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童のご都合

さて、今、私の目の前には二人の少女がいます。緋袴ひばかまの少女と浅葱袴あさぎばかまの少女です。見た目は可愛いですけど、どう考えても普通の子供ではありません。さて、ここでクエスチョンです。もし、こんな女の子が突然現れたなら人はどうするでしょう。


1.親方空から女の子がと叫んでみる。

2.とりあえず悪い夢だと思って、早く寝てみる。(現実逃避は2番)

3.私(僕)には妹など家族がいたんだと納得する。ラッキーって喜ぶのもこれ。

4.固まる。

5.警察とかに電話して誰かの助けを求める。


現実は4番です。そして私は脳内会議を招集することにしました。


-脳内会議-


【マスター】今日は私【マスター】が司会進行を行います。以後お見知りおきを。

【マスター】前回の粗筋を確認しましょう。

【マスター】クシさんがあおばで私にうっとりしていました。

【マスター】18時を過ぎても居座っていました。何度言っても帰ってくれません。

【マスター】むしろ、最後には私を舐めるように見ていました。

【マスター】そこで、私は直君から貰ったペンダントにクシさんが帰っていくように祈りました。

【マスター】すると、子ども達が出現し、クシさんにまとわりつき、クシさんは撃退されたのです。

【マスター】そこまではOKですか?MEミー

【ME】OKマスター。

【マスター】よろしい。では続きです。二人の少女は家に帰らず。私をお姉様と姉貴と呼びます。OKですかME。

【ME】いろいろ問題はあると思いますが、ぎりぎりOKだと思いますマスター。

【マスター】二人の子のうち一人が、今日から【ここで】MEを守ると言いました。OKですかME。

【ME】意味不明ですマスター。一人の変態神様を追い払うために、二人の少女(7歳ぐらい?)がやってきたのですME。

【マスター】男なら喜ぶところですよME。

【ME】いえ分かりません読者ってなんですか?そもそもMEは女です。

【マスター】とにかく話を聞いてみましょう。もしかするとご都合設定とかあるかもしれませんよ。

【ME】何ですか、ご都合って。

【マスター】オタクの子が言っていたでしょう。能力者はご都合主義設定で見えないとかなんとか?

【ME】そんなのあるんですか?

【マスター】無かった場合、あおば《ここ》で【働かせたら】、どうなるか分かりますよね。

【ME】イエスマイマスター


-脳内会議-終わりここまで現実時間で3.642秒でした。


「ちょっと状況を整理してもいいですか?お嬢ちゃん達」

私は、引きつった顔で二人の少女に言いました。すると、一人の少女がお辞儀をしてから話し始めます。

「私たちは、姉貴にお仕えするためにここに来たんだ。私は、ぬい。ふつつかだけど、よろしくな。」

浅葱袴あさぎばかまを着た少女の言葉は使いは男の子のようです。そして、ふつつからしい。言葉遣いからしてふつつかだ。

すると次の子が話し始めます。

「私は、まこなのですー。よろしくなのですー。お姉様。」

緋袴ひばかまの少女は天真爛漫の笑顔で挨拶をしました。こっちはこっちで、語尾が変です。二人とも少なくともお店で、接客は無理じゃないでしょうか?そうですよね?直君。知っていてこの二人を寄こしたのですか?私は、二人に質問します。

「あの、言いにくいことなんだけど……チェンジって出来るの?」

と、喉元まで出てきましたが、グッと飲み込みました。

二人は、とても純粋な目で私を見つめています。その純粋な目が私の穢れた心に突き刺さり、そんな話は出来ませんでした。


脳内会議を使わずに、もう一度状況を整理しましょう。

私は、クシさんが居座るのを防ぐために、直君から貰ったネックレスにクシさんを追い返す……帰って貰うようにと願いました。そしたら、クシさんにこのふたりの少女、ええっとぬいとまこだっけ?が張り付いていました。クシさんは、私から、ネックレスを取り上げようとしましたが、何かに弾かれました。そして、渋々と帰って行きました。クシさんは帰った後に、少女が二人残りました。


って、面倒毎が増えてます。人数も増えてますよね。ねえ、直君。

脳内会議のあれが頭の中に響きます。小学生を労働させるあれです。

これどうなるの?どう見てもこの二人は小学生ですよ。きっと戸籍もありませんよ。この二人。未成年者を学校にも行かせずに、ここに置いていたら、世の中に何と言われるか?下手すると、未成年者を働かせて、私は逮捕されますよ。どうやって申請するんですか……下手したら犯罪ですよ。新装「あおば」は軌道に乗る前に、一ヶ月もせず廃業ってのもあるかも。

神様、私はどうしたら……私は祈ろうと思ったのですが、駄神様だがみさまの顔が浮かび、祈るのを止めました。そもそもこの状況を作ったのは神様です。


ここで、祈って何か起きてしまうと、大変です。これ以上面倒毎が起きては困ります。仏様私はどうしたらいいのですか?そういえばミチさんが、神様と仏様は一緒みたいな話をしていたような。ええっと、おばあちゃん私はどうしたらいいんですか?お父さんお母さん私はどうしたら。

とにかく、考えても答えは出ません。二人を奥の住居部に上げるしか無さそうです。


首飾り《ペンダント》に戻れるの?と聞いてみたのですけど?

そんなマジカルなご都合設定は無かったみたいです。現実って厳しいですね。


その後110番に迷子として報告しようとか考えたりもしたのですが、二人の言動を見ると、それはダメだと諦めました。何故なら、「姉貴、どうかしのたか?」「なんか元気ないのです~。お姉様。」と、お姉様連呼されていては、110番をしても結局私が疑わしいだけでしょう。


だから、私は結局、考えるのを放棄し夕食を3人分準備しています。

夕食は、いつも喫茶店の残り物で済ませていますが、今日は二人増えているので、業務用食材の冷凍ハンバーグ(ハンバーガー用で買っていた)を一品追加しました。まこは、私のそばで料理の盛り付けを、「これは、何なのですー?」「あれはなんなのですー?」「何をしているのですー?」と、ずっと私のそばにはりついて、あれこれ質問をしていました。

ぬいは、居間のテーブルを拭いたり、食器を並べたりと率先して手伝いをしてくれます。

食事を用意している間に、まこの質問に答えながら、ぬいにいくつか彼女たちの素性を聞きました。

「名前はまことぬいだっけ?」

ぬい:「おう」まこ:「そうなのです」

「あなたたちは、神様なの?」

「違うのですー。まこはまこなのですー。お姉様」

まこのキラキラした笑顔と、返答に困惑しつつ、

「……そうですね。まこはまこですですね。ごめんなさい。」「許すのです。」

という会話をしながら、ぬいに目配せをする。ぬいは、まこに「しぃー」と人差し指を口の前で示してから、説明しました。

「私たちは、姉貴を守るために遣わされたわらべだよ。」

「わらべ?座敷わらしみたいな?」

「それは、妖怪だっけ?。そうじゃなくて、わらべ。神様の側にお仕えするおつかい。」

へぇーそんな子がいるんだ。

「でも、なんで私の側に、私は神様じゃありませんよ。」

「そこまでは、私も知らないよ。とにかく、姉貴に呼ばれたら行くようにと言われただけだし……」

と言っていますが、語尾の声が小さくなり、目が泳いでいる気がしました。すると、まこが一言。

「私は、お仕事のじゃまになるから、お姉様のところで、お勉強して来なさいといわれたですー。」

……今、じゃまになるって……なおはもしかして、私に出来の悪い子を押しつけた?まさかね?

「まこさん、今のところ?もうちょっと詳しく教えて貰える?」

「お勉強してきなさい?ですか?」

「そうじゃなくて、じゃまになるって……」

「まこはがんばるのですが、いつもうまくいかないのですー。だからしゅぎょう?するようにって言われましたですー。だから来たですー。」

この雰囲気から察すると、きっと天然成分50%に、おばかが50%という本当にダメなタイプかもしれません。他のわらべというのが、どの程度か知りませんが、きっと他の子に比べると落第なのでしょう。

そして、一人がそういう子だとすると、もう一方は?

「で、ぬいさんはさしずめ言葉遣いとか、態度とか?そういうのに問題があるとか?」

「姉貴、そんなんじゃないぞ。私はちゃんと出来ていた。私は童上役一等わらべうわやくいっとうで童の中で童長に次いで2番目に偉かったんだ。というか、私だってここには来たくなかったよ。それにここはあ……いし。何で私が……縛られてなければ戻れるのに……」

上から2番目に上り詰めて、何があったのですか?こっちの方が爆弾かも知れません。所々聞き取れない部分がありましたが、縛られるって何でしょう。地縛霊とかじゃないですよね?

「ええっと、ぬいさん?縛られるってどういうことですか?」

ぬいは、私の胸元をにらみつけるだけで何も言いません。するとまこが、

「まこもぬいも、そのペンダントをもつお姉様の言うことを聞くのですー。守るのですー。」

と嬉しそうに答えました。

二人は、神様から何かの罰かお仕置きでここに飛ばされたわらべのようです。そして、ペンダントの持ち主の言うことに絶対服従の縛りがあるみたいです。まこは、意味が分かっていないので、それをお仕事と喜び、ぬいは、左遷されたことを理解しているようです。ただ、童だからでしょうかどちらも、体格の割に幼い気もします。


さて、ここまで分かったところで、本題の、ご都合主義を探せです。

「ところで、あなたたちは、ご飯も食べるし、夜も眠るのよね。」

「食べるのです。」「当然だろ。」

「大きく成長もするの?」

「ちいさいままなのです。」

「服装は好きな姿に、変えられるとか?」

「できないに決まってるじゃん。」

「体を大きくしたり……人から見えなくなるとか」

「そんな神様みたいなこと、お姉様は出来るのですかー」

神様はできるんかい。とツッコミそうになるのを、必死に堪えました。

この子達自身には安易なご都合主義はないようです。


ご飯を食べながら続きの話をすることにしました。

「うまい、すんげーうまい!」

と言って、もぐもぐとご飯とハンバーグを食べているのは、ぬいです。既に、白ご飯が5杯目に入っています。大人用のお茶碗で3杯食べたのですが、すぐになくなるので、どんぶりに替えて2杯目を食べています。

「おいしいですー」

とはいいながらマイペースで食べるのが、まいです。とにかく一口40回ぐらい噛んで食べています。しかも、お箸で掬う量もほんのちょっとです。


「さっきの話の続きだけど。あなたたちは、神力しんりきが使えるの?」

もぐもぐしながら、ぬいが答えます。

「使えるぞ、ただしこの家とお店のように氏神の気がある場所と、神域だけだけど。神様みたいにどこでも使うことはできない。あ、おかわり。」

「はいはい、でどんな力が使えるの」あ、炊いたばかりのご飯がもうない。

「まいは[へんげ]と[しゅうのう]と[ごうりき]ですー」

「私は、「隠密」と「暗視」と「意識」。」

「意識って?」

「人の心を読んだり動かしたりって奴。」

この子なんかヤバくね?私が、縮こまりながら後ずさりすると、

「あっ?心配すんなよ。姉貴の心は縛られているから読めって言わない限り、読めないよ。」

ちょっと、ぬいが悲しい顔で答えました。

ほっとした一方で、ぬいの悲しそうな顔が少し印象に残りました。


「まこのへんげと、しゅうのう?は変化と収納?」

まいは、茶碗をもって立ち上がると、エッヘンと胸を張って答えた。

「おにぇえさま、よくじょきじゅいて……」まこの口からご飯粒が飛びだす。流石に私は、「飲み込んでから、喋りなさい。それから、食事中は立ち上がらない。」と叱ることになりました。少し涙目で、しょんぼりするさまを見て、何故か心が痛みました。この、まこはぬいよりも少し幼い印象です。

質問は、後にしてとりあえず、ご飯を食べさせることに専念しましょう。


そして、戸籍を何とかする?ことです。まあ、無くても大丈夫ならそれでも良いのですけど。ただ、ネットで調べるにも、この子達を寝かしつけてからかな?まあ、オタクの子がいうようなご都合なんてないですよ。収納とかご都合じゃんって……残念!神力が満ちていない外じゃ使えませんから。


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