新卒君の行く先は
初出勤です。よろしくお願いします。
8月上旬。新卒君は正直な思いを伝えた。
「僕、もうこの仕事辞めたいです」新卒君が泣きながら課長君に言った。
「まだ入って5ヶ月しか経ってないよ」
「それでも辞めたいんです」
新卒君は疲れていた。職場の人間関係にしても、仕事にしても。これくらいの業務もできないと、今後やっていけないよと、係長君と主任ちゃんに割り振られた業務が全くできなかった。新卒君には荷が重かった。
「とりあえず3年経ってから考えてよ」
とりあえず3年。誰がこの風潮を作ったのだろうか。新卒君にとって3年後とは何なのか。何も想像がつかなかった。
「この話、聞かなかったことにするから」
「待ってください」
「僕も仕事あるから。じゃあ頑張って」
課長君にお願いして、面談場所として予約した小さな会議室から、課長君が出て行った。その姿を呆然と見ていたが、仕事に戻らないと・・・と思い直し、職場に戻ろうとする新卒君の足取りは、足枷が付いているかのごとく遅かった。