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5月20日(火)クラスの人間模様も少しずつ出来上がり、休み時間には大なり小なりのグループが出来上がっていた。
俺はというと、クラスの変わり者の浜田 翔と過ごしていた。
こいつは割と顔はかっこいいのだが思ったことをズバズバ言う性格ゆえみんなから敬遠されていた。
多分こいつも俺同様にあぶれたから、二人でここにいるのだろう。
「なあ、ハマショウよ! なぜ俺達はみんなのようにワイワイできないのだろうか?」
「知るかよんなこと! 大体群れたところで楽しくなんかねーだろ?」
「いや、群れる以前に仲間に入れたことねーからわからないっていうね」
周りを見渡すと楽しそうに会話している者達が大多数だ。
俺もこんな体質じゃなかったら、みんなと普通に仲良くなれてたのかな?
そんなことを思っているとまた涙が出てきた。
「おい悟! また泣いてるじゃねーか」
「お前には説明しただろ!? 体質なんだって」
「わかってるって、それにしてもお前そんなに泣いてて疲れねーの」
そりゃもちろん疲れる。まあ1日中泣いているわけではないのが救いではあるが。
「悟!お前が泣く時ってなんか決まってたりすんの?」
「いや、特にないんだよな。いつの間にか泣いてる」
俺はどんな場面でも大体泣いてしまうのだが特に自分の中で決まっているわけではなく、例えば勉強をしてる時とか走っている時とかそんな場面では泣くことはない。
「例えばさ、お腹痛くて我慢してて、うんこした時とかでも泣いたりするのか?」
そんなことは···ある。
前に腹痛で下痢をした時、あまりの気持ちよさに泣いてしまったのだ。
泣きながらうんこをする場面を想像したことはあるだろうか。
とてつもなく無様な姿だ。
だがこんなこと友達に言えるわけもなく···
「いや! んなことあるわけないだろ!」
「つまんねーの! ならオナニーとかはどーなんだよ?」
泣きながらオナニーするやつがいてたまるか!
と言いたいところだがそれもある。
絶頂を迎えながら泣いている姿を想像したことはあるだろうか。
とてつもなく気持ち悪い光景だ。
「いやだからそんなことはないっての!」
「まあ、悟そんなに気にすんなよ!」
「だからしてねーつーの!」
休みの時間が終わり、授業が始まる。
俺は授業中に窓からの景色を見るのが好きだ。
建ち並ぶ家を見ていると、こんなにもたくさんの人がいるんだなとか自分は小さいなとかエモーショナルな気持ちにさせてくれる。
まあまたそれを見て泣いているのだが···
「工藤! またお前は外を見て泣いているのか、辛いことがあったのかも知れんが今は授業に集中しろ」
特に辛いことはなく、この体質さえなければ順風満帆な人生なんです先生!
俺は窓の外を見て泣いているから大抵の先生は俺が大きな悩みを抱えていると思っているらしい。
この前も数学の先生に、「悩みがあるならいつでも相談に乗るぞ」と廊下を歩いていて声をかけられた。
まあ体質の悩みはあるのだがこれを伝えたところでより事態が深みにハマりそうで俺は担任以外には伝えてない。
学校が終わり、帰り支度をしていると突然見知らぬ女子が喋りかけてきた。
「あなた入学式で号泣して、話題になってた工藤君よね?」
「はぁ···そうですがなにか?」
「これから私と一緒に来なさい!」
そう言うとその女子は俺の手を掴み走り出した。
まさかこの出来事が俺のこの荒んだ青春を大きく変えることをまだ俺は知らなかった。