「はい。」
*
「木村!!あなたそんな仕事してたらいつか殺されるわ!」
声を張り上げたのは木下だった。
「声が大きい。大丈夫、まだやれるさ。」
「情報管理部にでも知られたら終わりよ。ましてや、幕府側に知られても!」
「君には関係ないだろ!俺はこの手で真実をつかむんだ。そのためならどんな事だってやってやるさ。」
「何でそこまで幕府の真実にこだわるの!」
「君には関係ない!」
思いっきり机をたたきつけて椅子の上から腰を上げた。
「俺達武士や隊長を動かしているのは徳川じゃない。もう一人のある人物だ。」
「ある人物?」
木村は部屋を出て行った。
木村と木下の会話を隠れて聞いている奴がいた。
:
「やはり木村は裏切っていましたよ。二重間諜です。」
「良く働いたがこれまでだな。駒がまた一つ減るな。古松隊長はどうするおつもりなんだろうか。」
「気付かれる可能性がありますので。ではまた。」
*
「木村殿が資料を持って逃げ出しました。」
「資料?」
「情報管理部が預かっていたものです。それと木村殿は幕府の間諜を勤めていたことも分かりました。」
「不死の資料か・・・。」
「木村殿は見つけしだい連行。抵抗するようであれば殺害します。」
「でも、それは二重間諜をやっていただけで・・・。」
「こちら側の情報も教えていた可能性があります。」
「だから、なんとしてでも殺害じゃなくて、連行してちょうだい。」
「分かりました。みつけしだい、必ず連行します。」
*
ハァハァ
一生懸命に走っていたのは木村であった。左腕には銃で撃たれた後があった。血が流れてそれが目印になっていた。
路地の壁に追い詰められて逃げ場を失った。
「そこまで火縄銃が小さくなっていたとは・・・・・。」
男は黙って銃を木村に向ける。
「はは・・・・・・早く、殺せ。」
バンッ
床に倒れこんだ木村を見下して、言った。
「幕府に関係があるものは皆殺しだ。」
男が去っていった後に少し意識があった木村は口を開いた。
「ふざけるな・・・・・・くそっ・・・・・・やっと分かった・・・ってのに・・。」
*
「木村を殺してきました。古松隊長。」
「九州に帰る前によってみて正解だったね。」
「徳川の言うとおりになさるおつもりですか?」
「今のところわね。まぁそのうち裏切るよ。」
「木村の死体はそのままでよろしかったのですか?」
「大丈夫だよ。僕がまたここに来たときには殺されるわけだし、そこまで考えなくてもいいよ、該裡。」
古松の前にいたのは十代くらいの女であった。
「じゃあ帰ろうか。九州へ。」
「はい。」
*
「木村殿は見つけたときには亡くなっておりました。」
「死んでいたの・・・・・死因は?」
「銃で撃ちぬかれて大量出血が死因だと。」
「銃!銃なんて今は手に入らないんじゃ。」
「裏ではそうじゃないのかもしれません。」




