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ファイの約束

「会いに行かなくていいのか?」


ファイが目覚めたと報せが届き、てっきりすぐ駆けていくだろうと思っていたロゼはムッツリして飲み物を飲んでいる。


「ファイなんて知らない!!少しは頭を冷やせばいいのよ」


「あはは!反省するかな?ファイだよ?」


向かい側にはステラとカイル、そしてリュナが座っている。

そしてロゼは膨れている。エルディはそんなロゼの頭を撫でた。


「ちょっとそこ!すぐイチャつかない!!どうせ怒ってるロゼも可愛いなぁとか思ってんでしょ!そこの魔人!!」


いきなりリュナに絡まれエルディはロゼから手を離した。

ロゼは「え?」とエルディを見て赤くなっている。


「おい。あまり絡むなよ。コイツは魔人の中でもまだ自制できてる方だと思うぞ?」


「何それどんだけなのよって・・・・・・・ファイ?!」


振り向くとそこにはいつもと変わらぬファイが居た。

ロゼは慌ててそっぽを向いた。


「お前がステラか?私を助けてくれたんだよな?ありがとな!」


満面の笑みで微笑まれステラは顔を赤くした。何だろうこの人可愛いのにカッコいい。

隣のカイルがジト目でステラを見ている。

彼女の考えている事などお見通しである。


「そんな・・・・でも元気になって良かったです、ファイさん」


「ファイでいい。敬語を使われるの好きじゃないんだ。で?お前がステラの相棒か?」


「カイルだ。よろしくな」


エルディはそんなやり取りを呆れた様子で眺めた後、ロゼをチラリと盗み見た。

物凄い膨れっ面である。

エルディはいけないと思いつつも我慢出来なかった。


「・・・・諦めろロゼ。アイツは反省などしない。素直に巻き付いてこい」


「何よそれ?!私はそこら辺の大蛇じゃないわ!!」


笑いを堪えて指摘するエルディにロゼは腹を立てた。巻きつくって何だ巻きつくって。


「はいはーい!だからそこ!イチャつくなっつーの」


今日はリュナがやけに絡んでくる。ファイはロゼの隣に腰掛けるとロゼを自分に引き寄せた。反射的にファイにくっ付きそうになりロゼは堪えた。


「妬くなよ。お前はそんな事よりサッサとルシフェルと仲直りしろ」


みんなの前で爆弾を落とされたリュナは思わず口をパカリと開けた。薄々気づいていた皆は一斉にリュナを見た。


「何だ?お前達いつからそういう関係なんだ?」


エルディが真面目な顔で尋ねるのでリュナは思い切り否定した。


「違うわよ!私もアイツもそんなんじゃないし!アイツは私をからかって遊んでるだけなの!!」


リュナの弁解にエルディは不思議そうな顔でそれを否定した。


「からかう?どの程度の事かは分からないが、それは無いと思うぞ?魔人は一途だと知ってるだろ?」


その言葉でその場は一瞬沈黙が落ちた。

ロゼは自分が怒っていることも忘れエルディにたずねた。


「え?どういう事?」


その質問の意味が分からなかったのかエルディは首を傾げた。


「どういうとは?だからルシフェルが冗談で女性に手を出す事など無いと言ってる」


皆更に混乱した。リュナは目をまん丸くしたまま固まっている。


「アイツも魔人だからな」


エルディの爆弾にファイはニヤリと笑った。


(私は何もしてないぜ。ルシフェル)


「「「「ええええええええええええええええええ!!!!!」」」」


皆の驚き様にエルディは眉を潜めた。

エルディは最初から彼が自分と同種族だと気付いていた。


むしろ自分よりも付き合いの長いロゼ達が知らないとは思っていなかったのだ。


ファイがリュナに目をやるとその顔が見る見るうちに赤くなるのが分かった。

恐らく。今までのルシフェルの行動を思い出しているのだ。


「・・・・・もしや、まずかったか?」


「いや。お前今日一いい仕事したわ」


満面の笑顔のファイをロゼは複雑な顔で見ている。ファイはやっとロゼと目を合わせると、いつもの様に笑って言った。


「ただいま。ロゼ」


ロゼはファイのその言葉に胸が一杯になった。


「おかえりなさい。ファイ」


そしてファイは狡いと、やはり少し腹を立てた。



****



「サナ」


サナはラーズレイから少し離れた森の中に居た。

ファイは何事も無かったかの様にサナに近寄って行く。

サナはファイを見なかった。


「もしかして。もう嫌いになった?」


ファイが聞くとサナの肩が僅かに動いた。

それでもまだこちらを向かない。


「何故俺の居場所が分かった?魔人の気配はもう追えない筈だ」


「いや。むしろ今の方が感覚が研ぎ澄まされてるから気配を追いやすいんだよ。お前の気配をずっと追って生活してたんだからな。実際は騙されてたけど」


正体を隠して近寄って来たシャイアにファイは最初気が付かなかった。だが、そのサナとも長い時間を過ごしてきたのだ。サナの気配も追える。


ファイはその森が使い込まれた場所だと気付いた。

恐らくシャイア達が使っていた場所だろう。


「俺達は魔人に捨てられた者だ。魔人にも人間にもなれない。中途半端な存在だ。俺達に故郷なんてない。ただ、死ぬまでひっそりと人間に紛れて生きていく。目立たない様にな」


「そうか」


二人は空を見上げた。

空は晴れわたり森の木々は美しくキラキラと光を反射している。ファイは空を見上げたまま彼に尋ねた。


「私と家族になるか?」


それはファイが口にすると、とても違和感のある内容だった。冒険者として外で暴れているその姿しか彼は知らない。


「子供は、多い方がいいな。育児と仕事は交代でしようぜ。ベルグレドに頼んでガルドエルムに土地を買ってさ。きっとロゼ達も遊びに来るから家は大きくしないとな」


それは夢だ。ファイの夢。


「それで出来れば皺くちゃの婆さんになるまで生きて、好き勝手して皆んなを困らせるんだ。シャイアと一緒に」


ファイはシャイアに目を向けた。

そこには黒髪の美しい男性が立っていた。


「・・・・お前は、本当に・・腹が立つ女だ」


「うん。シャイア」


シャイアに抱きしめられながらファイは決めた。もう二度と彼を一人にしないと。


「約束する。もう、二度とシャイアから離れない」


ファイも彼を強く抱きしめ返した。


「ありがとう。シャイア。私を愛してくれて」


出会ってから12年。二人はやっとちゃんと再会する事が出来た。そしてもう離れ離れにならなくてもよくなった。

この日二人は一つ夢を叶える事が出来たのである。

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