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ファイの行方

ロゼはその夜眠れぬ夜を過ごしていた。

窓際でずっと外を眺めているロゼの隣にエルディが座る。


「大丈夫か?」


エルディが声を掛けるとロゼは正気のない目で彼を見上げた。

エルディは思わず彼女を抱き寄せた。


「大丈夫だ。きっと間に合う」


しかし未だにファイの居場所は分からない。

エルディは考えながらふとベルグレドを思い出した。


「ガルドエルムの道はまだ使えるか?」


各地にあるルシフェルが作った近道である。ロゼは頷いた。


「もしかしたらエリィが何か分かるかも知れない。行ってみるか?」


エルディの提案にロゼは立ち上がる。


「今から行くわ!いいでしょう?」


もう夜も遅い。しかしエルディは頷いた。


「だがエリィは起こすなよ。もう寝てるだろうからな」


そんなエルディにロゼは抱きついた。

エルディはそんなロゼを抱き返し頭を撫でてあげる。


二人が外に出ると、どこからかサナが現れた。


「こんな時間に何処へ行く?何か分かったのか?」


「一度ガルドエルムに行く。何か手掛かりがあるかも知れないからな」


「では俺も付いていく」


ロゼも顔色が悪いがサナも負けていない。エルディは溜息をつく。


(本当に周りを振り回す奴だな。アイツ)


ロゼが何も言わないのでエルディが代わりに頷いた。

3人はその夜ガルドエルムに向かった。




一方その頃。ベルグレドはいつもの様にエリィとオルファウスに挟まれながら眠りについていた。

するといきなりエリィがガバリと起き上がる。


「エリィ?」


しかしやはり眠いのか、うとうとしている。

ベルグレドは身体を起こしてエリィを抱っこすると部屋を出た。

そして庭に出ると呆れた顔で客人達を迎え入れた。


「その様子だと。只事では無い状況ってとこか?」


そこには顔色が悪いロゼとサナ、そしてエルディが立っていた。


とりあえずベルグレドは三人を中に通した。


「・・・・・それは、確かに緊急を要するかもな。」


ベルグレドは話を聞き、そう言いながらウトウトしているエリィを見る。


ロゼは、少し冷静になった。


「ごめんなさい。私ちょっと焦って周りが見えていないのかも」


そんなロゼにエリィは目が開けられないまま手を伸ばした。ロゼはエリィを抱っこすると頭を撫でてあげる。


「・・・オルファウス・・・・・ファイの、最期を教えて、あげて」


「最期?」


エリィの呼びかけに、オルファウスが進みでる。


[彼女は貴方達の使命を伝える者。前世の記憶を引き継いだまま、その使命を果たすべく繰り返し生まれ変わります。今迄、必ず最後まで生き残り皆の死を見届けて来ました。そしてその後必ず向かう所があります]


オルファウスの話をロゼは呆然と聞いていた。

ファイがそんな使命を背負っていた事など、全く気付けなかった。

そして次に来るオルファウスの言葉に身構えた。


[ドワーフ国です。そこの火山口に私達はいつも向かいます]


三人は何故そんな所にファイが行くのか分からなかった。しかしハッとサナは立ち上がり、よろめいた。


「まさか・・・・・身を投げるのか?」


それを聞いてロゼは呆然とサナを見てオルファウスを見た。オルファウスは、否定しなかった。


[彼女の身体に秘められた魔力の素は、あの山に力を与え、その後千年以上ファレンの地盤を支える力となります。それが、残された彼女の最期の役目です]


エルディは震えるロゼの身体を支えた。エリィは必死に寝ないように頑張っている。


「じゃあ。ファイはそこに居るんだな?」


[恐らく。最終的にはそこへ向かうでしょう]


それを聞いてロゼは限界を迎えた。エルディはエリィをロゼから離すとベルグレドに渡した。そして崩れ落ちたロゼを抱き上げる。


「すまない。ここが限界らしい。サナ、お前も今日は休め。明日ドワーフ国に向かう。夜遅くにすまなかったな、ベルグレド」


オルファウスにもお礼を言って、部屋を借りたエルディは黙ってロゼとベットに入る。ロゼはずっと震えたままだ。エルディはそんな彼女を抱きしめた。


「ロゼ、そんなに怯えるな。助けたいのなら前だけ見ていろ」


「私、思い出せないことがあるの。でも、思い出したくない」


ロゼは助けを求める様にエルディにしがみついた。


「それを思い出したら、私自分を保てなくなるかもしれないわ」


ロゼの言葉にエルディは笑って彼女のおでこに口付けた。


「そうなったら俺がお前を連れ戻してやる。安心しろ」


「・・・・・・エルディ」


エルディはロゼが自分と出会った頃の記憶を失っている事を知っている。

エルディも、その当時の記憶は一切覚えていない。


「明日は朝早いぞ。早く寝ろ」


ロゼはエルディの言葉に無理矢理目を閉じた。



* * * *



「ファイ。本当にやるのか?」


マルコはウンザリとした顔をしている。ファイは満面の笑みで頷いた。


「俺、多分シャイアに殺されるな」


しかし彼はそれほど嫌そうでもない。彼はシャイアにもう時間が残されていない事を理解していた。


「悪いな。付き合わせて」


「本当だよ。万が一助かったら倍返ししろよ」


マルコは項垂れて横にいる人物を見た。


「ごめんなおっちゃん。かなり騒がしくなると思うけど」


「お前にはいつも辛い役目を押し付けてきた。これくらいは構わないわい」


ファイはガゼルに抱きついた。ガゼルはそっと抱き返した。


「私が死んだら必ずここに落としてくれ。頼んだぜおっちゃん」


「ああ。わかっておる」


ガゼルは返事をし、そうならなければいいと心の底から願った。





「大丈夫なのか?」


エルディはだんだん弱っていくサナを不審に思い、声をかけた。サナは薄っすら汗をかいている。


「・・・・お前」


三人がドワーフ国に入国し船を降りた瞬間に彼は現れた。


「酷い有様だね」


サナの様子にロゼの顔色も変わる。今にも襲い掛かりそうな二人にエルディは前に出た。


「ファイは?」


「宮廷奥に・・・サナ。お前を待ってる」


「サナはシャイアの居場所を知らないわ。無駄よ」


ロゼの言葉にマルコは呆れた顔でサナを見た。


「この後に及んでまだ隠してたの?」


「黙れ」


ロゼは思わずサナを見た。彼は苦しそうに胸を押さえている。ロゼは目を見開いた。


「ま、さか」


その隙をついてマルコは一気にサナに飛び込み彼を思い切り突き飛ばした。エルディは咄嗟にマルコを掴もうと手を伸ばし、失敗した。彼の姿が消えたのだ。


ロゼは呆然とあり得ない名を口にした。


「貴方、シャイアなの?」


言われた本人は呆然と座ったままになっている。


「・・・・サナ?」


エルディは、彼の顔色が良くなったことに気が付いた。しかしその顔は穏やかでは無かった。

サナは悔しそうに地面を殴り付けた。


「心臓を強制的に返された!もう許さない。邪魔する奴は誰であろうと殺す!!」


余りの殺気に周りの通行人達がサナから離れる。ロゼも事態を理解し焦った。


三人は地下宮廷に向かい走り出した。


城に入ると入り口に、この国の王ガゼルが立っていた。

その顔は、暗い。


「ガゼル!ファイは何処!」


ロゼは挨拶すらせずガゼルに詰め寄った。ガゼルは宮廷の奥にある扉を指差した。


「ロゼ。もしファイが死んだら儂はお前が何と言おうと彼女を火山に落とさなければならない」


ロゼは信じられない気持ちでガゼルを見た。彼は最初から分かっていたのだ、だから。


「ファイを救ってくれ。ロゼ」


駆け出すサナの背中を追いながらロゼは必死に考えた。

どうすればいいのか、その答えがロゼにはわからなかったのだ。


(どうしよう。どうすれば・・・・・)


痛む頭を押さえながら彼女は必死にファイのもとへ駆けつけた。

そして、見つけた彼女は・・・・・・。


「こ、れは、一体どうゆう・・・・」


エルディは予想も出来なかったファイの姿に思わず呟いた。サナはすでにしゃがみ込みファイを覗き込んでいる。


「・・・・・・フ、ファイ?」


ロゼがファイの顔を見るとファイは笑った。いつもの様に。


「な、んだよ。ぞろぞろ、と。騒が、しい」


彼女の身体は酷く焼けただれ酷い有様だった。心臓を抜いた瞬間に抑えられていたパメラの黒魔術の呪いが蘇ったのだ。


「間に、合ったんだな?良かった、返せて」


「まだ死ぬな。シャイアに会わずに死ぬつもりか?」


ファイはサナの言葉に微笑んだ。ロゼは、その顔を見て衝撃を受けた。ファイのそんな表情をロゼは初めて見たのだ。


「お前も、シャイアも、同じだろ?私の、愛した男だ」


「ファイ。お前、いつから・・・・」


ファイはサナに頭を撫でられたあの時、彼がシャイアだと確信した。ファイは昔から彼に撫でられるのが大好きだった。


「ファレンは、イントレンスに、眠っている」


ファイはロゼに手を伸ばした、ロゼは震える手でその手に触れた。


「空から、啓示はやってくる、それが門を、開く合図だ。中に入って、ファレンを倒せ」


ファイはこれを伝える為にこんな事をしたのだと、ロゼにはわかった。

ロゼの瞳から止めどなく涙が溢れ落ちる。


「ファイ。どうしたらいいの?どうしたら・・・・・」


「アーシェ」


ロゼは驚いてファイの視線を追った。その先には、エルディしかいない。


「・・・・・なんだ」


「ロゼを、最後まで、任せる。責任を、とれ」


ファイの瞳が段々と光を失っているのが分かる。ロゼはその現実が受け入れられなかった。


「嫌よ!!!!ファイ!お願い、諦めないで!こんな終わり方は嫌!!!」


「シャイア、私の事は・・・忘れろ。まだ、引き返せる」


サナは何も言えず何も出来ず彼女の手を握った。

彼女を助ける手段は、ない。


「ロゼ。そんな、に、泣くな。私は、結構、まん、ぞ、く・・・」


ファイの体から徐々に力が抜けていく。

ロゼは叫んだ。


「嫌!嫌!嫌々いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!だれかぁぁぁぁぁぁ!!!!」


ロゼは今迄、誰かの助けなど呼んだことがなかった。

彼女達を助ける者など誰もいなかったからだ。

彼女は絶望の中、それでも誰かに縋らずにいられなかった。

その叫びは誰にも届かない。そう、思われた。


「・・・・・・・・・・ロゼ?」


三人は目を疑った。


「え?・・・・これはどういう状況?」


先程まで居なかった筈の人物が何故か突然三人の前に現れたのだ。


その一人がファイに気が付きサッと手をかざす。


「ス、ステラ。・・・・ネオン」


そう。現れたのはラーズレイに居た筈の、ステラとネオンだった。

ステラはファイに回復魔術をかけつつネオンに声をかけた。


「ネオン!妖精の力を借りれるかな?出来ればネオンの歌声も欲しい」


「みんな!出てきて!ファイを助けたいの!」


ネオンの掛け声と同時に物凄い数の妖精が集まってくる。サナもそれを呆然と眺めている。


「あーーーかなり心臓が弱ってるけど。この黒いのは呪いかな?消しちゃっても大丈夫なやつかな?」


ステラがいつもの様子で聞いてくる。サナはすぐに返答した。


「ただの攻撃魔法だリバウンドはない」


「そうなんですね!それなら行けそうです!」


ステラの掛け声と共にネオンが歌い出した。

すると物凄い勢いでステラから魔力が湧き上がり彼女の光がファイを包み込んだ。三人はその驚くべき回復力に息を飲んだ。


ファイの身体はあっという間に元に戻り傷口が塞がっていった。そして生気のない顔に血色が戻ってきた。


サナは愛しい彼女が死の淵から生還する様子を夢を見るような気持ちで見ていた。


ネオンの歌が終わりステラが手を止める頃にはスヤスヤ眠る元気そうなファイが三人の前にいた。


ステラはプハァと尻餅をついた。


「つ、疲れた。本気の回復魔法は久々だったからぁ」


役目を終えた妖精達は嬉しそうにファイの上を飛び回っている。ネオンは笑ってステラを起こそうとして、ふと傍のロゼを見た。


「ロゼ?大丈夫?もう、ファイは治ったよ?」


「・・・なおっ・・た?」


焦点が合ってないロゼを心配してステラはちゃんと説明してあげた。


「えっと。止まりそうな心臓を健康な状態に復活させて、ファイさんの身体にまとわりついてた黒い霧を浄化しました。あれが心臓に絡みついてたから死にそうになってたので・・・まずかったですか?」


ステラの説明に三人ともキョトンとしている。

そんな事できる者など。聞いた事がない。


「あ、あれ?ロゼには言いませんでしたっけ?私の回復魔法は企画外みたいなので外で使うのを禁じられてたって」


平然と言ったステラを見てロゼはファイの頬に手を置いた。温かい。


「・・・ステラ」


「はい?何でしょう?」


ロゼに呼ばれてステラはやや緊張気味に返事をした。何か気に入らなかったのだろうか。


「ステラ!!!ネオン!!!」


次の瞬間ロゼはステラに巻きついた。

ステラはびっくりして目を白黒させている。


「は?え?ちょ?ロゼ?」


「本当に、助かったぞ。二人とも」


エルディは声を出せないロゼの代わりにその言葉を伝えた。


「正直、もう駄目かと思ったんだ。感謝する」


サナ、もといシャイアはこれが彼女達の力なのだと納得した。運命を自分の力で変えることが出来る者達。


その力がこの世界を救うのだと。

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