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神々への怒り

それからさらに数日後。

ファイはガルドエルムの街中で珍しい人物を発見した。


「なんだ。お前さんここにいたのか?」


人間族に紛れてドワーフ族が歩いていればすぐにわかる。周りの人間も物珍しそうに彼を見ている。


「ノゼスタじゃん?何してんだ?」


「なんじゃ。何も聞いてないのか?と、いうことはロゼはお前さんの事知らんのか?」


「って事はロゼがここにいるんだな?」


どうやら、いつの間にかロゼがガルドルムに来ていたらしい。ファイはもたもたしていた自分に嫌気がさした。


「一時的にな。どうやらこの国に手を貸してやるらしいぞ?儂も手を貸してくれと頼まれたからきたんだが」


「じゃあ暫くの間、ロゼはここに滞在するんだな?」


「またロゼに隠し事か?」


ノゼスタは呆れた顔をしている。

ロゼがファイを探していた期間ノゼスタは何度かファイと顔を合わせているがファイに言われロゼにその事を黙っていた。リュナもそうだ。


「・・・ロゼに知られると面倒な事だ。私がここにいる事は言わないでくれよ」


「まぁ構わないが。たまにはドワーフ国にも顔を出してやれ。王がお前が来るのを楽しみにしているぞ」


「お?おっちゃん元気か?」


一国の王をおっちゃん扱いするファイにノゼスタは嫌な顔をするどころか嬉しそうに笑った。


「元気すぎて困りものだわい。だから相手をしてやってくれ」


ファイはドワーフの王に気に入られている。ファイも気さくな王に好意的である。


「そうだな。今はまだ無理だけど、その内必ずと伝えておいてくれるか?気長に待っててくれと」


ファイの言葉にノゼスタは手を上げ去って行く。時間らしい。


ファイはノゼスタを見送るといつもの隠れ家に戻って行く。中にはリュナが旅の支度をしてファイを待っていた。


「なんだ、行くのか?」


「うん。ロゼ達が来たみたいだから。私行くわ」


そんなリュナにファイは頷いた。


「会っていかなくてもいいのか?」


「避けられてるもん。それに、私もまだ、どんな顔して会えばいいのか、わかんないしね」


二人は笑うと、そのまま手を振って別れた。リュナもロゼ程ではないが付き合いが長い。それに事情を聞いているので止める気にはなれなかった。


出て行ったリュナを振り返る事はせずファイはソファーに腰掛けた。自分もここに居たらロゼに見つかってしまうかも知れない。どう動くべきか考えていると部屋のドアが再び開いた。ファイが振り向くとそこには複雑な表情のルシフェルが立っていた。


「お前。本当に、探すと見つからないのに・・・・」


項垂れるルシフェルにファイは冷たく問いかけた。


「さっきまでリュナが居た。会ったか?」


ファイの言葉にルシフェルは顔を歪ませた。そして顔を伏せた。


「いや、ここでは見かけていない」


「お前。本当に救いようがねぇわ」


ファイになじられてルシフェルは笑う。彼本人もそう思っているのだ。


「リュナ。何か言っていたか?」


「自分で聞けよ。私は何も教えない」


そんなファイの向かい側にルシフェルはドカリと腰掛けた。心底疲弊している様子だ。ファイはそんな彼を睨みつけた。


「・・・言っただろ。最後まで諦めんな。ハッキリ告げられるまで」


「お前、俺があいつに何したか聞いたんだろ?もう無理だ」


ルシフェルは両手で顔を覆っている。ファイは深く息を吐いた。


(あーーー面倒くせぇーーー)


ファイだってシャイアの事で一杯一杯である。それなのに他人の色恋沙汰を助けている場合ではない。場合ではないのだが。


「じゃあ最後だと思ってお前の気持ちを打ち明けて来い。それで駄目なら駄目なんだろ。諦めろ」


「・・・・お前。他人事だと思って・・・・・」


ルシフェルが忌々しげに言ったのでファイは笑った。


「他人事だ。だけどこのままだとリュナが気の毒過ぎる。お前と違ってアイツは女だからな。傷物にされて無責任に放り出されたら堪らないだろうな」


ファイの言葉にルシフェルの顔は真っ青になった。あまりの顔色にファイは眉を寄せた。


「お前を一方的に責めてるんじゃねぇよ?まぁ、リュナにも非はあったんだろ。お前の立場だったらなら、まぁ傷付く。だだ、リュナはお前の気持ちを一切知らない。だからこうなったんだろ?」


冷静に状況を説明するファイにルシフェルは短い息を吐いた。ルシフェルはそれには納得していないようだ。


「リュナに非はない。全て俺が悪いんだからな」


(駄目だこりゃ)


ファイは頑になってしまっているルシフェルにお手上げだ。これは駄目かも知れない。


「それでも、決定的なその一言を、俺はアイツの口から聞きたくないんだ」


「うぜぇ!そのままリュナに捨てられちまえ」


ファイはとうとう我慢出来ずルシフェルに暴言を吐いた。

そんなファイにルシフェルはやっと笑った。


「で?お前達なんで戻って来たんだよ?ベルグレドを助ける為か?」


全く違う話を始めるファイに、ルシフェルは内心感謝した。ファイは雑に見えて、とても繊細に人の心の機微を感じ取れる。これ以上はルシフェルの負担になると分かっているのだ。


「そうだな。どうやらこの国の王の娘が行方不明になったらしい。その王女を助ける為に戻って来たらしいんだが。話が大きくなっていてな、結果この国を助ける事になった」


何だそれは。意味が分からない。


「どうも、彼女はベルグレドやこの国を守る為に魔人と戦い、その身体を失ったらしい。今、彼女はガルドルム神の祭壇に居る様なんだが、そうなった原因がこの国の成り立ちにあるらしいんだ。加護に近い魔法、祝福が問題になっているらしい」


「・・・・バルドは人間じゃないからな。ガルドルムが人間を見限ってもおかしくはない。元々ここは人間の為の国だ。まぁ、そもそも神々の喧嘩に巻き込まれたのは私達だからな、アイツらにキレられる言われは無い筈なんだが」


ファイが訳の分からない事を言い出したのでルシフェルは頭が混乱した。しかしファイは構わずに話を続ける。


「本来。この国は人間族全てが暮らしていた、人間の為の国だ。ここはファレンガイヤに作られたファレンガイヤとは別の大地だ。無理矢理作ったんだからこの地は大地との繋がりが脆い。その為に祝福が必要なんだよ。この大地をファレンガイヤに繋ぎ止めておく為にな」


ファイの説明にルシフェルは口を開けた。何故ファイがそんな事を知っているのか訳が分からないのだろう。

彼はファイの使命を知らない。


「そして、その祝福はこの世界の終焉の時にも大量に必要になる。それを、この世界に、ファレンに与えるのが私達人間族の役目だからな」


「・・・ファイ、お前・・・・」


ルシフェルが答えを求めている。ファイはこの辺りでそろそろ言おうと決めていた。


「私の役目は私達が何をすべきかを神の御子に伝えることだ。そして、その記憶をもってまた生まれ変わる事。私には前世の記憶がこの身に残っている」


ファイの告白にルシフェルは絶句した。このタイミングでしかもルシフェルにそんな大事な事を打ち明けたファイを信じられないという目で見た。


「訳あってまだそれをロゼに伝えられてない。ロゼの記憶にも関係する事だ。あの時の真実を思い出してロゼが耐えられると分かるまでもう少し時間が欲しい」


「何が一番問題なんだ?」


ファイは考えた。ロゼは何がショックで記憶を失ったのか。それが実はファイにも分からないのだ。だだ、彼女の記憶は母親が死ぬ前から無くなっている。つまり母親ではないかと思ってはいる。


「それがわかれば苦労はしてねぇよ。心当たりがあり過ぎて1つに絞れねーんだ」


「あえてあげるなら?」


「ロゼの母親。村を襲ったパメラ。もしくはアーシェ」


ファイの最後の言葉にルシフェルは立ち上がった。


「アーシェ?お前、アーシェといったか?」


「何だよ聞き覚えあるのか?」


「それは、エルグレドの本当の名前だとロゼを生き返らせた者が言っていた」


生き返らせた?


今度はファイが立ち上がった。


「どういう事だ?生き返らせたって何だよ?ロゼに何があった?!」


そう問われ、ルシフェルはまだその事をファイに言ってなかった事に気がついた。ロゼが一度死に、エルグレドと共に不老不死になった事を聞いたファイは烈火の如く怒り出した。


「何故止めなかった!!そこまでしてロゼを生き返らせてその後のことを何も考えなかったのか!!」


ファイのその言葉にルシフェルは驚いた。ファイならば、きっと同じ選択をするはずだとルシフェルは思い込んでいた。


「永遠の命なんて・・・そんな呪われたものアイツに背負わせたのか!!」


その苦しさをファイは身をもって知っている。

何も言い返せないルシフェルの胸ぐらを掴みファイは項垂れた。そしてその心の中は神々に対する怒りが溢れていた。ファイはパメラの気持ちがよく分かる。


(余計な事しやがって!!肝心な事は何もしない癖に!)


ファイはこんな世界滅びてしまえばいいと、ずっと前から思っていた。

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